話をしながら惜しみなくこぼれる笑顔――。経営者向けのコーチングを生業としている和気香子さんは、これまでに多種多様なキャリアを歩んできた。
真面目で完璧主義な性格から、ときに心の病になったことも......。受け身だった自分を変えてフリーランスになり、ついに自らが主体となる生き方を選択した。

女優を目指した少女時代。実現するも理想との間に大きなギャップ

子どものころから女優になりたかったという和気香子さん。大学3年生の頃から芸能関係の仕事をスタート。卒業後も継続してテレビや舞台、映画、CMなどに出演するなど、傍目には堅調だった。

ところが、自分が思い描いていた理想的な姿にはほど遠い。「脇役を演じている」という現実とのギャップに耐えられなくなり、5年ほどですっぱりと女優業を引退する。

その後、留学しようと思い立つ。まわりの人からの勧めや、世間のMBAブーム、帰国してからのキャリアを考え、ビジネススクールに。1年ほど受験勉強をし、晴れてニューヨーク大学に合格。
帰国後は、ソフトバンクに勤めていた知人の誘いを受け、初めて会社員として働きはじめる。

「配属された部署では、新規事業の企画から販売までの過程に関われて充実していました。ただ、驚くほどのハードワークで月に200時間ほどの残業。『ずっとこれが続くの?』と、とても苦しく感じていました」

このままでは継続が難しいと感じ、退職。その後、日本コカ・コーラなど複数の会社を経験する。

それぞれの退職理由は、外部からの魅力的なオファーや大規模リストラなどさまざまだったが、新しい会社へ入社するきっかけはほとんどが知人からの誘い。ありがたいことではあるものの、「ずっと受け身だった」と和気さんは言う。

20160902_career_1.jpg

転職活動では、勤め先が数年ごとに変わるのは経歴としてマイナス。なかなか採用まで至らず、辛い日々を過ごしたこともあった。そんな折、またも知人から、外資系アパレル企業の日本支社に誘われる。

「誘ってくれた方は社長の下の本部長で、私はその部下でした。ところがその方が退職し、部長ポストが空いたまま、私が社長と直接やりとりするようになったのです。社長は大変に優秀で、かつ厳しい方。その期待に応えたいという思いと、プレッシャーからくる重圧で、精神的にまいってしまいました

会社に行く足が重くなり、夜はなかなか眠れず、夜中に目が覚める。当時つきあっていた男性に指摘され病院へ行くと、「うつ状態」という診断だった。

シナリオライターから投資会社へ。ベンチャーの魅力に開眼

数ヶ月の休職を経て復帰するも、既に息切れしていたのだろう。自分の意志で「シナリオライターになりたい」と思い、退社することに。ところが、派遣社員と兼業しながらの生活で「シナリオライターでは食べていけない」と感じたという。

そんなとき、知人が経営する投資会社から週2~3回働いて欲しいというオファーを受ける。市場調査などを担当するにつれ仕事への興味が芽生え、シナリオライターを辞めてフルタイムで働き始める。周囲からの評価も高く、チームを率いるマネージャー職に昇格した。

20160902_career_2.jpg

投資の仕事は性に合い、「『世の中を変えたい』と起業する人たちに、強い魅力を感じた」という。社内での評価も高まり、マネージャー職に昇格。チームメンバーは気心の知れた人たちで、期待に対する喜びもあった。ところが、時代はリーマンショック直後。成績は伸び悩む。

「期待に応えられていないと感じました。『和気さんどうしちゃったの?』『マネージャーなんだからちゃんとしてよ』と言われているような気がして......」

言葉で実際に聞いたわけではないのに、まわりの評価を気にして気ばかり焦る。徐々に仕事が手に付かなくなり、自分でも変調に気がついた。友だちのセラピストに相談すると「たぶんうつ病だろう」と指摘される。

コーチングに出逢い、起業家をサポートする立場へ

「人の評価を気にしすぎて、完璧を目指すのがいけなかったんです。『自分が変わらなければ同じことの繰り返しになる』と思いました。試しにカウンセリングを受けてみたら、とても状態がよくなって。私も、弱った人を助けたい、と強く感じたんです」

カウンセリングをきっかけに、興味は関連性の高いコーチングへ。マイナスをゼロにするカウンセリングより、ゼロを1にするコーチングに強く惹かれたのだという。

学びはじめたころと時を同じくして、会社で早期退職プログラムが実施され、独立を決意。これまでのキャリアや投資会社での経験を活かして、現在は経営者向けの「エグゼクティブ・コーチ」を事業の柱としている

「いろいろな会社を転々としたため『どうしてこんな道を歩いてきちゃったんだろう』とコンプレックスに感じていました。ところが、コーチングではクライアントの気持ちがわかったり、専門用語が理解できるなど、いままでの経験がとても役立つんです」

昨年からオンラインサロンを開設するなど、新しいことに次々と挑戦している。

「AIを使ってチャットができる『和気香子BOT』をつくろうと計画しています。100%コーチの代わりにならなくても、7~8割でも満たせたら。愚痴や弱みを言って気分が晴れるようなものが提供できるといいなと思っています」

人に誘われ、期待される続けた和気さんのキャリアは、端から見ると羨ましくも思える。ところが見方を変えれば、受け身の仕事でしかない。和気さんがみずから出会い、つかみ取ったのは、受け身ではない主体性のある働き方だった。

コーチングを通して人のチャレンジを応援しながら、フリーという立場で自分もチャレンジしている」と言う和気さん。関わるチャレンジの数はどんどん膨大になり、和気さん自身がその架け橋となっていくことだろう。

20160902_career_3.jpg

和気香子

栃木県生まれ。東京大学経済学部経営学科卒業。在学中に女優を志し、卒業後も女優業に従事。ニューヨーク大学MBA取得。留学後、ソフトバンク、マッキャン・エリクソン、日本コカ・コーラ、日本アジア投資に勤務後、エグゼクティブ・コーチとして独立。オンラインサロン「自分らしいキャリアを歩みたい人のためのコーチングサロン」も運営中。

あわせて読みたい

働く糧になる言葉。世界のキャリア女性インタビュー【まとめ】

40歳で出産。広告業界で働く2児の母【キャリアインタビュー in USA】

いったんはあきらめた道。そこに起業の光が見えた【Zaim 閑歳孝子さん】

この記事を気に入ったら、いいね!しよう。

Facebookで最新情報をお届けします。