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photo by NPO法人クロスフィールズ


留学ならぬ「留職」がグローバル人材育成のツールとして注目を浴びている。「留職」とは何か? その中身とメリットを、プログラムを主宰する「NPO法人クロスフィールズ」代表理事の小沼大地さんに聞いた。


小沼大地(こぬま・だいち)130423angel_02.jpg


一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。青年海外協力隊(中東シリア・環境教育)に参加後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年3月、NPO法人クロスフィールズ設立のため独立。世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Shapers Community(GSC)に2011年より選出。


「留職」とは、企業で働く人が数ヶ月から1年間ほど途上国のNPOなどに赴任して、現地の人々とともに社会課題の解決に取り組むプログラムだ。


小沼さんは大学卒業後、青年海外協力隊、コンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」での勤務を経て2011年5月に、共同創業者の松島由佳さんとともにNPO法人クロスフィールズを設立した。


協力隊にいたこともあって、小沼さんたちは当初、青年国内協力隊のような国内の社会課題に取り組むプログラムができないか、などと漠然と考えていた。あれこれリサーチするうちに、米国で似たようなプログラムをやっている団体があることに気づき、視察に。そこは、途上国に人々を派遣していた。


「すごく盛り上がっていたんですね。これは日本でもニーズがあるな、と。僕らの構想も、日本では、けちょんけちょんに言われることが多かったんですが(笑)、"that's good idea!"って言ってもらえて」


行ける、という感触をつかんでいざスタート。第1号の企業が決まるまでには時間もかかったが、最初に導入したのは「パナソニック株式会社」だ。2012年の2月、技術系の男性社員の1人はベトナムに行き、1か月、太陽光を利用した調理器具の開発・提供によって無電化地域の生活改善に取り組むNGOに加わった。


パナソニックがまだ創業間もないころの風景を見た気がします。ベンチャーとして成長していく過程もこうだったのかなと思いました」


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派遣中、日本の支援チームとやりとりするなかで、最初はパナソニック側の人間として発言していたのが、最後のほうは、気づくと現地NGO側の人間として発言していたという。つまり、外部の人としてパートナーになるのではなくて、仲間として一緒にものを考えるようになった。


今年の上半期にはテルモや日立など5社が派遣。経験者は「今までビジネスライクに人と接していたけれども、途上国の現場に放り込まれて、自分をありのままにさらけ出すしかなかった。それで信頼を得られた。素の自分を出せるようになった」「失敗するのが怖くなくなった」「日本のやり方や既成概念にとらわれていては何もできないので、マインドセットが新たになった」と、よりチャレンジングになり、イノベーティブになった......などと感想を寄せている。


では、企業のメリットは? 小沼さんによれば「これから市場となるところに入り込むので、内側からものを見られるようになるのは大きい」。さらに現地にとっては、スキルが身に着く、日本人ビジネスパーソンというまったく違う人が入ってくることで新しい視点が得られる、企業とのつながりができる......といった利点がある。


小沼さんは「日本には課題がいっぱいあるけれども、それを逆手にとって課題解決の先進国となることを目指したい。そのためには、留職が役立てると思う」と語る。


新興国「留職」プログラムのNPO法人クロスフィールズ


(取材・文/エンゼルあつみ)