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 | 僕の仕事はシンクロナイズドスイミングだと思っているから。 |
 | どうしたんですか、唐突に。 |
 | 表面上はキレイで華やかに見えても、水面下では非常にもがいているんですよ。手をばたばたやったり、足をばたばたしたり。でも水面下を見せる必要はないわけ。どうやってあの体を支えているんだろうってみんな見たいのかもしれないけど、それを見せてしまったら水面上の優雅さがトーンダウンしてしまう。 |
 | よかった、趣味がそっちの方かと思った(笑)。 |
 | 実際シンクロのレッスン受けてたりすると怖いけど(笑)。 |
 | 本当にやってないんですよね(不信そうに)。 |
 | だから冗談だって!(ちょっとムキに) |
 | スポーツ選手でも練習では泥だらけだっていうことですよね。 |
 | いいときのマイケルジャクソンだって絶対そうだと思う。あんな簡単にムーンウォークができたりするわけないんだから。見えないところでトレーニングをして、いとも簡単にできるっていう彼の美学だと思いますよ。 |
 | 僕らが小学生の頃、オールスターなんとかっていうのがあったじゃないですか、明らかに負けず嫌い出てましたよね、ひろみさん。 |
 | 水泳大会とかでしょ。だって2〜3週間前からトレーニングしてたもん(笑)。 |
 | 明らかに目がイッてた(笑)。 |
 | 野球大会も2〜3週間前からトレーニングしてたなぁ。スキー大会のときにはスキー教室に通ったし(笑)。 |
 | なにもそこまでしなくてもって……通用しないですよね、あなたには。 |
 | 今だから言うけどね、本当は50メートル泳ぐのがやっとだったんですよね。 |
 | だって、ぶっちぎりだったじゃないですか? |
 | 無呼吸泳法で泳いだんですよ。少しでも早く泳ぎたかったから。いっさい顔上げないの(笑)。 |
 | それで水泳大会出てた方が立派ですよ(笑)。 |
 | 27歳ぐらいのとき、もう泳ぎはいいやと思ってたけど、映画の撮影で京都に1ヶ月半ほどいたとき、あるホテルのプールで泳いでいたら、コーチが近づいて来て、「泳ぎ方教えましょうか」って(笑)。きっと見るにみかねたんだと思う(笑)。 |
 | それで? |
 | ふたつ返事で「お願いします」(笑)。 |
 | 究極の習い好きですね(笑)。 |
 | もう手の動かし方からキックの仕方から、もちろん呼吸法も教わって、結局そこから1ヶ月はそのコーチにつきました。もちろん、それからも教わったことを数ヶ月続けていくうちに、いつの間にか2000メートルぐらい平気で泳げるようになってた。 |
 | 「聞くは一時の恥」ですね。 |
 | 自分がなにかにのめり込んで、それで向上できるのだったら、投資は惜しまないんですよ。ギャンブルしないからそう思えるのかもしれないけど、自分のために時間やお金を使うことは惜しくないんです。実際、50メートルしか泳げなかった僕が、2000メートルを楽に泳げるようになったということは、距離的な問題だけではなくて、いつの間にか「長い距離を泳ぐ」という目標で始めたことから、「気持ちよく泳ぐ」ことを身につけたことが大きかった。 |
 | きっと、ひろみさんはイメージする力が強くて、やがてそれが可能となったとき、最初にイメージしたものと体感して身につけたものの間に、それほどの差がないんじゃないですか? |
 | よくわからないけど、それもやりきって生理を落ち着けた結果なんだろうね。 |
 | それにしても迷いがない。煩悩は在るけど迷いがない(笑)。 |
 | 僕の本業である歌でも、ちゃんと先生についてトレーニングすればどんどん伸びていける。僕の年齢で音域が上がっていくなんて普通では考えられないでしょ。ある程度まで来てしまうと、音域を維持することはできるけど、キーが上がることはないって聞いていた。けれど、それがドクター(先生)についたらこの3年間で上がっちゃったわけじゃないですか。それを経験しちゃってるから、なんでもやれることをやれるだけやってみる。すごくシンプルでしょ? |
 | シンプルって辛いんですね。 |
 | 性格も影響してるのかもしれないね。ほら、比較したり恨んだりしないし、伸び悩んでも腐ったりしないんだよね。そればかりか、悪い時期にいちばんチャレンジ精神が生まれると思ってるから。よいときは何をやったってよくて、そんなときにはけっこう気がつかなかったり見落とすことって多いでしょ。だから悪い時期が必要だし、そんなときにこそ自分を試すことができるんだよね。 |
 | 有名になればなるほど、金持ちになればなるほど、人って習うことに謙虚さがなくなっていきますからね。「習ってるのは俺だけど、金払ってるのも俺だ」って、まるで習う気持ちがひん曲がってる人もいるぐらいで。そのあたりひろみさんは立派ですよね。自分がどんなになろうとも、習う側と教える側の立場を尊重して、互いにひとつの目的に向かっていくという基本姿勢は、ひとつの人間関係の在り方の手本でもあるような気がします。 英文タイプも水泳もそうだけど、格好から入ってるわりには、格好悪い状態を必ず越えないと、なんだって上達しないじゃないですか。それが平気でできるということも強みなんだろうね。 それにしてもほんとにシンクロナイズドスイミングな人生ですよね。 |
 | でも、さすがにこれからオールスター水泳大会があっても参加しないと思うけど(笑)。 |
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(その5へつづく) |