「初めて」に飛び込む。偶然を必然に変える力【アペックス 芳子ビューエルさん】

「初めて」に飛び込む。偶然を必然に変える力【アペックス 芳子ビューエルさん】

取材当日、約束の30分も前に到着していた芳子ビューエルさん。

お話を伺う前から、仕事への丁寧な姿勢が見て取れる。留学先のカナダで就職し、その後、日本で起業。事業規模が年々拡大するなかで、3人の子どもを育てあげ、現在はお孫さんも。そのキャリアを伺った。

ジャーナリストの道を断念し、営業職へ

大学からカナダに留学した芳子ビューエルさんは、もともとジャーナリスト志望。ところが、英語を母国語とする人の中でもさらに言語に長けている人と戦わなくてはならず、断念。「じっとしているのが苦手」というビューエルさんにとって、向いていると思えたのが営業職だったという。

就職したのは、OA機器を販売する大手企業。

営業職で初めての女性採用でした。当時の支店長が引退する直前で、考え方や行動の仕方を一から教えてくださいました。まずは、とにかく笑う練習。気分が乗らない日に『いますぐトイレへ行って自分の顔を見てください』と言われたことも」(ビューエルさん)

ありとあらゆるノウハウを教わり、入社半年で売上トップになる。入社当初は女性というだけで嫌味を言われたこともあったが、結果を出した後は嫌な思いをすることもなくなった。

ほどなくして、学生時代に結婚した夫との間に子どもができ、復職時には広報へ。しばらく広報として働いていたが、夫に日本から仕事のオファーが。当時は1~2年ほどのつもりで休職を取り、家族で日本へ向かうことになる。

代表電話から問い合わせ、テレビショッピングでの販売が実現

20170216_career_02.JPG

帰国後は親類などにすすめられ、なんと夫の仕事とは別に会社を興すことになる。

「じつは、起業する意味をまともに理解しておらず、『やってみようかな』という気持ちで輸入業をスタートしました。当初はまわりから出資を受けてすすめられた通りにしていましたが、2年ほど経ったころ、自分たちの力で事業を新しくすることにしたんです」(ビューエルさん)

得意な英語を活かそうと、翻訳の広告を電話帳に掲載。幸いにも問い合わせがあり、海外事業の代行業務にニーズがあると知る。当時は新しいビジネスモデルとして注目され、30社ほどの顧客と契約。生き物や宇宙食、墓石といったさまざまな商品を扱いながら、ビジネスノウハウを身につけた。

少しずつ資金に余裕ができ、輸入業を再スタート。ところが、国内での売り先がなかなか見つからない。そこで目をつけたのが、テレビショッピングだった。

「テレビ局の代表電話に連絡したら、通販の担当につないでくれたのです。商品はフィンランドの耐荷重180kgの折りたたみできるアウトドア用のイス。担当者が気に入ってくれて販売できました」(ビューエルさん)

通りすがった社長に見初められた寝具がブレイク

その後、みずからのステップアップのため、JETRO(日本貿易振興会)のライフスタイル専門家の試験に通過して、採用となる。JETROの活動を通じて知り合ったデンマークの寝具メーカーの社長と縁があり、売れた分だけ後払いでいいと、大量の商品を託される。体圧を分散できるという寝具だった。

「ひとつの営業先が、ソニーファミリークラブ(現ライトアップショッピングクラブ)でした。会議室で商品の説明をしていると、ちょうど社長さんが通りかかった。『これ、使ってもいい?』と聞かれたので、そのままお使いいただきました。数日後にお電話をいただき『妻が脊椎を患っていて朝はなかなか起きられなかったが、今朝私が起きてみると、久しぶりに味噌汁ができていたんだよ』と」(ビューエルさん)

何というドラマチックな巡り合わせ! 商品が気に入られ、ソニーファミリークラブが新聞に五段抜きのカラー広告を出稿。ここから卸売も軌道に乗り、テレビショッピングに加えて企画、OEMといったさまざまな事業に発展していく。商品ジャンルも食品やテーブルウェア、化粧品と、スタッフが「やりたい」というものを中心に広げていった。

女性スタッフが多いこともあり、フレキシブルに働ける環境も整えてきた。有給休暇は1時間刻みで取得でき、休みの取得は年次に関係なく早い者勝ち。また、リモートワークも進めており、週のうち2日間だけ、東京から本社のある高崎へ通っているスタッフもいるのだとか。

20170216_career_03.JPG
アペックスが取り扱う北欧で人気のあるランプシェード。折りたためる紙製で、インドの職人によるハンドメイド。日本ではライトとセットの照明器具として販売

花やダイビングで生活にメリハリを

輸入業などを主とするアペックスと共に、コンサルティングなどを手がけるアルトの代表でもあるビューエルさん。忙しい毎日だが、生活にメリハリを付けるため、工夫していることがある。

金曜日はお花の日と決めています。自宅へ帰るとお花が届いており、それを生けると、仕事とは違う頭が使えるんです。日曜日には10時からパーソナルトレーニングに行きます。決めないと、いくらでも"行かない言い訳"ができるので......。

また、48歳のときにダイビングのライセンスを取り、もう160本くらい潜りました。2週間ほど休みを取り、モルディブでダイビングするのが楽しみです」(ビューエルさん)

さらには「書き物」も好きで、執筆や講演活動、コンサルティングを通じて、ライフスタイルを提案してきたいという。また、新規にオープン予定のカフェを成功させるための施策も重ねている。いつまでも「欲張り」に、なおかつ「丁寧」に。これからもビューエルさんらしく、暮らしを紡いでいくのだろう。

芳子ビューエル(よしこ びゅーえる)

株式会社アペックス 取締役社長/株式会社アルト 代表取締役

群馬県高崎市出身。高校卒業後にカナダに留学。大学在学中にカナダ人男性と結婚し、8年半カナダに滞在。カナダ滞在中はBenndorf-Verster LTD.(現kinko's)に女性第1号の営業職として採用される。1989年、カナダからの帰国後、輸入商社である株式会社アペックスを設立。JETRO(日本貿易振興機構)よりライフスタイル専門家として、北米、北欧/ヨーロッパ、オセアニアに派遣。この時の経験を活かし、世界的に有名なデンマークブランド「menu」「DYKON」等、北欧の大手メーカー7社の商品を取り扱い、「北欧雑貨・家具ブーム」の礎を築くことに貢献する。ブログはこちら

撮影/土佐麻理子

あわせて読みたい

「初めて」に飛び込む。偶然を必然に変える力【アペックス 芳子ビューエルさん】

この記事を気に入ったら、
いいね!しよう。

Facebookで最新情報をお届けします。