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「いくら痩せても不十分だった」モード界の現実と戦う元トップモデル

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「いくら痩せても不十分だった」モード界の現実と戦う元トップモデル

昨年12月17日フランスで成立した新法律は、フランスで働くモデルに「ボディマス指数を考慮にいれた健康診断書」を義務付けるという画期的なもの。違反雇用者は6か月の拘置と7万5千ユーロの罰金を科せられ得るという厳しい内容で、世界中で話題になりました。

法案成立に一役買ったモデル

モデル時代のヴィクトワール

じつは、この法案の成立に一役買った元モデルがいます。彼女の名は、ヴィクトワール・マソン・ドーセールさん。5年ほど前、ニューヨーク・ファッションウィークに初登場して大きな人気をさらい、瞬く間にトップモデルとなった女性です。

幸せではなかったモデル時代

けれども。モデル時代、彼女は決して幸せではなかったといいます。数々のファッションショーに出演しながら、拒食症、栄養失調による心身の障害で悩みます。華々しいデビューから7か月後のことでした。彼女は、ついに自殺未遂を起こしてしまいます。

幸い、家族の愛情と適切な対処、本人の持ち前の知性と精神力により、社会復帰を果たし、今は劇女優を目指しています。

前述の法案を練ったのは精神科医でもある議員のオリヴィエ・ヴェラン氏。法案提出の際、上院で読み上げたのがヴィクトワールが自分の経験を綴った手紙だったのです。

「いくら痩せても不十分」だった

『 Jamais assez maigre : Journal d'un top model 』. de Victoire Maçon Dauxerre, Ed. les Arènes, 272 pages,18 €. ※日本では未発売

もうそのことについては考えたくなかった。

『Jamais assez maigre』より翻訳引用

というヴィクトワールですが、この法案の審議をきっかけに、アンチ拒食症の戦いを決意し、1月6日には、自ら「ハンガー生活」と呼ぶモデル時代の経験を赤裸々に記した本を出版しました。

タイトルは『Jamais assez maigre: Journal d'un top model』(いくら痩せても不十分:トップモデルの日誌)です。

この本には、スカウトから自殺未遂によって入院に至るまでの8カ月のヴィクトワールの告白が詰まっています。拒食症である自覚のないまま深みにはまっていく様子と、モード界の実態。だんだん読むのが辛くなってくるのに、最後まで目が離せない、そういう内容の本でした。

モデルたちが過剰な減量に走る理由

キャプション:左が49.5kgの時点のヴィクトワール、右が現在64㎏のヴィクトワール

本には、モデル時代の写真も時間軸に沿って掲載されています。178センチメートルのヴィクトワールが、17歳でスカウトを受けた時は56キログラム、服のサイズは36でした。36といえば、日本でいう7、9号くらいでしょうか。大抵のブティックで売られている最小サイズがこの36です。

身長を考えるとかなり痩せていたと言えます。実際、本に載っている当時の写真を見ても、もう少しふっくらした方が良いのでは? と思えます。ところが、なんと、ファッションショーでモデルが着る服は、すべて、サイズが32か34(5号以下)なのです。32というサイズが存在するなんて、この本を読むまで知りませんでした。

つまり、ヴィクトワールは、モデルとしては「太すぎる」のです。

180センチメートル近い身長のモデルが、32や34のサイズを着こなさなければならないとなると、当然危険なほどの減量が必要となります。持ち前の意志の強さが、この場合は"災い"し、ヴィクトワールは47kgまで減量しましたが、まずは身体を、やがて心を壊していきます。

法案にモード界は反発

当然ながら、この法律については、法案の段階からモード界の反発が強く、可決されたのちも、フランス内外を問わず、批判意見が漏れ聞かれます。

モード業界関係者の多くは、フランスが厳しすぎる規則を押し付けていると感じてる。なにしろ、ずっと前から「痩せていること」が基本条件である業界なのだから。

モード業界紙WWDは、この法律について懐疑的な意見を持つ様々な業種(カメラマン、デザイナー、アート・ディレクター、ジャーナリストなど)の声を公表している。

Libération」より翻訳引用

例えば、『ELLE』米国版編集長ロビー・マイヤース氏は、皮肉な口調でこう語っています。

私だって、痩せさらばえたモデルの使用を擁護するわけじゃありませんけれどね。(中略)だけど、美の標準や、趣味の悪さを法律で決めることはできないでしょう。(中略)モデルに健康診断書を取得させるより、身体によい食品が安く手に入るように法律で規制する方が先なんじゃないですか。

Libération」より翻訳引用

また、ニューヨークのPR会社「Laird + Partners」代表テリー・レアード氏はこう言います。

これはやりすぎですよ。もちろん、身体を壊したり、病気の人を使うわけにはいきませんよ。そういうことを推奨することはできませんけどね。でも、若い娘の体重をチェックするのは、政府の仕事じゃないでしょう。

Libération」より翻訳引用

けれども、この法案が目指すところは、モデルだけの保護ではなく、フランス国内に3、4万人と見積もられる摂食障害の若者(大半がティーンエイジャー)を守ることにあります。

この世代にとって、流行は、宗教ほどの大きな影響を持つもので、それだからこそ、彼らが目指す「美の形=(イコール)モデル」のイメージを変えることが必要となるのです。

本当の戦いはこれから

イタリア人写真家Olivero Toscaniが下に言うように、法律を作っただけでは足りないかもしれません。というのも、誰かが何らかの抜け道を見つけることも想像に難くないからです。

(こんな健康診断書はあてにならない)いつだって、「採用したときには5キロ多かったのよ」と言い訳できるじゃないか。

Libération」より翻訳引用

つまり、法律成立はゴールではないのです。

新法律を心から支持するヴィクトワールは、その遵守を社会に広く呼びかけています。そのために「忘れてしまいたかった」経験をも掘り起こし、本にしました。

人々の意識を変えていくことでしか、社会の傾向を変えることはできないのですから、法律成立が人々の注意を引いたことは、決して無駄ではないでしょう。また、ヴィクトワールの本は、ティーンエイジャーにこそ読んでもらいたい内容です。

最新の写真を見ると、現在のヴィクトワールは、すらりとした肢体の64キログラム。服のサイズは38。世間の「痩せぎす(※)」信奉という大きな敵に立ち向かう彼女の姿は、まるで現代のジャンヌ・ダルクのように見えます。

※痩せて骨ばっていること

彼女の戦いは始まったばかりです。

les arènes, Libération , FASHIONUNITEDLe Parisien

image via Shutterstock

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