近年ベトナムは、経済成長率が年8%と発展が目覚ましい。途上国といってもメルセデスなどの外車は目につくし、街中いたるところにあるネットカフェでチャットやオンラインゲームを楽しむ若者もよく見かける。こうした光景を目にすると、とても30年前まで戦争をしていた国とは思えないほどだ。が、ベトナム戦争時代の傷跡は、よくよく目をこらすと今なお癒えきっていないことがわかる。
ハノイ中心部から車で30分ほど走った郊外・タインスワン。ここには、ハノイで唯一の、ベトナム戦争時の枯葉剤で被害を受けた子どもたちの全寮制施設『タイスワン平和村』がある。枯葉剤によるダイオキシン被害は親から子へと影響を及ぼし、いまもベトナムの人々を苦しめているのだ。
この施設は、ドイツのオスバーハウセン国際平和村の援助により1991年に建設された。校長を務めるフォン氏によると、入居対象者は枯葉剤のダイオキシンにより生まれつき障害をもった、2歳から18歳までの少年少女たち。施設では子どもたちの自立を支援するプログラムがあり、絵画、コンピュータ、刺繍などが学べるほか、簡単な手術などの治療を施せる部屋もある。
『タイスワン平和村』には、子どもたちの自立を支援するさまざまな職業訓練プログラムがあり、ミシンを使っての縫い物のクラスもそのひとつ。財政の関係により先生1人に対して生徒23人はかなり大変。 が、いちばんの課題は18歳になって施設を卒業した後の就職先だ。いくつかのIT関連企業や公営施設への就職、また刺繍などの専門職で自立している卒業生もいるが、厳しいのが現状である。資金面の問題も深刻だ。施設内の3つの建物のうち、2つは老朽化しているため建て直しが必要。肢体不自由だったり脳障害がある子どもたちの医療設備や教育設備も足りない。「経営困難な状態のため、施設に入りたい子ども全員を受け入れられないことが残念だ」と校長のフォン氏は言う。
差し入れたお菓子を仲良く分け合う子どもたち。みんなお客さんが大好き。筆者の訪問もとてもうれしそうに受け入れてくれた。 施設の財源は寄付によるところが多く、ドイツをはじめ、現在は韓国、日本からの個人や友好協会からのものが多い。最近では、米国フォード財団が枯葉剤被害の克服に220万ドルを投じると発表している。これらの支援の輪を途切れさせないことはもちろん、ベトナムが急成長を続けるいま、利益の一部をこうした支援活動に充てる優良企業の登場も、近い将来に期待したいものである。
『タインスワン平和村』のパンフレット。寮、食堂、手術室、屋外遊び場などがあり、電話での事前予約で見学随時可能。子供たちの刺繍、彫刻、絵などの購入もできる。●ベトナム枯葉剤被害者支援の会●「全日本民医連」による「平和村」レポート