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 | 詩を書かれますよね。 |
 | 僕はノートの切れ端を渡していただけ。 |
 | 詩を書くっていうことは、仕事をするみたいな作業ではないですよね。 |
 | 全然違いますね。いつも僕、役作りのノート持っていて、それでたまにメモった言葉とかを編集者に渡していただけです。 |
 | それはそのときの役作りとかに入っちゃったりするんですか? |
 | 入ってると思いますね、多分。 |
 | 加瀬亮ではない? |
 | だけど正直には書いていると思います。 |
 | なんか加瀬さんて魅力的な男ですね。 |
 | とんでもないです。 |
 | なんとも形容しがたいけど、かなり魅力的。『アンテナ』観たとき、ものすごい戸惑っちゃって、怪優だと思った。『花と蛇』の石橋蓮司さんぐらい怪優。怪奇の怪。すごいところにいる人だなと思って。 |
 | 基本的にはなっちゃんのテレビコマーシャルのように自然の中でやるのが好きですけど。 |
 | 役者なんですよ、役者。本当に役者ってすごい。 |
 | まだまだです。 |
 | 役者になろうと思ったのは自分からなんですか? |
 | そうですね、大学の就職活動のときに、生まれて初めて地元の先輩の舞台に誘われて、先輩がすごくよくて、そのまま楽屋に行って「僕もやりたい」って。 |
 | 慎重そうでフットワーク軽いですよね。コレだって思ったら即行動でしょ。普通は会社訪問をしてあーだこーだということが多い時期でしょ。 |
 | すごく感動したから。 |
 | ほかになにかやろうと考えてなかったんですか? |
 | 考えてなったですね。 |
 | 決断力がすごくあるんだよ。それが自分で言うところのわがままな部分なのかもしれないけど、すごく自分の感性に正直なんだと思う。 |
 | そうですね。 |
 | 僕は加瀬亮って人をあまり知らなかったけど、僕の中でできていたイメージがあなたと会うことでぶっ壊されて、こんな恋愛に発展するとは思っていませんでした。 |
 | え?(戸惑) |
 | 冗談です。ごめんなさい。 |
 | ……今までは、未熟な魅力に惹かれていたと思っているんですよ。たとえば、よくある青春映画とかも未熟なところに共感してきたと思うんですけど、最近徐々に年とってきてからの考え方というか、センチメンタルとかそういうことだと思うんですけど、少しずつ見えてきて、あぁ面白いなっていうか。盆栽の面白さとかはまだわからないけど(笑)。 |
 | 30代ですよね? |
 | もうなりました。 |
 | すごい楽しいですよ。 |
 | そうですね、面白いなと思い始めました。 |
 | 30代はいいですよ。40になる2週間前に30代が名残り惜しくなったけど、29のときは30になりたいって。結局30代でも基準は20代なんだよね。40代でもそう思う。20代って男としては何もないじゃない。こうしたいけどできない、だけどきっとやれるみたいな、強がりとか言い訳ばっかりして。でも、そのやるせない思いでどこまで自分が伸びていけるかが基準値になる。だから40になったときに、いい意味で戻れないって気持ちになるんですよ。つまり40歳になった自分の中には20代の自分も30代の自分ももっともっと幼い頃の自分だっている。だからこそこれからも現実を重ねて年をとっていかなければいけないんだって。 |
 | 今の話を聞いてて、あぁこんな感覚なのかなぁって思い当たることがあるんです。名前はド忘れしちゃったんですけど、ある人が書いた本で、確か65歳の人だったと思うんですけど、「ひとたび青空を見上げればそこには65歳とか40歳とか20歳とか4歳とかそういうのは関係なくなる。今65歳だけど空を見上げれば4歳のときの自分がそこにいる」って。それ読んだときに、そうだなと思ったんです。いくつになっても全然変わってない自分もいるんだなと。時間というものがここにあって、僕らが勝手に時間に近づいたり離れたりしているだけなのかなって。その感覚もやっぱりセンチメンタルなんですよね。 |
 | 時間は平等で正直だから、ときどき自分の居場所がわからなくなることもあるけど、そんなときこそ空を見上げるといいかもね。 |
 | 友だちが僕の部屋に遊びに来てて、「私はここにいるだけ、ここにいないの」って言ったんです。最初は「はっ?」って思ったんですけど、自分がひとりのときを想像してみると、なんかわかるなって思って。内面の話だと思うんですけど、もちろん部屋にはいるんだけど気持ちは部屋にいないというような。そのとき「どこにいってるの?」っていう、それを確認したいというような感覚とかもわかる気がして。 |
 | 一瞬そこにいなくなったりする感覚か。わかる気がする。 |
 | たとえば、すごい心地よくて、ボーッっとしてるときとかに行ってる場所とかだと思うんですけど。 |
 | 現実的な場所じゃなくて、なんかそういうゾーンみたいなところだったりね。 |
 | あんまりつめていくとカルト的な話になっちゃうと思うんですけど。 |
 | 話聞いてて、すごい自由だなって感じた。FREEっていうかFLOWっていうか。 |
 | 逆にひとりひとりがそういうビジョンとかを持っていて、映画にしろ本にしろ絵にしろ、その人ならでは表現世界なんかは見たいと思いますね。単純にエンターテイメントみたいなものも好きですけど、人が嫌がるアート映画っぽいものでも独特の世界観が見えると心地よさを感じます。 |
 | シアトルでの7歳までの世界っていうのも、今言ってた世界とはまた違うけど、ぽんとひとつ置かれてる世界なんじゃないですか? |
 | でも、7歳で帰国してからずーっと戻りたくて、中学何年かのときにひとりで何年かぶりに帰ったらイメージがすごく変わってて。あれ、こんなに小さな家だったんだって。 |
 | 感覚と現実とのギャップだね。 結構ショックだったんですよ。すごいキラキラしてたのが、シケた家だなって(笑)。 |
 | もう人の手に渡ってたからじゃないの? |
 | 友だちの家に泊まって見に行ったんです。「来なきゃよかったなぁ」って思ったんですよ。でも次の瞬間、隣の家のおばちゃんが出てきて「あんた亮じゃない」って。いつも散歩してたおじさんも相変わらず散歩してて「おー大きくなったな」って。そこからまた、なんか違った心地よさを感じましたね。大人にはなったんだけど時間を巻き戻されたような不思議な感じで。最後はやっぱり来てよかったって。 |
 | よかったですね、おばちゃん出てきてくれて。 |
 | よかったです。 |
 | 青春プレイバックって思えるほど歳取ってないけど、これから役者を続けるためには必要な作業だったのかもしれないね。 |
 | 原点といえば原点ですからね。ちょっとだけ気持ちに区切りがつけられたかもしれないですね。 |
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(完) |