1. Home
  2. キャリア
  3. 本震。あまりにも予想外で、残酷なほどの揺れ【熊本大地震ルポ #7】

本震。あまりにも予想外で、残酷なほどの揺れ【熊本大地震ルポ #7】

1,071

本震。あまりにも予想外で、残酷なほどの揺れ【熊本大地震ルポ #7】

4月16日(土)

日が変わって16日になったころには就寝体勢に入った。

念のために、すぐ避難できるように、リュックに最低限のアイテムを詰めてそばに置いた。私は横たわりながら、SNSでみんなの無事を確認したり、方々からいただいた安否確認の返信をした。iPhoneの充電、よーし。充電器もフル充電、完了。これで安心安心。

深夜1時ごろまでは記憶があるが、そのあとウトウトしたのだと思う。

突然、緊急地震速報と同時に、つきあげるような振動と大きな揺れが襲った。余震にしては大きい。いや......昨日の地震よりも大きい! 悲鳴をあげた。Jが覆い被さって「大丈夫、大丈夫」と声をかけてくれるが、明らかにいつものJではない声色。

マンションが、部屋が、怪獣に揺さぶられているかのように右に左に縦にと激しく揺れた。停電。破壊の音、激しくぶつかりあう音、鳴り響く非常ベルと緊急地震警報。このとき、阪神淡路大震災でぽっきりと倒壊したビルが脳裏に浮かび、「もうダメだ」と思った。間違いなく、このマンションも倒れる。そうに違いない。

1回目よりもはるかに大きく長い揺れだった。いつおさまるのだろうというくらいに。しかし、寝入りばなの深い睡眠に突入していた私は、このとき「逃げる」という気持ちよりも、「眠い」と「諦め」の感が勝っていた。

「2度もこんな地震が起ってしまった。もうこのマンションはダメだ。熊本は終わりだ。お母さんも今度こそ下敷きになっているに違いない。だったらもう、このままここで眠りながら死にたい」と本気で思ったのだ。あまりのことに思考が停止したのだと思う。

そしてなんと本当にその後、寝てしまった。気絶したのか、まったく記憶がない。ちなみにJは、いつでも避難できるように起きていたという(私がこんこんと寝てしまったので)。

「もう地震はない」そう思い込んでいた

深夜2時半ごろ。Jが携帯で誰かと喋っているその声で目が覚めた。

「はい、わかりました。すぐに避難します」。こんな夜中に誰と喋ってるんだろうと寝ぼけた頭で思った。

「フクちゃん、起きて! お母さんから電話がかかってきて、いますぐ避難しなさいって。このマンション、まじで危ないかも。新町のビルが崩壊しているらしいから、すぐ出よう!」

何度もかかってくる電話にまったく気づかず爆睡していた私のかわりに、Jが母の電話をとったのだ。

これまで元気百万倍だったJの様子が緊迫していたので、さすがに緊張が走った。それでも眠いものは眠い。

「もういいよ。ここで寝よう」

「ダメ! お願いだけん言うこと聞いて。ほら、用意するよ!」

せっかく床が見えるまで片づけたのに、寝室も仕事部屋もいろんなものが飛び出してまたもやフカフカジャリジャリ床になっていた。段ボール群でがっちりホールドしたと思った本棚も、1回目同じく見事に倒れている。というよりも、1回目よりも家電・家具が激しく移動している。チェストは寝室の扉を突き破っていた。

20160512_kumamoto_002.jpg片づけも虚しく、また転倒した本棚

床から手探りで着替えを引っ張り出し、ノートパソコン2台と猫のカリカリごはんをリュックに詰め込み、ベッド下に潜り込んだコムを引きずりだしてケージに入れた。

足もとがおぼろげ。それもそのはず、眼鏡をかけていなかった。私は裸眼の視力が0.05というド近眼である。コンタクト&眼鏡なしでは、足もとがほとんど見えない。「眼鏡、眼鏡」とベッド周辺を這いつくばって探した。1回目の地震前となにも変わっていない。学習能力がなさすぎる。

言いわけをすると、1回目以上の地震が起るとは思いも寄らなかったのだ。

荷物をまとめている最中も、緊急地震速報が鳴っては大きく揺れる。片づけなんか後回しにして、なんで今日実家に帰らなかったんだろう。母に会いにいかなかったんだろう。明日があると思い込んでたんだろう。

恐怖と後悔で、地震以来、初めて泣いた。

撮影/福島はるみ(いまは崩壊している、熊本城の石垣)

2016年4月14日、女ひとりで被災した【熊本大地震ルポ #1】
母への電話、手の震えが止まらない【熊本大震災ルポ #2】
パンツ姿で外に出ることもできず【熊本大地震ルポ #3】
携帯充電、残りわずか。街にようやく明かりが【熊本大地震ルポ #4】
重量級の電子レンジが頭上を飛んだ?【熊本大地震ルポ #5】
余震に怯えながら夜中にセロリをむしり齧る【熊本大地震ルポ #6】
本震。あまりにも予想外で、残酷なほどの揺れ【熊本大地震ルポ #7】
2度目の激震で完全に思考が停止。避難所へ【熊本大地震ルポ #8】
「平穏な日々」は保証されていない【熊本大地震ルポ #9】
前震? 本震? 初めて聞いたよ!【熊本大地震ルポ #10】
傷ついた熊本に容赦なく暴風雨が襲う【熊本大地震ルポ #11】
3度目の激震に怯えながら、恐怖の脱出劇【熊本大地震ルポ #12】
視覚的からのショックがやわらいだ、柳川での一日【熊本大地震ルポ #13】
ひとり暮らし、不安に怯える友を訪ねる【熊本大地震ルポ #14】
怒りや喪失感。被災をして見えたもの【熊本大地震ルポ #15】

福島はるみ

  • facebook
  • twitter
  • hatena

    Ranking

    1. 肌もボロボロになる? 女医に聞いた「花粉症の噂」の本当のところ

    2. あなたの「怒りタイプ」がわかる。アンガーマネジメント診断

    3. 「AIスコア診断」で、自分の信用度を数値化してみた

    4. 女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法

    5. 「突風にでも吹かれたの?」 仕事で出会った、ちょっと残念な人エピソード

    6. ズボラでもできた! 人生が好転するクローゼットづくり

    7. 冬の隠れ悩み「デリケートゾーンのかゆみ」には正しいケアを

    8. Sexが痛い!婦人科医からの性交痛治療アドバイス [The New York Times]

    9. ヤフー社員の座談会。ダイバーシティ推進のカギは「WHY」の意識だった

    10. 博学多才タイプ

    1. 肌もボロボロになる? 女医に聞いた「花粉症の噂」の本当のところ

    2. 「AIスコア診断」で、自分の信用度を数値化してみた

    3. あなたの「怒りタイプ」がわかる。アンガーマネジメント診断

    4. 女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法

    5. できないことが多くても、落ち込まなくていい理由

    6. 「突風にでも吹かれたの?」 仕事で出会った、ちょっと残念な人エピソード

    7. 仕事の運気を上げるための3つの意識改革/まとめ

    8. いくらなんでも、贅沢すぎません? 「特別感満載コース」で充実させる金沢旅行

    9. 冬の隠れ悩み「デリケートゾーンのかゆみ」には正しいケアを

    10. Sexが痛い!婦人科医からの性交痛治療アドバイス [The New York Times]

    1. 身長100cmで2児の母。ハンディキャップとともに、自分らしく生きる

    2. 肌もボロボロになる? 女医に聞いた「花粉症の噂」の本当のところ

    3. あなたの「怒りタイプ」がわかる。アンガーマネジメント診断

    4. 女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法

    5. 上司にイラッ、後輩にムカッ、肌荒れにガクッ。そんな気分を跳ね返す最強アイテムはコレだ!/ストレス解消座談会

    6. 「老け見え」排除のポイントはここ! 日本初のアプローチが私たちを救う

    7. 「AIスコア診断」で、自分の信用度を数値化してみた

    8. Sexが痛い!婦人科医からの性交痛治療アドバイス [The New York Times]

    9. 子どものスマホデビュー前に確認しておきたい注意点とポイント

    10. 「突風にでも吹かれたの?」 仕事で出会った、ちょっと残念な人エピソード

    本震。あまりにも予想外で、残酷なほどの揺れ【熊本大地震ルポ #7】

    FBからも最新情報をお届けします。