| |
|
 | ずっと映画のことばかり聞かれてるんでしょ? |
 | 半々ですね。『anan』なんかはほぼ恋愛がテーマなんで。 |
 | 恋愛の話は好きですか? |
 | うーん、テーマによりますよね。 |
 | 先週渋谷で打ち合わせがあって3時間ほど空いたので、『手紙』を観にいってきたんですよ。そしたらもう大変な感動に見舞われまして、その翌日に玉山君との対談が決まって、僕は今、喋りながら手紙を書いてる気分です。 |
 | ありがとうございます(笑)。 |
 | すんごいね、あれ。どの囚人も同じようで、まるでドットにしか見えない中で、玉山くん扮する兄貴がずっと拝んでる姿、ほんとに般若心経だよ。 |
 | 号泣してましたね。鼻水がホントに止まんなくて。テストというかリハーサルの段階から号泣しすぎて、僕もあの作品に対してはなんかこう特別な思いがあったり、教えてもらったものがたくさんあったので。 |
 | たとえばどんなこと? |
 | ニュースの見方というか、色眼鏡で人を見なくなったりしましたし、少し哲学的になるけれど、罪と償いを秤にかけたときにフラットになるのか、ということを考えたり。服役するということはどういうことなのかも、いろいろ考えさせられたんで。 |
 | 映画ってもちろんひとつひとつの作品に感情移入すると思うけど、クランクアップした時点でそこの世界から自分を切り離すことってできるわけ? |
 | 『手紙』のときは結構ひきずってましたね。 |
 | 何をどんな風に? |
 | うーん。今回の『フリージア』の撮影の後で『手紙』の撮影があったんですけど、両方とも結構ディープな役柄で、なんかこう、ちょっとした共通点があったんですけど、ふたつともやってる間、“欲”がなくなってしまったんです。 |
 | 日常的に? |
 | そう、普段の生活をしてても。いつもだったら、僕、食べるの好きだから「仕事終わったらあれ食べたいなー」と思ったりとか、「誰々と会ってクラブに遊びに行って」とか。なんかこう、いろいろと楽しみがあったんだけれど。このふたつの作品をやってるときだけはなんにも欲がなくて、変な言い方をすると電話がかかってきても出たくなかったりとか。別に出るのがめんどくさいわけじゃないけど、なんとなく……。 |
 | ひとつのコンセントレーションってこと? |
 | かもしれないですね。 |
 | 要するに自分が体験したことのない世界にのめり込んで、そこにずっと浸かってたいのに、いろんなものの合図でわざわざその場所から出て行かされていくのがいやだってこと? |
 | あー、それはありますあります。 |
 | 僕はないんだよね、まだ(笑)。そういうのやりたいじゃんね。役者はすごいよ。擬似体験だけど、その瞬間は本物として生きるわけじゃないですか。 |
 | そういう自分は嫌いではないんだけど、ただやっぱり肉体的にも精神的にもつらいし。ひとつの撮影が終わったら、玉山鉄二っていうフラットな人間に戻してから、また次の撮影ではその状態に持っていく……この労力の方がつらいんです。 |
 | なるほどね。もう一回再生し直さなきゃいけないのは確かに疲れそう。 |
 | はい。 |
 | 代謝させなきゃいけないからね。役が終わった時点で解毒っていうか浄化させて、玉山鉄二に戻す作業が必要なんだ。ないなー(笑)。うらやましいなー。 |
 | 僕、作品を掛け持ちすることってそんなにないんですよ。 |
 | 真摯だ。 |
 | 僕すごく不器用だし、あんまりうまく切り替えできない方なんで。だからその、切り替えも、あるAっていう役をやっていて今度Bって役をやるときにそのままAからBに移行するんじゃなくて、その普段の何気ない生活をして玉山鉄二に戻してからトライした方が清々しくできるんですよね。 |
 | 玉山鉄二に戻す作業か。AとBというふたつの役の狭間で玉山鉄二にリセットする術は、どういうものなの? |
 | もう普段の生活。いつもの友だちに会ったり、テレビ観たりとか、うーん、好きなドライブをしたりとか。ほんといつもの生活をするんです。 |
 | ちなみにドライブするときは、どんな音流すの? |
 | テクノとかハウス。 |
 | トランスしながら? |
 | そうですね。 |
 | そこに歌詞がついているものじゃなくて、音の中にイマジネーションを探しに行くの? |
 | そうですね。脳がいちばん刺激される音楽だと思うんですよ。テクノとかって脳に入ってこようとする力がすごく強くて、今まで残ってるものを押し出してくれるから、結構フラストレーションから解放してくれる。 |
 | ストレスを開放させるために、ひと働きしてくれるんだ。 |
 | そうですね。 |
 | すごいね。普段から役者のトレーニングしてるみたい。開放もひとつのトレーニングだしね。 |
 | トレーニングしてる意識はないんですけど。うーん、やっぱ役者は誰しも本当に役に入り込むためにはストイックになるだろうし、その境地に達したいと思うんだろうけど、ただその術に答えはないんですよね。もちろん自分でもわからないし、わかったつもりでいてもそこまで達してるのかわからないし。それは多分、毎日毎回探しながら生きてるんだろうと思います。 |
 | 印象に残ったのは、『フリージア』で幽霊のおじさんに「痛みを知れ」って言われて、してやったりのおじさんに無慈悲で銃弾を撃ち込むでしょ。その後の右手の動きがすごくフィギュアっぽくて。あの血の通わないゼンマイ仕掛けのような演技が残酷なまでに美しかった。 |
 | そうですか、嬉しいです。 |
 | なんか冷酷さの中にある美みたいもの。例えば松田優作さんが『野獣死すべし』で人を殺したときに恍惚を感じるような。それはきっと感情の一種なんだけど、そこには感覚も意識もない、作業として人を殺めていく時間だけが過ぎてゆく。そんなせせらぎのような残酷さに美を感じたんだよ。 |
 | そこまで分析されるとけっこうドキッとしますね。今回『フリージア』は今まで自分がやった中でもほんとに異色で、感情を持たない非人間的な役で。ある意味、役づくりはしてない部分ばかりなんですよ。現場に行って“無”になることばかりを考えていて、でもやっぱり“無”になることって考える部分じゃないしって。
だからお芝居ってセリフやト書きありきで進んでいく中で、なんて言うんだろう……悲しいけどある程度型にはめなきゃいけない作業があるなじゃいですか。その中で自分を“無”にすることがすごく難しいんだなって改めて感じましたね。 |
 | 僕なんか、3秒間“無”にしたら脳死する。 |
 | ハハ(笑)。だから今までのいろんな作品も撮影するシーンのイマジネーションをある程度考えたりしていたんだけど、今回の『フリージア』に関しては何も考えないで、俯瞰から自分を見ていたような毎日でした。毎朝マネージャーに起こされて、迎えに来てもらって現場に行って、“無”のままお芝居してたみたいな。
【衣装】 ベスト9800円、シャツ1万6800円/以上EDIFICE/EDIFICE 渋谷 、インに着たタンクトップ(価格未定)/HERCHCOVITCH;ALEXANDRE/PR01.(PRESS ROOM) 、パンツ2万5200円/Motel/MOTEL.Inc.、リング4万4100円/holloow/Showroom Antenna styling / Ishii Daisuke(daipro)
|
|
(その2へつづく) |