| |
|
 | “早く50代にいらっしゃい”という話をして下さい。50代の魅力、それだけは、まだ分からなくて。 |
 | 面白いですよ、すごく。うーんと……。なんて表現すればよいでしょうか。ちょっと長くなりますけれど、いいですか? |
 | はい、もちろん。 |
 | 昔モルディブに行ったことがあるんです。遠浅なんですよ、水深30cm〜1mくらいの浅瀬がずっと続いているんです。浅瀬では、コバルトスズメとかエンゼルフィッシュみたいのとか、小さな熱帯魚がたくさんいるんです。それだけでもワクワクものなんですが、そこをずっと泳いでいると、いきなり30mはあろうかという深い溝が現れるんです。陸地でいうなれば、崖ですよね。今までのカラフルな世界から、暗くて深い世界に一変するんです。でも勇気を出して、息を深く吸って、体に重みをかけてその深みに向かって潜ってみる。そうすると、その勇気に比例して、素晴らしい世界が広がっていく。シルバーや鉛色に光る大きい魚たちが50匹か100匹はいそうな大きな群れをつくって悠然と泳いでいて、本当に美しいんです。長くなりましたが、50歳を過ぎて、今までのカラフルな世界がいきなり深くなりました。でも思い切って潜っていくと、自分の勇気に比例して、世界はこんなにも深いものなのかと感激してしまうんです。非常にダイナミックですね。人生は面白いです。 |
 | 浅瀬でずっと戯れていたい気もしますが。 |
 | もちろん浅瀬で熱帯魚に囲まれているだけでも、充分楽しいんですよ。でも長く生きるっていうことは、それなりの意味がありますよね。その意味をかみ締められるかかみ締められないかだけの違いですが、大きくそのふたつは違いますね。 |
 | 秋吉さんは、無駄な時間もいっぱい過ごされたんですか? |
 | はい、たくさん無駄を経験しました。 |
 | その無駄が科学反応を起こして、肥やしになったということは? |
 | 全くないです。無駄は無駄ですね。でも、無駄な時間を無駄としっかり認識して生きていれば、その時間は単なる無駄じゃないと思います。 |
 | 秋吉さんと定期的にお話する機会が欲しいです。仕事ヌキで。 |
 | そうですね、長老ですから(笑)。でもね、私、男性によく敵愾心をもたれてしまうんですよ、なぜでしょう。 |
 | それは男が勝てないからですよ、絶対に。女性にモテるんだろうなっていうのは見て取れますね。でもどこか人を嫉妬させるパワーも感じますね。 |
 | そうですか? でも、そんなに嫉妬されたことないんですよ。気が付かないのかもしれませんね。そもそも女性が女性に嫉妬するって、どうしてでしょうか。
|
 | (編集部)自分にないものを持っているからでしょうか。自分が抱く、理想像に追いつけない焦りを感じてしまうというか。
|
 | 大概の若い女性って言うのは、まず、理想を作ると思うんですね。で、その理想像があたかも未来の自分だって錯覚してしまう。その結果「あれもダメ、これもダメ」って、消去法的な考えになってしまって、自分にガッカリきちゃうと思うんです。でも秋吉さんの場合は理想を持たない。日々の積み重ねで50代になっていらっしゃるから、どんどん積み上げられていく。かたや理想像をつくってしまう人は、どんどん削られてしまう。その現実的な感覚からくる落差みたいなものが嫉妬を生むんだと思います。 |
 | すごいですね、さすがです。でも怖い分析です。けれど、分かりますね。確かに、私は理想というものを持っていないと思います。でも美容院などで女性誌などに目を通すと、「50代の女性とは」「美しく老いるとは」っていう特集が組まれている。そういうのを目にすると、「あ、こういうものなんだ」と、自分の理想と勘違いしまって、自分に失望する瞬間がありますね。そしてとても不愉快になる。でも、前もって意識していなかった理想なだけに、すぐに忘れちゃうんですけど、でも理想をあらかじめ持っている人は、それが一生の気分になってしまいますよね。 |
 | 秋吉さんは理想とされていますもんね。女性から。 |
 | とんでもないです。そういう意味では、男の人は羨ましいなと常に思っています。『LEON』なんか作っちゃって、“ちょい悪オヤジ”とか言っちゃって、自分たちを正当化しているというか(笑)。女性は下手ですね、すり抜け方が。 |
 | 男は傷の舐めあいで生きていますからね。ああいう女々しさが重要なんですよ。 |
 | 本当に上手。もう匠のワザですね。女性は若い頃に甘やかされた分だけ下手ですね(笑)。 |
 | 秋吉さん、好きです。今までよりもずっと! 絶対飲みに行きましょうね! |
 | はい。ブラウン管を通すより、評判いいですから、私(笑)。 |
 | よければアリガさん(第1回参照)も一緒に。 |
 | あははは。 |
|
(完) |