カフェグローブ 知的キャリアの高感度サイト cafeglobe

ニュース 政治・経済ネタも世界の旬情報もナナメ読み

更新日:2008年2月18日 RSS

WORLD NEWS cafe
世界最大の料理サミット
観客の注目を集めたのは
日本人パティシエ長江桂子さん
2008年2月18日
マドリッド(スペイン)
小林 由季/フリーライター
650人の聴衆、150社のメディアを前にして

 彼女が舞台に上がると、会場に一瞬穏やかな空気が流れた。3日間もの間、世界の有名シェフによる講演を受講してきた聴衆にとって、アジア人女性の登場はどこか心和むものだったに違いない。しかし、彼女が流暢なフランス語で話し始めると、会場は再び緊張感に包まれた。

 これは、1月21〜24日に開催された『第6回マドリッド・フュージョン(またの名を、世界料理フォーラム)』での一幕。同イベントは、世界各国から著名なシェフたちが集まり、最新の調理技術や独自の研究を発表するという内容で、“シェフたちの学会”、“料理サミット”とも呼ばれている。


『マドリッド・フュージョン』では今年も、前衛料理を世界に知らしめた『エル・ブリ』のフェラン・アドリア氏(写真左から2番目)や、女性で唯一、ミシェランの5つ星シェフとして知られる『サン・パウ』(スペイン店は3つ星、東京店では2つ星を獲得した有名店)のカルメ・ルスカイェーダ氏らといった、第一線で活躍するシェフが次々に登場し、会場を多いに沸かせた。写真は「テレビ界で活躍した料理人へのオマージュ」という賞を受賞した4人。日本からは服部幸應氏が受賞(写真右)。その他、フランスからはジョエル・ロブション氏(右から2番目)、イギリスからは、3つ星レストラン『THE FAT DUCK』のシェフ、ヘストン・ブルーメンタール氏(写真左)。

 聴衆の関心を惹きつけたアジア人女性というのは、日本人パティシエ長江桂子さん。2年前にドキュメント番組『情熱大陸』でも紹介され、日本でも一躍有名になった彼女は、現在パリの一流ホテル『Hotel Lancaster(オテル・ランカスター)』のシェフパティシエとして日々腕をふるっている。


長江桂子さん。昨年の『マドリッド・フュージョン』が主催した晩餐会でのデザートを担当したことがきっかけで、今年はデモンストレーションでの登場となった。「日本にいるときから日本人らしくないって言われていました」と笑いながら話してくれた彼女は、堂々たる立ち振る舞いが美しく、他の有名シェフにまったくひけをとらない存在感を放っていた。

 今回彼女が650人の聴衆、150社近くの海外メディアの前で作ってみせたのは「フォンダン・チーズケーキ、くずのジュレと柑橘類のモザイク」。明瞭な説明、正確で淀みない手さばきで展開された彼女の発表は、他の数ある講演の中でも、最も分かりやすいデモンストレーションのひとつだった。


中間の人たち”に向けて、発信したい

 大会終了後、彼女にインタビューする機会を得た筆者は、今回のレシピを説明してもらった。「フランス菓子ですし、特に日本を意識するというつもりはなかったんです。季節ならではのものを使いたかったので、柑橘類を選びました。そのフレッシュさに対して、クリーミーなものを、とチーズケーキを合わせて。そんな風に仕上げていくうちに、他のテクスチャーも混ぜたくなったのですが、ムースではあまりに一般的ですし、ゼラチンやアガルアガル()もつまらない。ということで、くずを採用したんです」。日本から何種類ものくずを取り寄せ、試作を続け、それぞれのコシや透明感を研究し、今日に至ったという。常に「なぜ?」を追求するのが好きだという彼女らしく、発表の際には、くずの栽培の様子も映像で紹介され、くずを知らない聴衆の興味を多いに惹きつけていた。
※寒天のこと。


こちらが発表されたスイーツ。グレープフルーツ2種、オレンジ2種を使ったゼリーと、くずで仕上げたチーズケーキを合わせて。「レストランで出すデザートは瞬間性を大事にしたい」という長江桂子さん。飾り用として添えられたオレンジの花の香りも、きちんと計算されている。

 フランスで39年間もの間3ツ星を保持し続けるミッシェル・トロワグロ氏に見いだされ、世界各国で数々の講演を行うほど、人気実力ともに文句なしの一流パティシエ。舞台に立てば、その堂々たる雰囲気で人目を惹かずにはいられない。そんな華やかなイメージとは裏腹に、「朝9時に厨房に入って、気づけば夜中12時半なんてこともざら」というほど、多忙な毎日を過ごしている。34歳を迎えた今、今後についてこんな風に話してくれた。「体力的なことを考えても、この調子で20年も続けられるとは思っていません。これから少しずつ、自分のペースでお菓子を表現できる場を作っていきたい」。

 なんでも将来の夢は「自分が学生のときに出会えなかった、初心者でもなくプロでもない、“中間の人たち”のためのお菓子の本をつくること」。その夢が叶う日は、そう遠くはないはずだ。


<関連リンク>
『マドリッド・フュージョン』のWebサイト

服部栄養専門学校のWebサイト内にある『エル ブリ』の紹介ページ

『サン パウ』(日本店)のWebサイト



他の新着記事も読んでみて!
夏旅はヒマラヤン・リゾートへ!
不況の波がサンタにまで直撃!?
円高の今こそ、海外逃避旅の好機
N.Y.に衝撃が! 肥満問題にメス
地図から検索する
mapを見る 条件を指定して検索する
キーワードで検索する
 
バックナンバー


ニューデリー(インド)
アルジェ(アルジェリア)
ブレーシャ(イタリア)
アルタイ共和国(ロシア)
リマ(ペルー)
バンクーバー(カナダ)
サンフランシスコ(USA)
シアトル(USA)
ニューヨーク(USA)
ロサンゼルス(USA)
サンパウロ(ブラジル)
パナマ(パナマ)
ブエノス アイレス(アルゼンチン)
リマ(ペルー)
上海(中国)
深セン(中国)
香港(中国)
台北(台湾)
ソウル(韓国)
ジャカルタ(インドネシア)
バンコク(タイ)
ホーチミン(ベトナム)
シンガポール(シンガポール)
イスタンブール(トルコ)
ダマスカス(シリア)
テヘラン(イラン)
ドバイ(アラブ首長国連邦)
ロンドン(イギリス)
パリ(フランス)
ニース(フランス)
ミラノ(イタリア)
ローマ(イタリア)
シエナ(イタリア)
ヴェネツィア(イタリア)
ベルリン(ドイツ)
ボローニャ(イタリア)
デュッセルドルフ(ドイツ)
マドリッド(スペイン)
ブリュッセル(ベルギー)
アムステルダム(オランダ)
ブダペスト(ハンガリー)
ストックホルム(スウェーデン)
オスロ(ノルウェー)
ヘルシンキ(フィンランド)
モスクワ(ロシア)
カイロ(エジプト)
ナイロビ(ケニア)
ダーバン(南アフリカ共和国)
シドニー(オーストラリア)
オークランド(ニュージーランド)
ハラレ(ジンバブエ)