vol.2 ファシリテーターに向いている人とは?
ファシリテーターの素質について、質問しました。

NPO学習環境デザイン工房ではたくさんの学生たちがファシリテーターをしていますが、ファシリテーターに向き、不向きはありますか?
苅宿- ファシリテーターは、こどもとの相性がありますから、どんな人でもファシリテーターになりえます。“向いている人”だけでファシリテーターのキャラを統一してしまうのは、ちょっと心配ですね。結果が見えている感じをこどもたちに読まれそうで。
ファシリテーターはこどもたちをナビゲートするリーダー的な役割と、こども側に立って動く支援者的な役割、その中間に入って調整する役割に分けられますが、こどもにとってわかりやすいか/わかりにくいか、がポイントだと思います。
わかりやすいとはどういうことですか?
苅宿- ファシリテーターはこどもの気持ちを読むのではなく、こどもに気持ちを読んでもらう立場ですから、安心感ともいえる雰囲気が必要です。強制する存在や身勝手を安易に許す存在でもなく、こどもの活動を支えていく存在という意味で、ぱっと見たときに何を考えているかわかるということですね。
ファシリテーターを育成するにあたって、気をつけなければいけないことはありますか?
苅宿- ひとつは、上下関係を作ろうとする人。小学生相手にガキ大将になろうとし、支配欲を出す人は、こどもを道具として見るので心配です。
また、待てない人も注意が必要です。せっかちにあれこれ言われるのは、こどもにとっては“うざい”。そんなときは、ファシリテーターも参加して勝手に何か作っていればいいんです。「今、作ってるからちょっと待って」とこどもに言えるくらいのほうが自然ですよ(笑)。
ファシリテーターをする場合の原則などがあれば、教えてください。
苅宿- 3つあります。
1.答えはきみ(参加者)の中にある
2.(参加者や主催者の立場に)なってみる
3.伝えたいことより、伝わったこと
1.答えはきみ(参加者)の中にある
多くのこども向けワークショップでは、こどもたちの創造性や可能性を引き出していこうという立場をとっていると思います。その場合、活動している内容や事柄は“手段”であって、“目的”は、こどもたちが持っている創造性や可能性をこどもたち自身が意欲的に引き出していく場づくり(ワークショップ)だと思うのです。そのことを指した言葉が「答え(創造性や可能性)はきみ(参加者)の中にある」なのです。
2.(参加者や主催者の立場に)なってみる
“なってみる”ということは、人間にしかできないことで、人間になっていくということは、“なってみる”ことができるようになっていくことだと言っている学者(※文化人類学者のトマセロ)がいます。
ファシリテーターが自分の持っているコンテンツのメッセンジャーであれば、相手の立場になってみることなど不必要ですが、ファシリテーターが支援者なら、相手の立場になってみることからスタートして欲しいものです。この“なってみる”というのは、相手への想像力です。思いやり、心尽くし、おもてなしなどの言葉で表現される場合もありますが、基本は想像力です。人間への尽きない興味を持っている人は、ファシリテーターとしての成長が早い気がします。
3.伝えたいことより、伝わったこと
ワークショップ終了後、ファシリテーターの反省会をします。そこで気になるのが、(自分たちのコンテンツを)どれだけ伝えられたかという話が、できるようになったこどもを基準に語られていることです。そうではなく、「こどもたちに本当に伝わったのは、どんなことだったのだろう」という視点から出発したいものです。伝わったことを見出せないファシリテーターは、こどもたちを見ていなかったということなのです。この違いは、微妙ですが、とても重要です。


1955年東京生まれ。大東文化大学文学部教育学科准教授・NPO学習環境デザイン工房代表。18年間の小学校教諭を経て、現職。持続可能な社会の担い手を育てていくために、協同的な学習環境の研究や授業開発をさまざまな学校と取り組んでいる。また、NPOでは、ワークショップを企画運営するための人材を育成している。創発的なワークショップを美術館などで展開すると共に、コミュニケーションツールの研究開発をしており、昨年度は、グッドデザイン賞コミュニケーション部門を受賞している。
