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更新日:2003年9月4日
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文/和田真由子


第30回:どう思う? 少女マンガ雑誌の
レイプシーン続々の性描写

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   「少女マンガ雑誌には、過激にエロなものがある」「しかも、それが少女たちにえらい人気である(※1)」。そう噂には聞いていたものの、これほどとは……。こ、こんなエロいマンガを普通のコミックコーナーで売ってていいのだろうか……。買った少女(エロ)マンガ誌を電車の中で開かなくて良かった、と胸をなでおろしたくらいです。

   まずはこの手の少女マンガ誌におけるH表現についての統計を見ていただきましょう。といっても私がさっき取った大ざっぱなものだけどね。

   サンプルは小学館から出版されている『少女コミック』18(9/5)号、『少女コミックCheese!』10月号(※2)。この2誌に掲載された、計30作品から抽出しました。

【セックス】
・強制的なH(レイプ)5件、未遂2件(「結局両思いに」4件/好きじゃない男に惚れられて無理矢理2件/「敵」にやられる1件)
・やや強引なH(「嫌よ嫌よも好きのうち」的なあいまいな表現も)2件
・双方合意のH4件
・行為のいろいろ:オーラル3件/無理に指を突っ込まれる(もう絶句……)2件/コードなどで腕や脚をしばられる4件/相手の名前をカッターナイフで体に刻まれる(オイ!)1件

【キス】
・無理矢理キス7件
・双方合意のキス25件
・人工呼吸1件(まだあった、少女マンガの伝統芸。なんか可愛い)

【その他、特徴的なエピソード】
・妊娠(の疑い)2件
・血縁のある兄or弟との恋愛2件(近親相姦もホットなネタらしい……)
・フリーセックスパーティ1件

   ……どーでしょう。性表現の多さよりも、その性表現に「レイプ」や「彼が無理矢理(強引に)」的な描写が多いことに、私はぶっ飛んでしまいました(※3)。これはあくまでも「ローティーン向け」少女マンガで(実際に書店やコンビニでは「りぼん」や「なかよし」の隣に置いてあったりする)、「レディースコミック」ではないはずなのだが。その証拠に、セリフなどの漢字には総ルビ(ふりがな)振ってあるし、読者のお便りコーナーの投稿者の年齢は「小5」「小6」「中1」がメインなのだ(※4)

レディコミにレイプ描写が多い理由

   私の受けたショックと戸惑いは以下。「今どきの小学校高学年って、もうこういうセックスシーン全開のマンガとかを読んでるんだ……」「学年誌の出版社が、こんなエロい雑誌出してるんだ……」そしていちばんの疑問は「しかし、レイプが蔓延する少女マンガって、『恋愛もセックスもこれから』という年代の女の子にとって、どーいう意味があるの!?」ってこと。

   レディースコミックやボーイズ・ラブ(※5)ものなど、女性向けのマンガに「レイプ」ファンタジー(あくまでファンタジーであって現実の願望ではない)が多いことは以前から指摘されている。女にとってレイプ・ファンタジーが「役に立つ」のは、女が性に積極的であることを「ヤリマン」等とタブー視する社会規範の中で、女が性から快楽をくみ取るための「いいわけ」として、「私が望んだんじゃない、彼が無理矢理/強引に」という言い訳として使えるからだ、というのが理由の一つとされている(※6)

   つまり、小説やマンガなど女性向けのフィクションでレイプが描かれるのは、ファンタジー(あくまでも現実ではなく「ファンタジー」なのでくれぐれも混同しないように)としてそれなりのニーズがあるからだ(※7)と考えると、「少女たちが『レイプ』マンガを喜んで読んでいるなんて、教育的に見過ごしておけない!」とこの手の雑誌に対する「有害図書指定」を政府や自治体に要求するのもちょっと違うかなあ……と思う。

こういう本は性の平等化の進展? それとも?

   でも、やっぱり、気になることは気になる。少女をいっちょまえの「女」として扱っていいのか?という疑問(※8)が残っているから。レディースコミックの読者と同じように、小5とか小6の少女たちは「現実とお話」の区別がちゃんと付いているのかなあ。男がゴム無しでやろうとしたときや、無理矢理(レイプ)されそうになったとき、「この人私のことが好き過ぎて、ガマンできなくなっちゃったんだ(ハアト)」なんて思いこんだりしないよねえ?

   単に「今時のコは早熟になった」だけじゃなくて、「女の子たちも(男と同じように)、商品化された性(フィクションだけど)の消費をおおっぴらに楽しめるようになった」と解釈すれば、ある意味で性の平等化が進展している……と見えなくもない。でも、そこに描かれているのが相変わらずのレイプファンタジーだということを、どう考えればいいのか。

   あなたの姪っ子や娘も読んでるかもしれない、H系少女マンガ誌(※9)。あなたはどう思う?


■今回の投稿テーマ■
少女(小・中学生)向けマンガでの「レイプ」の描かれ方、あなたはどう思う? 規制すべきかなど、ご意見ください。

up

(※1)
この手の、少女向けH系マンガ誌(「ティーンズラブ」ともいうらしい)隆盛の背景が論じられることは少ない。『少女革命』という雑誌(昨年東京都などから「不健全図書指定」を受けた)が牽引役となったという話もあるが、誰か詳しい人教えて。

(※2)
出版部数(公称)
『少女コミック』小学館刊 31万部、『少女コミックCheese!』小学館刊 17万部

(※3)
典型的な物語の例。ヒロインは高校2年生の女の子。元幼なじみの中3男子の家庭教師をすることになった。家教のため彼の部屋を訪れた日、いきなりベッドに押し倒され、延長コードで腕をベッドにしばられ、口にはタオルを詰められて(絶句)レイプされるが、事後に「ずっと好きだった」と言われてカップル化(笑)。彼(レイプ中学生)ができたヒロインは部活の先輩から告白されるが断る。すると、そいつにもその場(理科室)でレイプされそうに。危ないところ(といっても指は突っ込まれた)で、ちょうど高校見学に来ていた彼(レイプ中学生)が(自分が前にしたレイプを棚に上げて)ヒロインを救い出し、めでたしめでたし。水原風南「純愛講座ケモノ仕様」(『少女コミック』18号付録)

(※4)
掲載された読者のお便りは、ハードなHとは無縁であどけない(名前しか知らない彼に片思いです!とか)。このギャップが意味することは、読者にとって「マンガはファンタジー。現実にはHありの恋愛なんてまだまだ遠い将来の話」ってことか、それとも?

(※5)
「少年同性愛」をテーマにした小説やマンガの1ジャンル。読者対象は男性ではなく女性(少女)。

(※6)
藤本由香里「女の、欲望のかたち レディースコミックにみる女の性幻想」(1992年『ニューフェミニズム・レビューvol.3ポルノグラフィー』所収)
レディースコミックとは異なるボーイズ・ラブの場合も、レイプという行為の「苦痛と恐怖はごく一時的なものであり、性描写の大半を占めるのは“初めて知った『性』の悦楽”の描写なのである」ことから、「ボーイズ・ラブにおける強姦(暴力)から快楽へという表現には、ヘテロ(注:異性愛)である「少年」を同性愛という特殊な関係に導くための、無理の少ない“理由”という役割が存在していると考えられる」という。(藤本純子2001年「女性の性をめぐう眼差しの行方? 少女マンガとしての“男性同性愛作品”の変容を手掛かりに?」『大阪大学日本学報』20号)
ボーイズ・ラブの読み手が実際は少年でも男でもなく「少女」だということを考えると、「少年」を「少女」に、「同性愛という特殊な関係」を「セックスという(少女にとって)未知の領域に」と言葉を入れ替えて理解してもいいのではないか。つまり、「強姦から快楽へという表現には、少女を未知の(そして女性が自分の思うままに振る舞うことが未だタブー視されがちな)セックスという領域に導くための、無理の少ない“理由”という役割が存在している」んじゃないかなあ……。

(※7)
『少女コミック』のH系マンガの読まれ方について、巨大匿名掲示板2ちゃんねるには「自分は(Hを)されただけ、悪いのは積極的に求めてきたカッコイイ男の方。そんで快楽だけ自分のもの。責任はみんな男」「たぶんきっと、女の子の永遠のロマンとしてのラブってこーゆうのなんだろう、とは思うのです。ちょっとゲンジツとはかけ離れたシチュエーションで、自分だけを苦しいくらい(注:レイプしてしまうくらい)好きな男の子にふりまわされる、と」等という分析もある。

(※8)
「女として一人前」扱いできる(別の言葉でいえば「性的自己決定権」を認められる)のは一体何歳からか、という問題も難しいけど。でも少なくとも小学生は……。

(※9)
再び2ちゃんからの引用。「うちの親戚の子(中1)のクラスメイトはほとんど性コミ(注:『少女コミック』を指す)買ってるみたいで『これすっごくおもしろいよ!!読むと彼氏に会いたくなるんだよね〜』って言われて、おねえちゃんも読んでみて!って渡された。ってかあたし中1のときはまだりぼんでキスシーン見ても多少ドキドキしたのに『彼氏に会いたくなる』ってそれってつまり……」。
私自身は『ベルサイユのばら』でオスカルとアンドレの初ベッドシーンにドキドキしました(笑)。今考えると、具体的に何をどうしていたのかは、さっぱりわからなかったなあ……。っつーかそうじゃなくて、少女時代に読んだベルばらの「生涯かけて、私ひとりか?」というロマンチックラブイデオロギー(恋愛とセックスと結婚の三位一体思想)には、少女期の私はかなり強力に刷り込みを受けて、最近までかなり毒されてたと思う(同世代の多くの女性がそうでしょう)。だから最近の少女マンガのレイプ描写に怖くなるのかも。




text / Wada Mayuko
illustration / Yoshida Nami



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