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比べることではなく、前に進むこと/「kay me」毛見純子さん

キャリアインタビュー/働くあなたに伝えたいこと

比べることではなく、前に進むこと/「kay me」毛見純子さん

20140724_junko_kemi_1.jpg華やかに見えて、それでいて信頼感を相手に与える服。そしてそれはできれば私を"締めつけない"ものであってほしい――。そんな願いを叶えてくれる仕事服のひとつに「kay me(ケイミー)」のジャージーワンピースがある。ブランドを立ち上げたのは外資コンサル出身の毛見純子さん。なぜアパレルの世界に飛び込んだのか。どうしてジャージーワンピースだったのか。そこには「働く女性を"窮屈さ"から解放したい」という強い思いがあった。

長時間勤務で身体が悲鳴を上げたからこそ

毛見さんがジャージーワンピースの"可能性"に着目したのは外資系コンサルタント時代だ。教育関連会社、会計事務所を経て入った米国系トップ経営戦略コンサルティングファームで、法人営業変革支援や新規事業開発のコンサルティングをおこなった。尊敬する上司と切れ者揃いの同僚。大きな仕事も任され、やりがいのある毎日だったが、仕事は毎日明け方まで続く。家で90分ほど寝たら、また出社。

「友人が話す"いまどき"の話題についていけず、『大丈夫?』と心配されていました(笑)」

当時は1日中スーツを着ていた。長い日は20時間近くになる。身体の動きが制約され、夕方になると疲れもあってガチコチに固まり、悲鳴を上げた。「もっと身体がラクでいられる仕事服はないものか」。いろいろ探して行き着いたのがジャージーワンピースだった

「さっと着られて、動きやすい。ジャケットを羽織ればきちんと見え、フェミニンでありながら、失礼に当たらないのがいいと思いました」

だが、当時のジャージーワンピースは海外ブランドのものがほとんどで、値段が張った。デザインがセクシーすぎてビジネスシーンに合わないものも多い。伸びもいまひとつ。長時間着ていると横隔膜のあたりが痛くなることがあった。どれもこれも何かが足りない――。毛見さんが納得するジャージーワンピースはどこにも存在しなかった。

時間はそんなにあるわけじゃない

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毛見さんは31歳で独立、自身のコンサルタント会社を設立する。仕事は順調だったが3年後、東日本大震災が起きる。保険、エネルギー、金融関連企業......。クライアントの新規事業のほとんどがペンディングの状態になった。そんなときに、そんなときだったから毛見さんは動いたのだという。

「自ら新規事業を起こすことで経済を活性化したいと思いました。震災で考え方や生き方が変わったというのもあります。時間はそんなにあるわけじゃない。私もそう認識したひとりでした

何をするかはすぐに決まった。働く女性自身を大切にする仕事服。そう、これまでより「ずっとラク」なジャージーワンピースを――。

比べることでなく、前に進む

毛見さんはそれまでに培った営業力、スピード感、仮説検証力を総動員して事業をスタートさせた。それまで縁がなかった製造業だが、持ち前のバイタリティで道を切り拓いていった。

「服はどうやってつくるのか。そこからのスタートでした。友人に紹介してもらったテーラーさんに1から教えてもらい、パタンナーが重要なこともわかったのですが、そういう人がどこにいるかもわからない。だから、ミクシィで自分の考えに賛同してくれる人がいないか呼びかけて......。そしたら運よく優秀な方と出会えたんです」

デザインは自分で考案する。お辞儀をしたときの胸元の開き具合、上着を脱いだときに、男性にドキッとされない袖の長さ。ローソファに座ったときにも太ももがむき出しにならないスカート丈。そして身体にほどよくフィットし、かつ美しく見せてくれるタックやギャザーの入れ方。これまでに感じてきた「仕事服」への不満をすべて解消するようなジャージーワンピースを追求した

特にこだわったのは素材選び。毛見さん自身が買い付けに行き、自分の手で触り、伸ばし、くしゃくしゃにしてみた。"最高の仕事服"に耐えうるものはどれか。理想の素材に出合うまで何千、何万もの布を手にした。

そして、事業立案から3か月後。できたばかりのサンプルの試着会を開いた。集まったのはフェイスブックの告知を見た、働く女性たち。果たして商品として受け入れられるクオリティに達しているのだろうか――。

「きちんとして見えるのに身体がとてもラクだ」。参加者の反応は上々だった。感想を聞くだけのつもりが、用意した40着のほとんどが売れ、手応えを感じた。オンラインショップが開設されたのはその翌月。続いて銀座にサロンができた。

「飽和状態」と言われて久しいアパレル業界への新規参入だが、リスクは考えなかったのだろうか。

「これから伸びる業界は"おいしい畑"のようなもの。資本があって経験があって知恵がある大きな会社がどんどん参入していきます。でも『ここは"おいしい畑"じゃないよ』とフラグが立っているところには、人は集まらない。逆に言えば、違う業界での経験を生かして何かイノベーションを起こせる可能性があるし、おもしろいと思ったのです

目の前の困難は乗り越えられるサイズのもの

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「kay me」のジャージーワンピースの評判は口コミやSNSを通して広がっていった。今年で事業を起こして4年目。現在は銀座4丁目に本店を構え、百貨店にも出店している。リピート率は80%を超え、昨年度の売上は前年比365%増に上った。今後は競合する会社が出てこる可能性も大きいが......。

「自分たちのスピードを上げ、成長していくしかない。どこの誰が何をやろうとしているかは把握できません。だから(周りと)比べることではなくやれることを全部やり、前に進むしかないと思っています」

"快進撃"を続ける毛見さんだが、「壁」を感じることはないのだろうか。

「実は母方の実家がお寺で、祖母に『目の前に現れる困難は乗り越えられるサイズのものしかこない』と教え込まれてきました。そういうときには『壁だ』と思うのではなく、どうやって乗り越えるかを考えるようにしています。前の職場でも『悩むのではなく方法を考えなさい』と言われましたね」

次のビジョンももう見えている。

「ちょうどロンドンとパリで販売できないか模索しているところです。日本の繊維の良さを知ってもらうためにもぜひ『made in Japan』のジャージーワンピースを販売したいと思っています。『kay me』の服で、日本はもちろん、世界の女性の働くシーンを服の面から変えていきたいですね」

20140724_junko_kemi_profile.jpg毛見純子(けみ じゅんこ)

1976年大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部史学科卒業。ベネッセコーポレーション、プライスウォーターハウスクーパース、ボストンコンサルティンググループを経て、2008年にコンサルタント会社「maojian works」を設立、代表取締役に就任。法人営業及び新規事業開発のコンサルティングに携わる。2011年3月同社内でアパレルブランド「kay me」を立ち上げる。

(取材・文/金子えみ)

金子えみ

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