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| 第7回 [選挙総括編] |
ブッシュが勝ったからといって、
日本までがペコペコする必要などない |
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民主党を支持していた人たちの落ち込みぶりはすごいですね。今週の『JMM』にも書きましたが、ブッシュ再選が決まった直後から、カナダ政府サイトの移民情報ページが記録的なヒットになっているそうです。アメリカ国籍を持っているとカナダの永住権は簡単に手に入るので、落胆した民主党支持者たちがカナダ移住情報を探したのでしょう。ほとんどの人は半ば冗談だと思いますが、ヒット数が伸びたのは事実です。ほかにもニュースキャスターが髪型を変えたとか、落ち込み話はいくらでもあります(※1)。
前回の記事で私はケリーの勝利を予想しましたが、外れてしまいました。たしかに投票率はアメリカとしては画期的な60%まで上がりました。一般的には投票率が上がると挑戦者が有利になります。今回も普段は投票に行かない若い人が来るとケリーが有利になるだろうとマスコミも予測していました。しかし、開けてみれば高齢者の投票率が非常に高くなったのです。ブッシュ率いる共和党が、「ケリーが大統領になると家族や結婚といった価値観がメチャメチャになってしまう」とアピールしたのが効果があったのでしょう。
しかしそれ以上に、今アメリカ人の中にある漠然とした不安感――次に何を産業の柱にしたらいいのか見えない状態で、とくに世界との関係が薄い中西部などで、不況や仕事がないという心理的な不安がうまくテロへの不安感に重なるよう誘導されてしまったのだと思います。結局、テロの犠牲者を実際に出したニューヨークやニュージャージーではケリーが圧倒的に支持されたのに、そこから遠い中西部や南部でテロへの戦いを謳うブッシュが支持されてしまったわけです。 |

振り返ると、やはりケリーさんの典型的なエリートっぽい喋り方とか、再婚したテレイザさんがとても国際的な人だとか(※2)、そういったことに反感を覚えた人たちが多かったのだろうとも思います。とくにテレイザさんの英語はアメリカ英語でないし、お金持ちのくせに環境問題なんかやってカッコつけて、と。これはフランスがイラク攻撃に反対したときにワッと高まったフランスへの反発心と似ています。「お高くとまってワケわからない言葉を喋って、民主主義は自分たちが教えたとか言いながら裏ではフセインと繋がっていたりして、あんな人たち許せない!」という。
しばらく前まで、世界の人たちにとってアメリカは、「なんだかんだ言っても正義にチャンスをくれる国」という夢のある国だったと思います。そういった部分が完全になくなったわけではないと思いますが、アメリカでも世界のことを全然知らない人たちが外国を怖いと思うようになり、誰かを「売国奴」と罵るような状況が出てきていて、またそういった感情が選挙の中で巧みに誘導されるようにもなってしまった。民主党も、それに対して「それは違う、あなたたちの漠然とした不安は経済や暮らしの先行きに対する不安なんですよ。私たちはこういう方法でそれを解決します」と言うべきだったのに、それがうまく出せなかったのだと思います。 |

ではブッシュがあともう4年やることになって、まず日本の安全保障がどうなるかですが、これは技術的にかなり多くの物事が進んでしまっていますので、気をつけなければいけないと思います。アメリカは今、イラクも含めた中東までを責任範囲とする重要な司令部施設を神奈川県の座間に置こうとしています。これが何を意味するかというと、これまで日本が考えていた、アメリカとの同盟は日本の周辺の安全のためだけという状態とはまったく違うことになりますが、それは日本ではあまり議論されていません。
北朝鮮については、基本的にはブッシュは6ヶ国協議を維持しつつ漠然と進めていくでしょう。ミサイル防衛構想を進めるため、また小泉政権の求心力維持を考えると、あそこがパッと自由な国になってしまうよりも、緊張のある状態を続けておいたほうがいいだろうという考え方があるためです。ただ、2008年には北京オリンピックもありますので、ずっとこのままの状態で4年間行くのかはちょっとわかりません。ブッシュ本人はちゃんと考えていないと思いますが、パウエルやラムズフェルドも辞めることを匂わせている中、国務長官や国防長官に誰が就くかにもよって変わってくる可能性が出てきます。 |

ひとつ大きな勘違いがあるのではないかと思うのは、ブッシュが選挙で勝ったからといって、日本がブッシュの言うことを聞かなくちゃいけないんだと思う必要はまったくない、ということです。ブッシュが勝ったのはあくまでもアメリカの選挙です。そこでいかに大きな支持を集めようと、日本は独立した国なんですから、日本の国のためになることをすればいい。むしろ選挙に勝った相手なのですから、「野党から文句を言われることもないでしょうから、私たちの要求をサッサと受け入れて下さいよ」と言えるはずじゃないですか。
日本はイラクに自衛隊を派遣しました。 ブッシュはそれを選挙演説で日本の名前も挙げて「ホラ、たくさんの国がイラクに一緒に行ってくれているじゃないか!」と利用しました。そうして勝った今、ブッシュ大統領はさっそく意気揚々とファルージャへの総攻撃を始めましたが、長い目で見ればこれがうまく行くとは思えない。すでに撤退したスペインに始まり、ポーランドも日本がサマワで頼りにしているオランダも(※3)イラクを引き揚げていくわけです。ブッシュが再選されて選挙協力が要らなくなった今こそ、「よかったですね、ではいっぺん引かせてもらいます」と言ってもいいはずです。
BSE問題もそうです。ブッシュは日本が望む全頭検査を受け入れたら畜産業界がパニックになることがわかっていたので、日本に強い態度で臨んでいましたし、日本も多少譲歩していた。でもこれも選挙対策は終わったのだから、日本としては食の安全は大切だからもう一度言わせてもらうよ、と言ってもいいはずです。
ブッシュが再選され、アメリカはますます威張って強くなっていくかというと、私はそんなことはないと思います。今の保守化は、信じてきたものが崩れていくことに対する焦りと、将来に対する不安から来ているものです。アメリカは今でも腕力こそ強大ですが、中身はフツーの国になってしまったのです。そしてブッシュ政権はこれから4年間でイラクを安定させ、無理をしてきた財政赤字を立て直すという非常に難しい課題に直面しています。今、日本がアメリカに対して劣等感を持つ必要はまったくない。正しいと思えることをきちんと伝え、交渉していく時期に来ていると思います。
(まとめ・Cafeglobe編集部) |
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text / Reizei Akihiko
illustration / Hasegawa Maki
design / Suzuki Yumi (Cafeglobe) |
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※1
Cafeglobeの「news BBS」や編集部に届いたメールにも、「ニューヨークでは通勤電車の中で新聞を開いている人がひとりもいなかった」「ブッシュの笑顔が耐えられなくて、もう3日間テレビは見てない」「誰も大統領選の話題を口にしない」など、うちひしがれた民主党支持者のエピソードが多数ありました。
※2
テレイザ・ハインツ・ケリーさんは、第二次大戦中のホロコーストを逃れるため、ポルトガルの国籍をとりポルトガル領だったモザンビークに移ったユダヤ系の両親の元に生まれた。南アフリカ、スイスの大学で学び、アメリカへ。学生時代に知り合って結婚した元夫のハインツ上院議員(ケチャップのハインツの御曹司)を航空機事故で亡くし、500億円を超える遺産を相続。環境問題や人権問題、女性問題などにとても熱心な活動家でもある。
●Cafeglobe連載 「メディアの森の女たち」
ケリー妻テレイザとブッシュ妻 ローラの徹底比較!
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※3
10月下旬から11月にかけ、イラクに派兵している主要国のいくつかが撤退あるいは撤退を検討していることを発表。
ポーランド(2005年1月から撤退開始、撤退完了時期は名言せず)
オランダ(2005年3月末までに撤退)
ハンガリー(2005年3月末までに撤退)
このほかブルガリアが兵員の1割削減を発表、スペイン、フィリピン、ホンジュラス、ドミニカ共和国がすでに撤退している。
日本の自衛隊も来る12月14日に派遣の期限が切れるが、小泉首相は「世論を見て決める」と言いつつも、ほぼ延長は決まっている模様。さらに今回は無期限での延長を計画しているという。どうする、日本?
●主要国のイラク派遣人数(人)
アメリカ合衆国……142,000
イギリス……8,361
イタリア……3,169
韓国……2,800
ポーランド……2,400
ウクライナ……1,400
オランダ……1,345
オーストラリア……920
ルーマニア……700
日本……550
デンマーク……496
ブルガリア……485
エルサルバドル……380
ハンガリー……300
※出展:globalsecurity.org
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