vol.1 僕のワークショップの原点〜僕がワークショップを始めた理由
ポンッ!とはじけるシャンパン。グラスにそそぐとシュワ〜ッと小さな泡がたちのぼる。ひとくち飲むとからだがポッとあたたかくなり、気持ちがワクワクしてくる。そんなキラキラしてポジティブで、楽しい学びの場をパワフルに発信している上田信行さん。'71年、日本で放送が始まった『セサミストリート』に衝撃を受け、アメリカの大学院へ留学した上田さんは、「セサミ研究」を通じてその制作現場を体感した。
作品づくりを通して時間と空間を共有

「セサミストリートの開発には3つの専門家集団が関わっていました。内容の専門家、制作の専門家、リサーチの専門家たちです。幼児教育や発達心理学の専門家が考えた内容を、こども番組のプロデューサーがテレビ番組として制作し、それをリサーチャーが実際にこどもに見せて反応を観察し、修正を重ねるという画期的な方法をとっていたんです。特に、フォーマティブ・リサーチと呼ばれる、パイロットセグメント(番組のテストバージョン)をこどもに見せてその反応を見て改善していく手法は革新的でした。
制作現場の大人たちは、渾身の情熱でアイデアを出し合いながら、誰も見たことのない番組をワクワクドキドキしながら作っていたんです。番組づくりを通して、彼らはものすごくたくさんのことを学んでいて、活気あふれるその様子が本当に楽しそうだったんです。それを見て、“学び”とは、何かを教えてもらうことではなくて、人と人との相互作用の中で新しいものを発見し、仲間と力を合わせて向上できるすごく楽しいことなんだなと実感しました。それが僕の表現活動の原風景になっているんです」
そんな学びのプロセスを、たくさんの人とシェアしたい!その一心で、帰国後、『おかあさんといっしょ』の開発研究に携わる一方で、小さなアトリエにシンセサイザーなどの最新機器を揃え、新しい音楽や映像をつくるプロジェクトを始めた。
あえて制限を設けない
「今までの“大人がつくった番組をこどもが見て学ぶ視聴覚教育”の時代から、これからは、使いやすくてパワフルな道具があればこどもが自分たちで番組をつくってしまうメディア表現の時代が絶対くると思っていました。同時に、自分一人じゃできなくても、あの人とだったら何かができるという協同性に強く可能性を感じていたんです。つまり、新しい学びには道具と他者の存在が不可欠だと。音楽づくりはその実践でもありました。
そして、その活動に名前をつけようと考えた時、思い出したのがセサミストリートの制作プロダクションの社名、Children's Television Workshop
(現在、Sesame Workshop)だったんです。それで、さまざまな分野の人たちが集まって、共に大きなヴィジョンに向かってまだ誰も見たことのないものを実験的、冒険的に創っていく活動を、僕は“ワークショップ”と呼ぶことにしました」
取材・文/浜野雪江




