カフェグローブ200万人が街に出た日 - ピースデモレポート・ロンドン編

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更新日:2003年4月1日
ロンドンピースデモ 200万人が街に出た日
       

去る2月15日、ロンドンで200万人が参加した巨大な反戦デモが行われました。日本のニュースでも大きく取り上げられたこの反戦イベントを、東ティモールの記事を寄せてくれたフォトジャーナリスト、かにさえさんが参加者の目からリポートしてくれました。

文・写真/かに さえ(フォトジャーナリスト)

イギリス史上最大規模のデモ!

  とうとうイギリスも本格参戦という形で戦争が始まってしまった。イギリス人は一般的に政治意識が高いだけに、ブレアのアメリカ追従姿勢に対する憤りはものすごい。2月15日の反戦デモが前代未聞の規模に膨れ上がったのも、国民の焦りといら立ちがあったからだった。

  何回か行われた世論調査では、攻撃反対派はいつも6〜7割。私の友人知人もほとんどが反対派で、デモ前は顔を合わせるたびに「例のデモ、行く?」という話になった。普段は中立を標榜している一般紙も、2月15日が近づくにつれ、次第に反戦的な内容を増やしていった。

  かすかな悲壮感を含みつつ、それでも「デモは派手にユーモアを込めて」がイギリス流デモの掟。目的は同じでも表現方法はさまざま。ではイギリス史上最大のデモの様子をお伝えします。


あまりの人数に、いきなりデモの列がストップ

  その朝、ロンドン大学の構内では、イギリス全土からデモの前夜祭に集まった学生たちが、眠そうにトイレで顔を洗ったりお化粧をしたりしていた。パーティは夜遅くまで盛り上がり、そのあとも寝袋持参の学生たちが明け方までドラムを叩いたりしていたらしい。

  さて、12時半に張り切ってスタート! でも15分ほど歩いただけで、大英博物館前で行列はピタリとストップ。30分は待っただろうか。しびれを切らした私はプレスカードをひらひらさせながら前へ行ってみる。するとポリスが恐い顔で立ち塞がっている。

 「暴れることで有名な反グローバライゼーションのデモじゃないんだから、そんなにピリピリしなくったって……」と思っていると、なんと、さらに大きな人の流れが私たちの集団の前を進んでいく。「えっ、私たちの列が一番前じゃなかったの?」。北のほうから思い思いにスタートした人たちが大勢いるようだ。右からも左からもどんどん人波が合流してくる。これはすでに相当遅れをとっていると焦った私は、歩道に上がって先頭と思える方向へ走った!


サンバに医者に血だらけ人形……

  走っていると、景気のいいサンバが聞こえてきた。この寒いのにドレスアップしたおねーさま方が踊っている。相当練習してきたらしく見事に揃っているし、生バンドまで連れている! ポリスは「デモが進まないから早く行け!」なんて怒っているけど、知らんぷり。ポリスに向けてお尻をプリプリ振ってみせたりして余裕シャクシャクだ。

  進んでいくと、またしても進行を遅らせる1組のカップルが。男性の方は医者の扮装でストレッチャーに乗せた血だらけの人形を押している。ただでさえノロノロしているのに、このカップル、フッと立ち止まり急にしかっと抱き合っている。「愛こそすべてー!」と聞こえてきそうなこの光景に、ポリスも呆れているのか何も言わない。


広大なハイドパークが人で埋め尽くされていた

  やっとピカデリー・サーカスまでたどり着いたけれど、最終地点のハイドパークはまだまだ遠い。こんなペースじゃ夜になっちゃうー! と柵を乗り越え近道を走り、なんとかイベントが始まる前に到着した。でもすでに人の山。いったいどこから来たんだろうと思って見回してみると、公園に沿って延々と停められた大型バス。1000台以上あるという。バスの前には「○○御一行さま」の札が。遠くはスコットランドから来た人たちだ。

  本日のハイライト、有名人のスピーチが始まった。ロンドン市長のケン・リビングストン、モー・モーラム労働党議員、リベラル・デモクラツ党(訳せば自由民主党だけれど、日本の自民党とは別モノ)党主のチャールズ・ケネディなどで、いかに大物政治家ですらこの戦争に反対しているかわかる。

  終盤になり、いよいよアメリカの人権運動家ジェシー・ジャクソン氏の登場だ。彼を目当てに来た人も多く大きな歓声が上がる。マーチン・ルーサー・キングを彷佛させる彼が「Freedom!」と叫ぶと、群集が「Freedom!」と返す。一気に盛り上がる。ただ、「神は……」と始まった超クリスチャンなスピーチに、ムスリム中心のグループは「あれっ?」っと思ったかもしれないが。トリをつとめた新人ヒップホップスターのミス・ダイナマイトの歌にジャクソン氏も加わり、また盛り上がり、イベントは終了。


暗くなってもまだ出発地点を動けない人も?

 「さてさて、はぐれた友だちと落ち合ってパブにでも行って暖まろう」と思って携帯電話を取り出したけれど、みんな同じことを考えたのだろう。電波は大混乱。結局、ひとりトボトボ来た道を戻る私。暗くなってきたというのに、ハイドパークにはまだまだ人が入ってくる。

  セキュリティのおじさんに「もう、終わっちゃったよ」と教えてあげると、「え? さっきスタート地点からまだデモがスタートしないって電話がきた。やっと出発したばかりの人もいるよ」。……ってことはいったい何人がこのデモに参加したんだろう? 翌日の新聞によれば、主催者発表で200万人が参加したということだ。イタリアとスペインでもそれぞれ100万人とか。鳥肌が立った。


世界はひとつの方向に向かっているんじゃないかな

  多くのイギリス国民の期待をよそに、戦争は始まってしまった。200万人のデモを無視し、自分の党を無視し、国連を無視してブレア氏は一体どこへ向かっていくつもりなのだろう。

  でも、今回のデモに参加して思ったことがある。これだけ異なったバックグラウンドの人たちが1つの目標に向かって進んでいけるってことは、そして世界中で1000万人という人たちが同じ日に同じ目的で歩いたということは、政治家の野心云々を抜かせば、「世界は1つ」の方向に向かっているんじゃないかなということだ。たとえば9.11テロの根源である世界の中での貧富の差の拡大問題だって、先進国の人たちからこうやって意識の共有をしていくことができれば、解決に向かえるかもしれない。

  イギリスでは有権者が自分の地域の議員に直接働きかける運動が盛んだ。どんな地方議員でも、選挙区の有権者の意見をしっかり取り入れて反応しないと次回の選挙が危ないからだ。今回はこれがかなり効果があることもわかった。イラク攻撃をするかどうかの国会決議でブレアの基盤である与党労働党から130人もの「造反議員」が出たのはこの効果にまちがいない。反戦を掲げて閣僚を辞職したロビン・クック院内総務たちも、有権者の目はおおいに意識している。

  戦争が始まった今でもイギリスのあちこちで毎日デモが行われている。先週はロンドンの中高生が学校を集団で抜けだして国会議事堂前でデモを行った。あきらめずに意志を示し続けていくこと――それが政治家の暴走を止める唯一の方法であることを、イギリスの人々は知っている。



text & photos / Sae Kani



今回のデモで人気だったプラカードのひとつが、この「Make Tea Not War」。もっともリラックスした時に入れるのが紅茶であることから……(詳細は写真をクリックしてご覧ください)



景気のいいサンバと本気の踊りででひときわ目立っていたグループ。あとから聞いてみたら……



これが、血だらけの戦争犠牲者らしき人形をストレッチャーに載せて運ぶパフォーマンスをしていたカップル……



ジョン・レノンの「イマジン」が聞こえてきたので、どこからだろうとキョロキョロ……



こんなに多くの子どもたちが参加しているデモがかつてあっただろうか……



前回のデモに引き続き、今回の成功も陰の立役者は学生たち……



パレスチナの旗を持った学生や、写真のようなプラカードを持った人も多かった……



大寒波で木枯らし吹き荒れる中、ハイドパークは見渡す限り人、人、人……



マーチン・ルーサー・キング的に人気のあるジェシー・ジャクソン師も登場……


Kani Sae
かに さえ
ロンドン在住フォトジャーナリスト。アジアを中心とした開発・人権環境問題を中心に活動中。5月よりベルリンで開かれる「東ティモール展(アムネスティ・インターナショナル主催)」にも出展します。ふだんはロンドンで日本向け雑誌の取材・コーディネートもやってます。

Cafeglobeに寄せた記事
新しい国、東ティモール誕生の瞬間

スマトラ沖地震直後の現地レポート

email:sae_kani@yahoo.co.uk


関連リンク
■Cafeglobe.com記事より
渡辺葉さんによる世界一斉反戦デモ・ニューヨークのリポート

特派員の松尾さんが参加したサンフランシスコの反戦デモ

反戦で名をあげた(?)フランスからのリポート

■そのほかのサイト
Stop the War Coalition(英語)
今回の200万人デモなど、ロンドンでの反戦イベントの中心的オーガナイザー

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