たとえば、放映時刻ギリギリで一分一秒を急いでいるというのに、オンエア用のビデオテープをわざわざ「ケースに入れて」手渡す編集スタッフとか(『美女か野獣』)、写真集用の大切なフィルムを「オレ他の用事があるから、編集部に持ってって」と他人(友人のライター)に託しちゃうカメラマンとか(そしてお決まりの紛失騒動……『恋は戦い!』)。
それ以上に、業界の慣行とは別のレベルで「はぁ〜?」となってしまうような描写も多いね。男のために赤いマフラーをデスクで(!)編んでる、気象図の読めないお天気キャスター(白石美帆)とか。「『神田川』かいっ!? いや、『津軽海峡冬景色』!?」とテレビの前で突っ込み入れてしまったのは、私だけでしょうか……。
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「マスコミで働く女」が主人公になりやすいわけ
振り返ってみるとマスコミ業界を描いたドラマというのはこれまでに数多くあったらしく(※1)、そこで働く女性たちにスポットライトをあてたものも少なくない。そういう女性たちはたいてい「明るく」「まっすぐ」「前向き」で「好奇心が強く」「こわいもの知らず」、だけど「ドジ」だったり「気が強すぎ」たりする。
仕事で大ポカをやらかしたり、取材相手を傷つけてマスコミの仕事自体に失望したりと挫折もあるが、試練にめげず仕事に打ち込んで、いつしか人間的にも成長していく……(その過程で、仕事仲間の男もゲットする)というのがよくあるパターン。
まあ、テレビドラマのヒロインに必須の「明るくて活発な娘」という性質を満たしているというイメージ(あくまでも)が強いから、マスコミ稼業の女のドラマが多いのかなあ(※2)。テレビ、出版、新聞など、マスコミ業界で働いている女性たち(自分も含めて)を振り返ると、皆がそんなふうに「明るさ」や「前向き」な性質を備えているとはとてもいえないんだけど(笑)。
マスコミ人間に共通の性質とは?
でももしかしたら「マスコミの女」に限らず、「マスコミの人間」に共通の性質は、やっぱりあるんじゃないかと思う。それは……「知ること」「聞くこと」「伝えること」についての、一種のゴーマンさ(あるいは過信)。「取材」という名のもとに「人に話しかけること」「できるだけ『いい話』を聞き出すこと」「広く伝えること」ことを日々の仕事としていると、相手の「知られたくない」「尋ねられたくない」「広められたくない」という気持ち(権利)を軽視しがちな自分に気づくことがある。ちなみに私の場合、退職後に受けた取材で初めて「取材される立場」を経験したことが、それまでの自分を振り返る機会になった。
「事実とは、当然教えてもらえるはずのもの」「事実を伝えることは感謝されるべきこと」という、マスメディアの人間にありがちな思いこみは、かなりゴーマンなものだと思う。気をつけなくっちゃねー。と、本庄まなみや真中瞳を観ながら、自分に確認するのでした(※3)。
■今回の投稿テーマ■
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(※1)
87年の『パパはニュースキャスター』『アナウンサーぷっつん物語』あたりに始まって『ADブギ』『ニュースの女』『スクープ』『タブロイド』『女子アナ。』『ストレートニュース』などなど……。
(※2)
この手のドラマが多い理由を考えてみました。
(1)視聴者の「業界の内側を知りたい」という興味を満たす。
(2)ストーリーや登場人物をハデに描けて、ドラマティックな物語を作りやすい。
(3)制作スタッフの日常業務を「仕事へのプライド」とか「情熱」を描く「成長物語」に美化することで自己満足に浸れる。
(4)同じマスコミ業界の話なので作りやすい(しかし「マスコミ業界ドラマは、突っ込みどころ(事実に反する描写)満載」ということから考えると、この説は当てはまらないだろう)。
(※3)
雑感ですが、『メッセージ』のりょう、あの引っ詰め髪+前髪ハラリはきれいだな。『美女か野獣』の松嶋、分量の多いセリフに口がついてってない。早口言葉の練習がんばれ。『恋は戦い!』、白昼の編集部で痴話喧嘩するフリーライターとカメラマン(しかも「そーよ、あたしは編集長が好きよ!」と叫ぶライター)……そんな修羅場な編集部、あったら見てみたい。
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text / Wada Mayuko
illustration / Yoshida Nami
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