人が住む最も乾燥した大陸、ともいわれるオーストラリア。水資源の確保は常に重要課題だ。とくに昨年以来、最悪といわれる大渇水が続いている。
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シャワー長時間で罰金も! 広がる節水規制 |
シドニーは現在、「レベル3」の給水制限中。ホースを使った水やりができるのは、水曜と土曜の朝夕のみと決められている。地域によって状況はさらに厳しい。つい先日「レベル6」にまで危険度が上がったブリスベンの場合、水やりの方法から1戸あたり使用できる水の量、シャワーの長さに至るまで制限され、違反者には罰金が科せられる。シドニー郊外で、水まきをとがめたことから起こった殺人事件があったのも記憶に新しい。
シドニー水道局が発行するパンフレットやポスター。「家庭でできる節水10項目」では、野菜や食器はシンクに水を張って洗う、トイレ使用後はハーフ(小)で流すなど身近でできる節水を訴える。 シドニー水道局によると、シドニーの水道水の7割は家庭で使われているという。だから家庭での節水は重要な意味を持つ。たとえばシャワーの時間を1分間短くすればバケツ2杯分の水が節約できる。野菜はゆでずにレンジで調理し、節水と栄養流出防止を。洗濯はたまってからする。とにかく1人1人が身近にできることから始めよう、と訴える。水道局では、シャワーヘッドに取り付ける節水キットを無料配布したり、節水タイプの洗濯機への買い替えや雨水タンクの購入には補助金を出している。
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渇水対策の救世主となるのは? |
とはいえ、節水で得る貯水量には限界がある。渇水対策の切り札としてニューサウスウェールズ州政府が導入するのが海水の利用だ。シドニー空港対岸のカーネルに20億豪ドル(約2,000億円)もの予算をつけた海水淡水化プラントを2〜3年後の完成を目指し建設する。くみ上げた海水を浄化後、高圧で脱塩フィルターにかけるもので、こうした海水の淡水化は他州でも試みられている。
膨大な海水を使えるとあれば夢のような話だが、どうやら良いことばかりではなさそうだ。まず生産コストが高いこと。淡水化の工程で多大なエネルギーを消費し、結果的に温室効果ガスを出してしまうこと、海水をくみ上げることで生態系を壊してしまうこと。
昨年のオーストラリア大干ばつでは、冬場の気温の高さで貯水池の水が蒸発し、渇水に拍車をかけた。 そういう訳で現実味を帯びてくるのが、下水のリサイクルだ。現在、シドニーの下水再利用は2%にとどまるが、海水の淡水化と比較するとコストは半分以下。もちろん下水のリサイクル、とくに飲用には強い抵抗を感じる人が多いのも事実だが、現在のところリサイクルされているのは「グレイウォーター」とよばれるトイレ以外の家庭生活排水。また、再生した水は飲料用には使っていない。だが、下水を飲料水にまで浄化する海外での先例もあり、渇水がより深刻な地域では飲料水としての利用も検討されているようだ。
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世界の食糧事情にも影響 |
ここ100年間で最悪といわれた昨年の大干ばつで、農家は引き続き苦しい状況にある。農業資源経済局による2007/08年度の収穫予測は、6月時点より46%ダウンと大幅に下方修正された。大河マレー・ダーリン川地域はオーストラリアの食卓と経済を支える大農業地帯だが、水不足のため灌漑用の水が配分できない状態だ。ニューサウスウェールズ州でも農地の9割以上が干ばつの影響を受けている。
水不足は農業やビジネスにも影響。向こう1年間の水道水使用の25%減が義務づけられたブリスベンのあるビール工場では、敷地内に水のリサイクル施設を建設した。再生した水は洗浄などに利用する。 そんなオーストラリアの渇水問題、日本人にとっても他人事では済まされない。日本の小麦消費は大部分を輸入にたよるが、その2割以上をオーストラリア産が占めているのだ(財務省貿易統計)。ぶどうの不作はワイン生産に影響するし、飼料となる穀物不足で肉や乳製品も値上がりが懸念される。世界的に食糧の高騰が報道されているが、バイオ燃料問題以外にもオーストラリアの干ばつによる影響も見逃せない。
ともあれ、海水淡水化などの対策が新たな問題や異常気象を引き起こす、なんてことにならぬよう、厳しく見守りたいものだ。目先の水確保は大事だけれど、不可欠なのは長期的に持続可能な水対策。厳しい時期が続く今、それが試されているのかもしれない。