vol.3 ワークショップ業界と学校の現状
ワークショップと学校の現状や違いについて、教えていただきました。

ワークショップ業界の現状を教えていただけますか?
苅宿- ワークショップと一口でいっても、学会や自己啓発的なものから美術館や博物館、企業主催のものまで様々です。なぜそれらを「セミナー」や「スクール」ではなくワークショップと呼ぶのかというと、自分たちは“学校とは違う”ことをやっていると言いたいのではないかと思うのです。そこに共通するのは“学校と違うスタイル”を求めているということで、そういう需要があると私は捉えています。それはつまり、学び手が中心にいるという意識、一方通行ではなく双方向ということです。
「学校とはちょっと違うことをやりたい」という人が多いということは、今の学校教育というのは偏っているのでしょうか?
苅宿- 学校教育は、正しい答えがあらかじめ用意されて、それをできるだけ効率的に教えていくことが中心です。飴とムチのような“外的動機付け”で教育しています。ただ、それがうまくいっていたのは効率性がもっとも大切なキーワードだった高度経済成長期の時代でした。
その後、高度成長期が終わって社会が変化したのに、学校は変わらなかった。社会の変化に対応しようとして総合学習を導入したのですが、現場への説明が足りなかったため結果的に「教科書もないのに教えられない」ということになり、当初の目的は未だ果たしていないのが現状です。
また、少子化によってこども一人一人に対する親の期待が高まり、多様な要望が学校に寄せられているのですが、学校側は多様な教育の形を示すのに苦労をしています。特に、こどもたちの主体性や意欲を引き出すことが十分できてはいません。それを補うのがワークショップだと思います。
「学校=悪い」ではなく、社会が変わって学校教育が担えなくなったことに対して、ワークショップが出てきたということですね。
苅宿- そうですね。そもそも、学ぶということは意欲的なもの、主体的なものです。私たちは、成長欲求があるわけですから、根源的に「知りたい」「学びたい」という気持ちを持っているはずです。この「学びたい」という気持ちに対応した学習環境が大切なのだと思います。ワークショップは協働性が高い学習環境です。人に働きかける力、共感する力、場をつくる力、社会につなげる力などが育てられる方法として、ワークショップに注目していきたいものです。とはいっても、学校教育を批判するわけではなく、学校は効率よく高品質の教育を提供する場であることは認めないといけないと思います。何でもワークショップにすればいいというのではなく、要はバランスです。


1955年東京生まれ。大東文化大学文学部教育学科准教授・NPO学習環境デザイン工房代表。18年間の小学校教諭を経て、現職。持続可能な社会の担い手を育てていくために、協同的な学習環境の研究や授業開発をさまざまな学校と取り組んでいる。また、NPOでは、ワークショップを企画運営するための人材を育成している。創発的なワークショップを美術館などで展開すると共に、コミュニケーションツールの研究開発をしており、昨年度は、グッドデザイン賞コミュニケーション部門を受賞している。
