vol.2 プレイフル・ラーニングの実践
‘90年、学びとメディアとデザインに関わるより本格的な実験の場を求めた上田さんは、奈良県・吉野にとても小さなプライベートミュージアム「ネオ・ミュージアム」を創設。1階をものづくりやコミュニケーションのための「経験のフロアー」、2階のギャラリー部分を「リフレクション(内省)のフロアー」と位置づけ、多層空間でのものづくりを試みている。
つくって、かたって、ふりかえる

「ワークショップは、“つくって・かたって・ふりかえる”という3段階で組み立てられます。ネオ・ミュージアムは、そのワークショップの構造と重なり合うように空間がデザインされているんです。1階は頭の中にあるものを外に出して可視化し、仲間とシェアする“つくって・かたる”空間、2階は1階での自分の経験を“ふりかえる”空間としました。中央部分は吹き抜けになっているので2階から1階が見下ろせるし、その空間を実際に移動することで、ものづくりの活動と、内省するという認知的な活動を行き来できます。それによって活動が活性化されるとともに、感度を上げて自分の表現活動を内省し、より洗練されたものづくりへとつなぐことができるんです」
そうした活動と内省によって活性化される感覚=“学びの感性”を磨く目的で、‘05年には『ラーニング・アート2005』を開催。“学びの感性を開花する”をテーマに、参加者が自由な発想でものづくりを体験できるよう、さまざまな空間を提供した。
「学びの感性はワークショップによって磨くことができるし、その芽が花開く場合もあります。感性というと、感じる力はもちろんですが、僕が重視するのはアウトプットするセンスです。ビビッドな表現のアウトプットができると、感じる力はより大きくなるんです。それと、もうひとつ目指していたのは、僕が思い描くワークショップの風景を、自分の学びの作品として提案できないかということでした。その意味で、『ラーニング・アート』は、新しいアート領域の開拓でもありました」
感性の開花に有効なポイントのひとつは、こどもの感性に学ぶこと。上田さんのワークショップには、こどもが生き生きと活躍する場面も多い。
こどもは大人から学び、大人はこどもから学ぶ
「こどもには、コンピュータのOSみたいに、独特の“こどもOS”がありますよね(笑)。学びの実践的な共同体の中でものをつくる時、こどもは受け身の存在ではなく中核になるデザイナーの一人であり、大人がそのこどもたちとどう協同するかということが大切です。こどもは大人のサポートで独自のOSを発揮し、大人はこどもの感性のエンジンを借りて見たことのないものに近づこうとする。互いに学び合う空気の中には、大人がこどもに教えるという感覚はほとんどないと思います。そうやって、何か面白いものができていくのがワークショップの醍醐味ではないでしょうか」
取材・文/浜野雪江




