vol.1 ワークショップの素は「?」と「!」
ワークショップの企画で大切にしているもの
こどものワークショップ専門のソーシャルネットワークという、ひとつの大きな実験がスタートしました。気持ちよいコミュニティーが作られていくことを期待しています。
さて、私自身のワークショップのスタートは'80年の区立美術館。美大の大学院生たちと夏休みのこども向けワークショップを共同企画したのが始まりです。『ガラクタ宇宙博覧会』というタイトルで、ダイナミックな動きのある企画にしたいと思ったのがきっかけでした。定員は小学生100人、5日間にわたるプログラムでした。できるだけたくさんのこどもたちに、まずは美術館に親しんでもらいたいという気持ちでいっぱいだったのです。それから27年。今でも、私がワークショップを企画するときに大切にしていることは何も変わっていません。それが「?」と「!」です。
「?」とは、「何だろう?」「不思議だ……」と思わずにいられないもの。「!」とは、「なんてステキ」、「美しい」、「楽しぃー!」と感じるもの。きっとみなさんも、日々の暮らしの中でたくさんの「?」と「!」に出会っていることでしょう。そんなとき、どうしますか? 記憶力のいい人は、頭の中のファイルに大切にしまい込むのでしょうね。スクラップ、物、パソコンのデータで保存しておく人もいるでしょう。そして時々取り出して眺めては「?」と「!」を反すうするのではないでしょうか。こどもの時の「?」と「!」が大人になっても持続していることもあります。原理や仕組みが分かっても、それでもやはり理屈抜きに「?」と「!」なんですよね。そんな「?」と「!」は、ワークショップの素になります。
「?」と「!」の化学反応

アイデアスケッチ1996
(c)hiroko ohtsuki(IDEA,INC.)
たとえば……幼なじみと繰り返したフィギアと端布を使った物語遊びの楽しさ。蔵の中の引き出しや洋服ダンスは変身ごっこの素材の宝庫でした。ヨーロッパの古い木版画に出てくる海の怪獣の姿。『僕のバラ色の人生』という映画のキュートさと切なさ。『ファンタジーの文法』という本の豊かなイマジネーション。ドラッグクイーンのゴージャスで複雑な世界。これらがなんとなくつながり、私の場合、某こどもの施設の展示とワークショップのアイデアとなりました(写真右、未実施)。その4年後にそれを発展させてビッグバンの『コドモード100』というアクティビティーツールを作りました。さらに6年後の去年、YKKインドネシアのワークショップキット『デザイナーは魔法使い』に進化させました。
いつもの自分を超えて何かになる楽しさ、想像上のナニモノかになるドキドキ、自分だけではなく他の人とそれらを楽しむ事によって生まれるとてつもないストーリー。これらのワークショップは長い間に積もった「?」と「!」が化学反応して出来たものです。同じ「?」と「!」の素があっても、人はそれぞれ違ったワークショップをイメージするのも不思議です。化学変化には、その人自身の独特なつなぎ方と+αがあるのでしょう。そこが企画のなんとも面白いところです。


板橋区立美術館教育普及担当学芸員を経て'89年IDEA,INC.設立。各種博物館の開設準備、教育プログラム開発などに携わる。'99〜'01年には大阪府立大型児童館ビッグバンの総合プロデューサーとしてスタッフ育成や、3tトラックを使った移動ミュージアム、展示・ワークショップ・イベント・キット等の企画・開発・制作を担当。近年は九州国立博物館の教育ゾーン「あじっぱ」のプロデュース、ミュージアム及びキッズスペースの空間デザインの他、南アジア地域における企業のCSRとしてのワークショップ開発も手がけている。
'06年の1月からワークショップの知財についての研究会を続けてきましたが、その総まとめともいえる本『こどものためのワークショップ〜その知財はだれのもの?〜』(ワークショップ知財研究会編/アム・プロモーション)が3月末に出版されます。
