更新日:2004年7月29日 RSS

Views for thought  今、注目のひと 今、旬な人にインタビュー。その人の生き方や考え方から
なにかを感じとってもらえれば……。
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黙々と、コツコツと。そして……ちまちまと、が好きなんです。
  本上まなみ  Honjo Manami /女優
 
   
本上まなみさん 1975年東京生まれ、その後大阪で育つ。女優として活躍するかたわら、『ほんじょの虫干。』、『ほんじょの天日干。』『ほんじょの鉛筆日和。』といった和み系エッセイでも才能を発揮。NHK教育「トップランナー」ではMCを、BS日本「トラベリックス〜世界体感紀行〜」ではナレーターを務めている。動物に詳しかったり、虫に強かったりもする。
   
さまざまなスケールで、いろんなモノを創っている。
 
  端正で優しい顔立ち、楚々とした居ずまい。にもかかわらず。田舎道の端っこで突然座り込み、じーっと何かを観察したりもするような。きれいな花を眺めてる?と思ったら……実は青虫をつまんでた!みたいな情景が、絶対的に似合う女性だと確信している。
 
  広くは何冊かのエッセイを上梓したり、少し狭いところでは短歌を詠んでみたり、「へもへも」なる言葉を流行らせようとしてみたり。もちっと狭いところではこつこつと、例えばウニ入り茶碗蒸しを作ってみたり。さまざまなスケールにおいて創造的な女性なのである、本上まなみという女性は。
 
 
  そーいう風情を持った29歳の彼女が、初めてフィクションの作品を世に出した。『ぱたのはなし。』なるこの絵本は、コウノトリが赤ん坊を配達するという「うむむ、ラブリー系?」と思いきや、そうではなく、実はクスッと笑える冒険談でもあり。
 
初めて旅してみたフィクションの世界、何と出会ったか?
 
  そもそもは「描いてみませんか?」との依頼が発端だ。それまでは、ほぼノンフィクションの世界を形にしていたのが、これはもうまったくのフィクション。ストーリーもそうだけれど、彼女自身にとってもちょっとした“未知なる世界への旅”だったわけで。さぞや苦労もしたことだろう。
 
 「主人公が全てのページに出てくるでしょう? それらが同じ鳥だって思ってもらえるように描かなきゃならないのがいちばん大変だった(笑)。何軒も本屋さんをはしごして、イラスト集なんか探してみたり。動物園で長年飼育係を務めていた方に話を聞きに行ったり。しかも、制作時間は1ヶ月半しかなくて。ところが、絵本作家の方って1冊を1年くらいかけて仕上げるらしいんです。それを聞いて、『えっ!』って叫んでしまいました」
 
 
  大体のストーリーを決めて、絵コンテのようなものを描いてカット割を決めて、ラフを描いて、文章も考えて。それと並行して、絵の練習も怠らず。その成果あって、ちょっと小ずるい感じを漂わせる豹の目つきなど秀逸なのだ。
 
 「下描きをペンでなぞるんです。そのペン入れが失敗して、ちょっと悪いだけの目つきのはずが、すっごく悪すぎる目つきになって。失敗!と思ったら、一から描き直し(泣)」
 
 
  ええっ、そういうときには部分的に修正するのではないの? 
 
 「でしょ? ホワイトを使ったり、上から紙を貼っても大丈夫だったみたいです。けれど、それを聞いたときには『マジで?』って本当にびっくりした。失敗していない部分は、上に新しい紙を置いてトレースして生かして……なんてやってましたから」
 
 
  今やPCでアートする時代に、なんてことであろう。けれど、モノ作りが楽しいのってそういうひとときもひっくるめてかな?などと思わないでもない。 
 
  ひとり黙々と作業をする楽しさ。けれど、その先のヨロコビも知った。
 
 「何かを趣味でやっているというのはそんなになくて。けれどなんかね、こう……黙々と作業をするのが楽しいんです。人と何かを一緒に作るんじゃなくて、自分で小さな世界を作るのがわりと好きかもしれませんね」
 
  だから、山登りやフライ・フィッシングも好き。そう、「コツコツと」とか「黙々と」とかいった感じがお好みらしい。「そして、『ちまちまと』している感じも」と本上さん。じゃあ、ドラマティックなことって苦手なタイプ?
 
 
 「あっ、それ。ありましたよ。私のお姉ちゃんみたいな存在の女性が、『どうも話の終わりが唐突過ぎる。何か足したほうがいいよ』って言ったんです、制作途中のこの本を読んで。言われてみると、確かに盛り上がりに欠けてる。けれど、もうテスト印刷まで行っている最終段階で、そんなときに限ってドリカムのミュージック・ビデオに出演することになっていて、その撮りがまた丸1日がかりで(苦笑)。徹夜で仕事を終えて帰ってきて、ギリギリ4ページを描いて、それで完成したんです。そこがドラマティックかな。ふふ」
 
  その部分、確かに堂々のクライマックスに仕上がっている。
 
 
 「作り終えてみて思ったのは……ほんとに身近な家族だったり親戚だったり友だちなんかにみてもらえたら、もうそれだけですごく楽しくて、すごく嬉しいもんなんだなって。制作過程でも、『ここはどう思う?』なんて周囲にアドバイスを求めてみるのも、とても楽しかった。別にちゃんとした感想じゃなくってもいいんです。『面白い』とか、一瞬でも何か言ってもらえたら、それだけで満足なんだなって」
 
  ひとりでコツコツが楽しいという彼女だけれど、それはやがて友だちとのやり取りにも繋がっていく。その、何かを媒介に心触れ合うことのワクワク感って、私たちだって持っているはずなのだが……ちょっと忙しすぎて忘れそうになっている? つい自らを省みてしまう夕暮れどきであった。
 
   
 

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Photos / Kobayashi Yasunobu
Text/ Matsumoto Noriko(Cafeglobe.com)
本上まなみさん
「再び絵本を作るなら『ぱたのはなし。』に登場した、ぱた以外の誰かを主人公にするか、カピバラを主人公にするか……迷うところです。カピバラっていうのはね、ネズミ科で最大なんだけれど小心者で、ちょっとしたことに驚いて気絶するらしい。動物園にもいるんです。小心者のカピバラが冒険をする話が書きたいですね」
 
 
 
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vol.53 一色伸幸さん/脚本家 木村佳乃さん/女優  2004年3月10日
vol.52 AZUMIさん/デザイナー  2004年2月12日