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No.096 アメリカが抱える問題を浮き彫りに 同時テロと“聖者”を描いた映画が話題 |
米同時テロ事件発生から5年。ニューヨーク市消防局(FDNY)付き司祭として、消防隊員らとともに世界貿易センターに入り、亡くなったマイカル・ジャッジ神父(当時68歳)を描く『セイント・オブ・9/11』が今春から、世界各地の映画祭で上映されている。同テロ事件の認定死者第1号として広く知られる一方、ゲイ、元アルコール依存症でもあった神父の人となりを丹念に描いたドキュメンタリーは「心を打つ哀歌」(ニューヨーク・タイムズ紙)などと称賛された。
ジャッジ神父は1933年、アイルランド移民の子としてニューヨーク市ブルックリン地区に生まれた。15歳で聖職者になることを決意し、ニュージャージー州などの教会で司祭を務めた後、1986年にはニューヨーク市内の教会に移籍。1992年からはFDNY付きの司祭となった。 「寒かろうと彼にコートをあげても、その日のうちにホームレスの手に渡ってたよ」。「アルコール依存症だった時代に悪酔いし、勢いでお尻に刺青を入れてしまったらしい」。「感染経路が不明で、家族までがエイズ患者に背を向けていた1980年代前半、マイカルが瀕死の患者を抱いてキスをした姿が忘れられない」……映画のなかで語られる神父の人柄を表すエピソードは尽きることがない。 求められるところには可能な限り出向き、「市長からホームレスまでが友達だった」と言われた神父の葬儀には、当時のジュリアーニ・ニューヨーク市長やヒラリー・クリントン上院議員をはじめ、彼を慕う2800人以上が参列した。
ゲイ人口約1000万人と言われる米国だが、いまだ一部では同性愛の話題がタブー視されていることも事実。ジャッジ神父の死を悼む人々の中で、ゲイ報道に対する反応が真っ二つに分かれたのもこの表れだろう。 神父とは10年近くの付き合いだったという消防隊員のブライアン・トーマスさんは「今でも(神父がゲイだったとは)信じていない」と言うひとり。「神父は、アルコール依存症だったことは隠さなかった」と言い、「ゲイ云々は神父の死後に言われ始めたこと。故人にとってフェアじゃないと思う」と話す。 『セイント……』の共同プロデューサーで、神父の15年来の友人だったブレンダン・フェイさんは、ゲイの人権活動家でもある。フェイさんが2001年10月、神父のお別れの会を企画した際には、「『神父のように素晴らしい人がゲイであるはずがない』『秘密は神父の死とともに葬り去られるべきだ』など、ありとあらゆる抗議の電話を受けた」と打ち明ける。
フェイさんは、同性愛問題に口を閉ざす米国の風潮を変えていきたいと話す一方で、「マイカルをゲイの象徴のように喧伝するつもりはない」という。「カミングアウトは勇気ある行動だけど、それだけでは不十分。貧しい人々や移民など、他のコミュニティの抱える痛みを理解し、ともに住み良い社会を作っていくことの大切さ。それをマイカルは今も語り続けている」と話す。 『セイント……』を監督したグレン・ホルステンさんは、「ジャッジ神父を知らなかった人たちが、彼の人生を知り、感動したと言ってくれる。神父がこうやって今も人々を導いていることは素晴らしいことだと思うし、映画を作って本当に良かったと思えるよ」と語る。また「和平を訴え、英領北アイルランドを何度も訪問した彼が生きていたら、イラク戦争が続く今も同じように行動したに違いない。神父の祈りが政策決定者らに届くことを願う」とも。 映画は、今春開催されたN.Y.のトライベッカ映画祭で初上映された後、ニュージーランドやカナダのモントリオールの映画祭を回り、現在も米国内の映画祭で上映されている。いまのところ日本での上映予定はないようだがDVD(英語)は http://www.saintof9-11.com/saint/ で購入可能。神父の人となりをしのび、アメリカが抱える社会問題について考えてみる良い機会になりそう。 |
| text / Aru Kimiko |
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| 瓦礫の中から運び出されるジャッジ神父を捉えたこの写真は、…… |
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ジャッジ神父の功績をたたえ、神父の所属した教会の向かいの通りは…… |
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ジャッジ神父の所属教会の向かいにある消防署には、犠牲となった…… |
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アイルランド出身で『セイント……』共同プロデューサーの…… |
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同時テロ発生から5年を迎えた9月11日、消防署には、花を…… |
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『セイント……』を監督したグレン・ホルステンさん。 |
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