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 | 僕ってすごく負けず嫌いだけど、人と自分を比較したことはないんですよね。よくライバルは誰って聞かれるんだけど、比較するにしても、それは自分自身とだから答えようがないんだよね。人が基準にならないというから、人を羨んだりすることもないし。うーん、何かにつけて「やる自分」と「やらない自分」とではどういう違いがでるのかなっていう比較はあるにしても、人と比べたことは一度もないからね。 |
 | 昔からそういう考え方だったんですか? |
 | まあデビューした頃って本当にいい加減で、何の責任感もなかったし。仕事に対しての認識力も希薄だったし、デビューしてすぐグワーっとなっちゃったから、みんないろんなことをあまり言ってくれなかったし、教えてくれなかった。17歳のときに、レギュラーと準レギュラーで週10本ぐらい持ってて、もうむちゃくちゃ忙しいときに、寝る時間も学校行く時間もなく、台詞覚える時間もないから、カンペかなんか貼って読んでたんですよ。ほんとはちゃんと台詞憶えて自分の言葉で言わなければならないのに、誰も注意してくれないんですよ。それがなんだかとても虚しくなったことがあって、だんだん自分が恥ずかしくなっていった。「忙しいから」ってことで済まされていくことがとても虚しく感じたんですよ。 |
 | 周りの人も忙しさをいいことに、言うことが正義か言わないことが正義か悩んだでしょうね。 |
 | それまではお袋がとても厳しく言ってくれたり、教えてくれたり。まあ、ものすごい愛情を受けて育ってきたわけですよね。そういう愛情がそこにはなかったわけですよ。それがすごく寂しくて。だから「こういう馬鹿なことはやめるべき」だと気づいて、自分から改めようと思ったんです。 |
 | なんか、その時点で50代を目指す郷ひろみが誕生したような気がしますね。 |
 | 人間はそう簡単に変われるわけじゃないけど、ただ意識を持っているだけで自分を違うところに持って行けるような気がして。忙しいからって言い訳してるような自分が嫌になったというか。それから少しずつ責任感が芽生えていったんじゃないかなっと思っているんだけど。 |
 | ひろみさんが言われてたように、人生ってポジティブに生きるかネガティブに生きるかの二通りだと思うんですよ。ただ、ポジティプっていうことは決して楽しいことばかりじゃないんですよね。前を向くっていう辛さを携えなきゃいけないってことじゃないですか。言葉にすればポジティブとネガティブには大きな開きがあるけど、生き方としては断然ポジティブの方が辛いんじゃないかと思います。 |
 | 確かに楽しいことばっかりじゃないですよね。基本的には自分に何かを課すわけだから非常に厳しい。ただ、それをポジティブに考えることによって、辛さとか厳しさを半減することができるのかなって。それが辛いなーって思いながらやっていればスピードも遅くなると思うけど、気持ちを切り替えることによってその辛さや厳しさはモチベーションに換えられる。運動だって決して楽なことじゃないけど、気持ちを切り替えることによってどんどん目標に向かって行けるし、向かえば向かうほど目標に近づける気がするでしょ。要は心の持ちようなんですよ。だから僕は一度決めたら絶対に気持ちを曲げない、いや曲げたくない。仕事でもやるって言ったら文句言わないですよ。仕事を引き受けるまではあれこれともめるかもしれないけど、やるって言ったら一切文句を言わずにどんな仕事でも絶対やりとおす。 |
 | 初めてお会いしたのは、『TARZAN』という雑誌の撮影で。上半身裸になってもらって汗がびっしょり出ているっていう写真を撮らせてもらおうと思ったわけです。そのとき、「撮影の前に40分走らせてくれ」って言われたことがすごく印象的でした。ランニングマシーンをスタジオに運んだりして大変だったけど、なにより「すげーな、この人」と思ったもんね。 |
 | あんまり覚えてないなぁ。 |
 | それ困ります。こんなかわされ方したのは生まれて初めてです。 |
 | いや、覚えてないって言ったのは、その撮影の前に40分走らせてくれって言ったことですよ。 |
 | やめましょう。哀しくなります。無情なインタビュアーに切り変わります。 |
 | だから僕に嘘があるのか、それとも本気でやるのか、わかるわけでしょ。それが僕にとって、「やると言った仕事は絶対にやる」ということへの答えでもあるんです。 |
 | ひろみさん自身が50代を生きるということは、「郷ひろみ」という存在と共存しながらそこに行かなきゃいけないわけじゃないですか。郷ひろみの背中にはそれこそ何十年前に500人のファンクラブからスタートしたときからの皆さんがどっかんと乗っていて、自分を裏切ることができないように、人も裏切っちゃいけないっていうことでもあるから。敢えてそのプレッシャーを背負いながらもポジティブに生きようとする姿には見習うべきものがあります。郷ひろみが50歳に向かうということは、そういうことなんですね。 |
 | そうねー、やっぱり楽なことじゃないと思うんですよ。郷ひろみを続けるというのは。だからこそ、自分のなかでやりがいがあるというか。楽なものは僕もあんまり興味もないし。郷ひろみを続ける以上、やらなきゃいけないこともあるんですよ。それがきついのかもしれないけど、選んだのは僕だから。 |
 | もうアスリートですよね。イチローとか松井とか中田とかと同じですもん。あの人たちががそこにいることで、子どもたちに夢を与えて。次のゲームでもそれ以下のパフォーマンスはできないっていうか。ひろみさん、それをずっと30年以上やってて、新たなるステージに行こうとするわけだから。客観的に見てるとトップアスリートと同じように写りますね。究極のエンターテイナーってアスリートでもあるんだって。 |
 | まあ、ひと言で言ってしまうと「生理が落ち着く」んですよ。僕は形から入るって言ったでしょ。でも形だけだと生理が落ち着かないというか、気持ちが悪いし納得いかないんですよね。だから、自分の生理を落ち着かせるためには中身を入れていかないといけないんですよね。 |
 | 本当に心から欲張りですよね。欲を張るってのはそれだけ辛いことも背負い込むわけですけども、本当に向上心に対して欲を捨てない人ですよね。 |
 | 僕みたいな生き方をする人もいれば、もっともっと楽にいい生き方をしている人もいると思うのね。どっちがいいかってことじゃないからね、これは。本当に考え方の違いだし、その人はその人でそれで生理が落ち着くんだから、いいんだと思う。別の形ですごくいい人生を送っている人たちもいっぱいいるわけだから。 |
 | 生理が落ち着くって言葉、本当に真理ですね。何を持って価値とするかっていうのは、そういうことで自分を高めるというか、心の持ち方というか。突き詰めれば突き詰めるほどシンプルなものになっていきますよね。 |
 | そうですよね、だから僕みたいに色々ややっこしいこと考えていても、考え終わったら、向かってるのは実はすごい楽なところだったりするんですよ。 |
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(その4へつづく) |