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余震に怯えながら夜中にセロリをむしり齧る【熊本大地震ルポ #6】

余震に怯えながら夜中にセロリをむしり齧る【熊本大地震ルポ #6】

余震は、最初の激震より小さいものである。そんな思い込みを覆した二度目の「本震」でした。

4月15日(金)

たびたび襲ってくる大きな余震に怯えて、結局一睡もできないまま朝が明けた。ルポ原稿のためにiPhoneの写真を見返しているのだが、この日夕食を食べそびれた私は、夜中にセロリをむしって齧りついていたようだ。その一枚が残っている。

20160512_kumamoto_02.jpg

15日、晴天。明るみに晒された部屋のなかを見渡し、唖然。本棚が倒れた反動で、壁には穴がぼっこり。天井も照明がバウンドして壁紙が剥がれている。とにかく部屋中が傷だらけになっていた。

ちなみにこのルポで紹介している写真、実は「私や猫が故意に穴をあけたり傷つけたりしたんじゃないですよー、地震のせいですよー」と大家さんや管理会社へ渡す証拠として撮影したものだ。「避難する」よりも、この場に及んで「マンション管理会社に怒られたときのためのリスクヘッジ」を優先しているので、明らかに行動がおかしい。

体もよくみたら、傷と痣だらけになっていた。ぶつかったり転んだりしたのだろうけど、記憶がないうえに痛みもない。どばっと噴出したアドレナリンの仕業である。

アドレナリンの勢いのまま片づけ開始

「さあー、今日はこの部屋を片づけるよ!」。

一睡もしていないのにJは相変わらずテンションMAXだった。まずは本棚を立て直さないといけないのだが、そのためには寝室をクリアにしないと作業が困難......ということで、散らばった衣類などを、畳まずクローゼットに押し込んで、とりあえずのスペースを作った。

実は私は二週間後に、引っ越しを予定していた。それにも関わらず準備をしていなかったため、地震片づけを機に、断捨離&梱包をすることにした。とはいえ、あと二週間はこのマンションで生活と仕事をしないといけないので、ひとまず本の梱包だけ着手。段ボールはJが午前中に用意してくれた。

本棚を立て直し、重い本が詰まった段ボール箱をその前に低く積んだ。「これで余震がきても、本棚は倒れないはず!」とJはご満悦。割れ物はひとまとめに段ボールに入れ、調味料やワインでベタベタになった床を拭いた。「引っ越し準備は半分くらい終わったようなもの。いらないものはポイポイポーイ、だ」と私も妙にテンションが高くなっていた。

20160512_kumamoto_03.jpg

Facebookを見ると、みんな一斉に片づけに着手している様子が見てとれた。店を営んでいる友人たちは、すぐにでも営業が再開できるように頑張っていた。みんな「数日後には生活を立て直せる」と思っていたのだ。

テレビをつける。震源地・益城の惨状、熊本城の変わり果てた姿、阿蘇神社の楼門崩壊に言葉を失った。お亡くなりになった方、そのご家族の様子が流れるテレビを直視することができない。益城は知り合い、またそのご両親などが住むエリアだ。

彼らの顔が浮かんだ。「どうか無事で」と祈りつつも、あまりもの惨状に連絡することができなかった。情報入手のためにテレビの音だけを聞きながら、片づけ作業に集中した。

昼ごろ、実家の母から電話が入った。「今日、こっちに来なさい。片づけは落ち着いたらお母さんも一緒にするけん、まずは必要なものだけ持って帰ってきなっせ。あなたがひとりでそこにおると思うと、気が気じゃなかったいね」。

実は私は母に、J(彼)のことを話していなかった。二週間後に一緒に住むことも、猫を飼っていることも話していなかった。「いつか言おう」と延び延びにしてしまって、こんなことになってしまったのだ。なんたる親不孝もの。意を決して、カミングアウトすることにした。いつ言うの? 今でしょ!(古くてすみません)。

「あのね、実はひとりじゃないとたいね......。彼氏がおって、今一緒に片づけしてもらってるとよね」

「え?」

「でね、二週間後に一緒に住む家に引っ越しする予定なんだよね」

「は?」

「でねでね、猫も数ヶ月前から飼ってるとたいね」

「......ああ、よかった。ひとりじゃないとね。安心したあ。なら、片づけが落ち着いたら、うちにみんなで遊びにきなっせー」

母はあっさりしていた。今日は片づけに専念して、明日実家に行くと約束した。

撮影/福島はるみ(熊本城のお堀。いまは立ち入り禁止となっている)

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福島はるみ

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