vol.4 僕のワークショップ未来図
上田さんは、ワークショップをイタリアンのコース料理「アンティパスト」「プリモピアット」「セコンドピアット」「ドルチェ」「エスプレッソ」の流れになぞらえてデザインする。
アンティパストは前菜、プリモピアットは第一の皿という意味で、パスタやリゾットでおなかをすかせた客を満足させるもの。セコンドピアットは第二の皿で、主に肉や魚の料理が出され、最後に甘いデザートのドルチェへと続く。そして、少し苦めのエスプレッソとともに食事はしめくくられる。
実践と研究の両方を楽しむ

「まずは、前菜−アンティパストで面白い導入をして参加者に興味を持ってもらう(attention)と同時に、自分たちの興味範囲との関連(relevance)を予感させます。そしてメインの活動であるプリモで“つくる”作業(engagement)を、セコンドで“語る・さらす”体験(interaction and communication)をしてもらいます。それらの活動をドルチェで“ふりかえり”(reflection)、そこに自分なりの意味づけをすることによって体験が経験に熟成し、最後のエスプレッソで強烈な気づき(awareness)が訪れます。その気づきが学びという経験になっていくというのが、僕が考える「イタリアンミールモデル」です。このように具体的な活動を構造化して仕組みを知ることで、教育学や心理学の先端的な研究に結びつく発見を得ることがあります。つまり、活動を抽象化してモデル化することで、実践と研究を両方楽しめるんですね。その感性は、これからのワークショップデザイナーにとって必要な資質でもあると思います」
これまでも上田さんは、教育学やこども学の分野で考えられている理論を、ワークショップを通じて企業の製品開発や人材開発に応用。数々の成果をあげてきた。
「たとえば、飲料水のボトルの形や化粧品の新製品などを企業の開発担当の方々と考える場合、答えはすでに開発者たちの頭の中にあるんです。その無意識のアイデアに本人が気づき、新しいものを生み出していくプロセスに、ワークショップという手法がとても役立ちます。人材開発も同じで、会議室で講義を受けるより、単純な作業でもまずはやってみて、その体験を再構成しながら吟味して他者の経験と結び合わせ、そこに自らの意味を組み立てるというプロセスを通じて能力は磨かれていくように思います」
目指すはアイデアライブ
どんな場合でも、大切なのはプレイフルな体験。ワークショップをデザインする側と参加する側の情熱がエネルギッシュに呼応する一体感あるワークショップの実現も夢ではないという。
「今はまだ、参加者にこっちを向いてもらうためにワークショップデザイナーが一生懸命にもてなすケースが多いと思うんです。でも将来的には、参加者がアイデアを持ち寄って自発的に楽しめるコンヴィヴィアル(自立共生的)な場となり、そこから新しい考えが生まれてくるようなライブ空間になったらいいですね。ワークショップは人と人が出会い、新たな関係性が紡がれて行く場ですから。そこへのブレイクスルーは必ずあると実感しています」
取材・文/浜野雪江

上田信行さんのワークショップ未来図
「参加者がアイデアを持ち寄って自発的に楽しめるコンヴィヴィアル(自立共生的)な場となり、そこから新しい考えが生まれてくるようなライブ空間に」


