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 | テニス界でトッププロになりたいなら世界に行くしかなかったんです。それに対して違和感はなかった。どこまで世界に近づけるのか確かめたかったから。そのためには世界を知ることだと思ったから。 |
 | いちばん大きな違いは? |
 | 最初はもうがむしゃらに強くなりたい、勝ちたいって心で叫びながらテニスを毎日やっていたっていうだけで、ツアーっていうのはあんまり考えてなかったです。 |
 | ツアーが始まってからはどうでした? |
 | 全然違う。最後まで自分はツアーに慣れない。ツアー生活に慣れきれない。テニスには勝てても、ツアー生活には慣れ切れなかった。 |
 | 逆に海外を知って日本のよさを知るってことはあるんですか? |
 | それはありましたよ。やっぱり海外へ行くとみんな話すこともテニス以外に、映画とかファッションとかいろんな国の人がいるから。他の国の選手とコミュニケーションできたことは大切な財産となりました。考えてみると日本人て無いものねだりで外ばかりいいものがあるように思っているけど、なんかこう自分が日本のことを話そうと思うと、自信をもって話せることを話すじゃないですか。そうすると、日本ってやっぱりいいなって。 |
 | 海外を体験することは必要でしょうか? |
 | いろんな国にはそれぞれに歴史や文化や人の考え方があるし、習慣も違うし、ものの見方もとらえかたも全然違うだろうけど、結局は同じ人だから。それまで区別しようと思ていたのかもしれないけど、逆にしなくなったというか。 |
 | そりゃすげぇ。 |
 | 海外を知れば知るほど日本人と違うからどうこうってのじゃなくって、これだけいろいろな人がいていろんな国の言葉があるんだなって、それをまず知るってことなのかな。 |
 | でも日本人って臆病じゃないですか、安住の地というものをどこかで確保していたいというか、安心材料をすごく欲しがる民族というか。 |
 | そうかも。 |
 | 自分の人生、今まで何点です? |
 | えー何点? 今だったら、今の自分から昔の自分を見ると、もっとオープンにできたんじゃないのかなって思うときもありますけど。勝負ってものが切り離せないから。勝負ってものが出てきたときにはやっぱり私はそんなに器用じゃないし、器用じゃないほうだと思うんで、それ考えると精一杯やったんだろうなって思うな。 |
 | だめ、理屈で逃げちゃ。 |
 | バレた? |
 | で、何点? |
 | 90点。 |
 | おー90点。 |
 | でも90点で終わって、また落ちてますからね。 |
 | 今は? |
 | 65点。 |
 | なにを言ってますか〜、それじゃ目立たない生徒と同じじゃないですか。 |
 | 栗山さんは何点? |
 | 90点超えてますよ、いつも。 |
 | おーっ! |
 | いやいや、何をやったかということはあまりないですけど、何も考えてこなかったから。 |
 | ? |
 | 仕事でもプライベートでも、初めて会う人にはドキドキして、その気持ちを素直に表現してきたし、そうすることで素敵な仕事も思い出もいっぱいできたから、今までは上出来です。変に計画性持ったり先を読んだりせずに、ずっとライブ感覚でいきてきたつもり。だから、いつだって楽しいし、幸せです。 |
 | でも相手が興味がない場合はどうするの。 |
 | 興味がない? |
 | 自分が相手に対して。興味がある人だったら湧き出てきますよね。興味がない人だったら。 |
 | 興味がないっていうのは勝手な自分の思い込みですよ。人なんて人と会って対面したら、絶対人間同士の会話がなきゃ成立しない。 |
 | 日本人はそこが下手だっていうじゃないですか。 |
 | かもしれない。だって興味がないなりに、「なんで俺この人に興味がないんだろう」っていう興味が出てきますよ。 |
 | 興味がない人の話を聞いてもわかんない、っていうのあるんじゃないんですか。 |
 | そういうときは自分のことをしゃべります。あのー、なんてゆーのかなぁ、僕にとってはインタビューが勝負みたいなもんなんですよね。だから苦手な相手とも対戦しなきゃいけないし、すんなりと勝負を楽しめないかもしれない。確かに沈黙しっぱなしの人もいたし、だけどそれはそれで鍛えられた。なにせ人は生モノだから、出たとこ勝負ですよ。 |
 | 沈黙はいちばん困るでしょ。 |
 | それなりに燃えてくる。 |
 | どうやって。 |
 | どうやってこじ開けるかって。そこで僕はひとつ思う、俺も黙ろう。 |
 | なにをいきなり。 |
 | ある女優さんとロケバスの中でふたりきりになってしばらく黙ってた。気を遣いましたよ。「私は喋らないけど、あなたは喋らないの?」なのか「私は喋らないけど、あなたは喋って」なのか。そう考えることでまた未知なるステージが始まるんですね。人生80年、どうやって人と知り会い語り合うかっていうのは僕の生きるベクトルですから。 |
 | 私も現役のときは殻に閉じこもってて、人と会うのがやだった。会うと結局、もう根ほり葉ほり今の調子はどうですかとか聞かれるでしょ。だからもう、それがいやだったからどんどんどんどん殻に閉じこもって、部屋にいて人と会わないしホテルからも出ても下向いて歩いてるし、聞こえてても聞こえないふりして。 |
 | 目つり上がってますよ。 |
 | でも引退したら素に戻りますよね。もう勝たなくていいわけですから。 |
 | 女の子に戻った? |
 | はい、女の子に。そうすると人と会うのが楽しくなりますよね。 |
 | 勝たなくていいっていうのは多いね。私の人生これからは勝たなくていいんだ。 |
 | でもやっぱ勝つこと好きなんですけどね。何事も。でも今までみたいなのとは違う勝つ世界。人と会うと、しかも今までテニスっていうひとつの限られたジャンルの中だけじゃないですか、それが今はほんとにもういろんな違う考え方とかでもグレーを知れたんですよね、グレーゾーン。 |
 | 白か黒かの狭間かぁ。 |
 | もう黒か白の世界しかなかったけど、やっとグレーっていうものちょっといいのかなって。 |
 | いい話だな。 |
 | そうすると人と会って人の考え方を聞いたり、人の生き方だったり、人と人とつながることによってまたこう自分の成長もわかるしって思えるようになりましたね。何やるにしても仕事やるにしても、テニスやってたときにしても、やっぱり自分が成長してたいってことがいちばん。 |
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(その5へつづく) |