vol.3 僕のワークショップの特性

一人ひとりがよりプレイフルに楽しむために、道具と並んで大切なもうひとつの要素。それは、「自分をコントロールして、自己の可能性を信じる前向きな心の姿勢(マインドセット)を持つこと」と上田さんは話す。

他者との出会いは、人を鍛える

上田信行さん

「こどもは知能や賢さに対して、努力すればどんどんよくなると思う人と、それは固定したもので努力してもあまり変わらないと思う人の大きく二つのタイプにわかれます。固定的な知能観を持つ人は、成績や業績、他人からの評価が気になり、いったん自信を失うと、自分はダメだという無力感に陥りやすいんです。一方、成長的知能観を持つ人は、人の評価より学ぶこと自体が楽しくて、いつも自分が有能になっていくことを目指しているので、どんな状況でも常に前向きに考えることができます。どちらの知能観を持っているにしても、自分のマインドセットを自覚して、状況に応じてふるまいをコントロールするバランス感覚が大切です」

 そこで上田さんは、参加者が自分の可能性をきちんと実感し、ポジティブにその場にかかわれるようなワークショップづくりを心がけている。

「たとえば、固定的なマインドセットを持った人が、成長的なマインドセットを持っている人に出会ったら、『え、そんな考え方の人っているの!?』とカルチャーショックを受けますよね。大事なのは、自分と異なるマインドセットを持つ人と対話することでいろんな考え方があると知り、自分の視座や価値観を意識することです。ワークショップはそんなふうに、場にパワーを持たせいろんなことを発見してもらう場所だと思います」

僕のワークショップのイメージは料理とイコール

 一期一会のワークショップで、人の知能観そのものを変えることは難しいという。そのぶん上田さんは、身近な素材に工夫を凝らし、道具を吟味し、ワークショップというもてなしをあざやかに料理する。

「ワークショップづくりは、料理のイメージにぴったりと重なります。僕のやり方は、ありあわせの素材でその場に合ったものをつくるブリコラージュ的な手法です。一番大切なのは参加者で、テーマや材料や道具との相性は実際やってみるまでわかりません。ワークショップの成功は、マニュアル化することで保証できるわけではないんです。だからこそワークショップデザイナーには、日頃から知的好奇心を持ち、周りにあるものを違った視点で見て工夫をしながら組み立てるセンスや、思いついたら試してみるという実験的マインドが大事になってくるのだと思います」

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取材・文/浜野雪江

プロフィール

上田信行(うえだ のぶゆき)

同志社女子大学 現代社会学部
現代こども学科 教授


「学習環境デザインとメディア教育」を研究。奈良県吉野川のほとりに実験的なアトリエ『ネオ・ミュージアム』をつくり、数多くのワークショップを実施。プレイフル・ラーニングをキーワードに、新しい学びの場を構想し、実践的に研究を行っている。

上田先生のキーワード

キューブ

ワークショップの協同活動を活性化するため、上田さんがよく用いる道具(メディア)のひとつ、6面体のコミュニケーション・ツール。テーマを設定し、それについての各自の考えを立方体の各面に書いていく。6つの面を立体的に使うことで3次元の情報空間の中で考えられ、イメージを直感的かつ多面的に表現でき、他者とのコミュニケーションにも役立つ。他に、モールや風船を用いることもある。Vol.2で紹介した「つくって・かたって・ふりかえる」を実践するツールでもある。


パスタメモ

ワークショップや講演会の当日、上田さんは直前まで内容を考え、思いついたアイデアを紙片にメモし、乾燥パスタに混ぜて持って行く。話す際に机にザッ!とパスタを広げれば、『いったいなにが始まるの?』と参加者は興味津々に。パソコンやメモ書きよりもインパクトがあって、見た目もポップで楽しい。

ワークショップ未来図Backnumber

1.日比野克彦さん>>

ちゃぷら