夕方から深夜まで連続ドラマシリーズがオンパレードのイラン。人気シリーズの時間帯には、人通りや交通がめっきりと減ってしまうこともある。宗教上、キスシーンさえ映さないので親子で楽しめる娯楽なのだが、ストーリーはかなりドロドロ。
街角のキオスク(小型売店)に並んでいた週刊新聞は、どれも『ナルゲス』特集だらけ。他にも24本ものドラマが放映されている。 最近まではやっていた連ドラは、主人公の信心深くてつつましやかな女性ナルゲスと、奔放な生き方を求める妹、そしてその周りの人々の人生模様を描いた『ナルゲス』。妹・ナスリーンは金持ちの御曹司ベヘルーズと結婚するが、彼の親は猛反対。秘密裏に結婚届を出したしたのを知った父親は、息子ベヘルーズを徹底的に責め続ける。そのうちに周りの人々まで巻き込まれて苦しまされる。
親に頼れないベヘルーズは、なんとか仕事を探そうとするがそれも叶わず、「お金が大好き」なナスリーンの性格にすっかり疲れはて、外国へ行ってしまう。一方ナスリーンは、常に温かく見守るナルゲスに支えられながら、べへルーズとの娘を産み育てる。何年かしてベヘルーズはイランに戻ってくるが、長年のストレスのためか体調が思わしくない。そんな中ベヘルーズに、外国で婚約した女性がHIVに感染していることが判明したと連絡が入る。ベヘルーズは自分もHIVに感染していると思い込み(実際は感染していなかった)、気力を失いすっかり老けこみ、廃人のようになってしまう……。とこんな感じで内容はとっても波乱万丈。
結婚時は幸せそうなナスリーンとベヘルーズ。 ドラマをちょっと俯瞰して眺めると、もしかすると外国へ出たがったり、派手な生活を求める若者たちに対し、「ベヘルーズやナスリーンのような苦労の多い人生になってしまうぞ、ナルゲスのように信心深く、つつましやかに生きるのだ」とイラン政府が警告しているのでは?という気もしてくる。国営テレビなだけに、ありえない話ではない。
考えてみれば、私の自宅前の三叉路ではときどき接触事故が起こるのだが、すぐに殴り合いのケンカに発展するし、お葬式ともなれば、心臓発作を起こすのではないかと心配になるほど泣き叫ぶのは普通のこと。イランの連ドラはそんな激昂型のイラン人の国民性をよく反映していて、私などは見終わったあとはぐったりしてしまうこともしばしば。とはいえ、ひと波乱もふた波乱もあり面白さはピカイチ。疲れることが分かっていても、家族で集まり、じっくり見入ってしまうのだった。
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