1972年日本最南の動物園として、沖縄市にオープンした「沖縄こどもの国」。“遠足というとこどもの国、家族で遊びに行くというとこどもの国・・・”というくらい沖縄県民のアルバムをめくればこどもの国が必ず登場する、沖縄のみなさんにとって思い出の場所だそうです。閉園していた時期もありましたが、2003年に動物園とチルドレンズミュージアムが併設する教育普及施設「(財)沖縄こども未来ゾーン運営財団」としてリニューアルしました。
こどものためのミュージアムとして機能する「ワンダーミュージアム」は、こどもたちが身体と五感を使いながら作品を体験できるたくさんのハンズオン展示があります。そして館内にあるハンズオンスペースの空間デザインやオリジナル展示を定期的にリニューアルしており、その展示作品を同じくミュージアム内にあるインハウス工房で制作するというとっても珍しい施設。さらに珍しいのは、こどもたちと一緒にワークショップをしてつくった作品が展示作品となるのです。今回はある物語をもとに4回のワークショップが開催されました。お邪魔したのは最後のワークショップ、作品の仕上げになるようです。いったいどんなワークショップなのでしょうか・・?
ワークショップ開始15分前になっても、参加者はまばら・・・来るはずのこどもたちが来ません。しかし「今からワークショップ始めるよー」という大きなかけ声で、あっという間にこどもたちが集まりました。早速展示準備中で入れなかった会場に案内され、みんな興味津々できょろきょろあたりを見渡します。そこには床に張り巡る木の根っこがあり、その先を見上げると太く大きな木の幹が天井まで伸び、いろんな緑色の葉っぱが生茂っています。そしてカラフルな鳥の巣もたくさん!!とっても楽しそうな空間です。
はちが「木の根っこも幹も、ぶら下がっている鳥の巣も、全部こどもたちがつくったんだよ。実はみんなにもあるお話の世界をつくってもらいたいんだ」と言い、物語を読み始めました。簡単に紹介すると“わたり鳥が小さい島に落とした木の実が3本の木に育ち、そして1本の大きな木になりました。けど友だちもいなくて寂しい日々を過ごしていたある夜、道に迷った魔女を助けると、お礼にたくさんの巣をプレゼントしてくれました。すると世界を旅してきたわたり鳥が遊びに来て、友だちができた木はみんなで楽しく過ごすことができました”というお話。こどもたちは、はちの言葉に耳をかたむけ、木の根っこや幹を触ったり、木を見上げながら物語の世界に入っていきます。
「あと何が足りない?」の質問に、みんなが声をそろえて「鳥―!!」と答えました。この木にやって来る鳥はどんな世界を旅してきたのかなぁ?物語からイメージをどんどん膨らませ、まずは言葉や絵にして描いていきます。南極と北極に行ってガチガチ震えている鳥、南の島でたくさんのフルーツを食べてきた鳥、ディズニーランドを旅してきた鳥・・・なんだか世界のあちこちからたくさんのわたり鳥が集まってきそうな予感です。
わたり鳥のイメージが決まったらいよいよ制作です。使うのは少し透けていて製図やトレースに使われるトレーシングペーパーという紙。「まずはくしゃくしゃにするよ」と言うはちの説明に、みんなびっくり。最初はいいのかな?って恐る恐るだったこどもたちは、顔もくしゃくしゃにしながらおにぎりをつくるみたいにぎゅっぎゅっと力いっぱい握ります。次に広げた紙の端をちょっとだけ尖らせて、余った紙に空気を入れるように丸めて、真ん中ともう片方の端を握って絞ります。そして絞ったところに好きな色の紙テープを巻くと・・・くしゃくしゃだった紙が鳥の体になりました。
あとは、空を飛ぶための羽が必要です。羽に使うトレーシングペーパーは、天井から吊られている物干しハンガーにたくさんぶら下がっています。花や星、蝶、水玉・・・鳥が飛んで見てきた景色が羽の模様になるのです。「砂漠から来たから・・・この色!」「南から来た鳥だから、フルーツをいっぱい食べてこうなったの」わたり鳥が旅で見たものを想像しながら、たくさんの模様の中を潜り抜けるように選んでいきます。選んだ紙をちょっとずらして重ねたり、ちぎったり、筒状にしたり・・・工夫をこらし世界でただ1つのわたり鳥ができました。できあがった鳥を持つその顔は、まさしくアーティスト!自信満々の笑顔でした。
みんながつくったわたり鳥をモビールのように木に吊り下げて作品は完成。それは物語の最後のシーン、たくさんのわたり鳥が大きな木に集まる賑やかな景色です。ワークショップが終わった後も、自分のつくった鳥を見上げてなかなか会場を離れないこどもたち。きっと物語の続きを想像しているのでしょうね。
ワークショップの冒頭で読まれた物語。これは、はちとインハウス工房のスタッフがワークショップのために考えたオリジナルのお話です。この物語に沿うように、「木の幹をつくる」「根っこをつくる」「ふしぎな巣をつくる」「わたり鳥をつくる」ワークショップが開催され、それぞれこどもたちがつくった作品が合わさることによって、大きな1つの作品になりました。このお話があるからこそ、こどもたちはどんどんイメージを膨らませ、言葉の世界に、そしてワークショップに熱中していきました。そして今、この物語はこどもたちのつくった大きな木のそばに展示されています。新しくなった空間を見に来たこどもたちは物語と作品を見ながら、更なる想像を膨らますことでしょう。ワークショップをつなぐだけでなく、
つくる人と見る人をもつなぐ、大事な役割を持った物語なのです。

トレーシングペーパー、マスキングテープ、はさみ、金属棒、えんぴつ、紙
取材・写真/新谷美和
株式会社CSKホールディングス 社会貢献推進室 CAMP開発担当。
まちづくりワークショップや美術館での教育普及活動を通じ、ワークショップの可能性に興味を持ち、現在CAMPに在籍しワークショップの企画・開発・運営を行う。ワークショップの楽しさを伝えるべくワークショップコラージュのレポートにも挑戦。