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【映画と人生】愛する人に尽くすという生き方。『博士と彼女のセオリー』

【映画と人生】愛する人に尽くすという生き方。『博士と彼女のセオリー』

映画『博士と彼女のセオリー』で描かれるひたむきな愛

愛する人をひたむきに支える人生は素晴らしいものです。この作品の主人公ジェーンもそのひとりです。

量子宇宙論であまりに有名なホーキング博士。彼が重度のALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者であることは、彼の名声にくらべるとあまり知られていません。

ケンブリッジ大学大学院に在籍中、詩について勉強していたジェーンは、ちょっぴり偏屈だけど才能にあふれたスティーヴン・ホーキングと出会い、恋に落ちます。

けれども、その直後、彼はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症、治療法もなく余命2年と宣告されてしまいます。病による引け目から一度は彼女を拒絶したスティーヴンでしたが、たとえ残り短い人生であろうと一緒にいたいと、ともに困難を乗りこえ彼を支えることを選んだジェーンの決意に押され、2人で人生に立ち向かうことを選びます。

自分の人生を忘れたかのように夫に尽くしたジェーン

余命を宣告され、身体の自由ばかりかコミュニケーション能力も徐々に奪われていくスティーヴンと暮らすということは、単なる結婚生活ではなく、彼の介護をするということも意味します。

彼女の恋人や妻というだけでなく、ときには母親になり、ヘルパーとなり、研究では助手ともなって、ジェーンはまるで自分自身の人生など忘れてしまったように彼に尽くします。いくら相手を愛しているとしても、なかなかできることではありません。

そんな素晴らしい愛にあふれた彼らは、恋愛映画であれば「ここから彼らはいつまでもいつまでも幸せに暮らしました」と終わるところかもしれません。

「犠牲」の愛の結末

しかし、現実はそんなに甘くはありませんでした。彼らの関係は、時間の経過とともにだんだん違う様相を帯びてきます。そして結局、スティーヴンはナースのひとりと恋に落ちジェーンと離婚、ジェーンもまた他の愛の道を選ぶのです。

あれだけ愛にあふれていた2人なのに、なぜ?

作中、心配のあまりあれこれ世話を焼くジェーンにうんざりしているスティーヴンが軽く口喧嘩をするようなシーンが出てきます。

そして、いよいよジェーンひとりで介護しきれなくなり、ある男性を家庭に迎え入れたときのスティーブンの口惜しさを感じさせる切なげな表情。(このときのレッドメインの演技が見事すぎ!)

また、ナースのエレインとほんのりエロティックな秘密を共有することになり、ウィンクしてみせる彼女を見るスティーヴンが彼女に向ける「雄」としての視線、私はとくに印象的でなりませんでした。

ジェーンといると、ただのわがままな障害者にしかすでに見えなくなっていた彼。けれどもエレインといるスティーヴンはそうではありませんでした。その違いがこの結果を生んだのだとしたら。

ホーキング博士というある意味「弱者」に、愛ゆえに尽くした女性。ジェーン。きっと彼女は深く強い愛ゆえに、いつのまにか自分を彼の妻としてではなく「強者」「保護者」としてのみ存在するよになってしまったように思えてなりません。

もちろん彼女の強さに救われた部分も大いにあったと思いますし、スティーヴンもそれは理解しているでしょう。

まずは、自分の人生を生きる

けれども、結局幸せとは愛し合う2人が対等であることが必要で、愛を理由にしたどちらかの過大な犠牲は、いくら美談のベールに包まれていたとしても、おたがいの苦しみしか生まなくなる、ということのような気がします。

もしもジェーンが、スティーヴンの人生に自分をすり減らすだけでなく、自分自身の人生にも強くあったのなら、また違った結果になったような気がしてなりません。

まずは自分の人生をきちんと生きること、誰かに尽くす人生の幸せというのは、その上にしか存在できないということを彼女は教えてくれたのかもしれません。

この映画でホーキング博士を演じたエディ・レッドメインはアカデミー主演男優賞を受賞した他、同作品でゴールデングローブ賞主演男優賞、英国アカデミー賞主演男優賞等数々の賞を受賞しました。

バーバリーのモデルも務めるイケメン俳優の、本人と見まがうばかりの繊細な演技は一見の価値ありです!

博士と彼女のセオリー(The theory of everyting)(2014日本公開)

製作国 イギリス配給 ユニバーサル・ピクチャーズ/フォーカス・フィーチャーズ監督 ジェームズ・マーシュ 出演 エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ

image via Shutterstock

小林聖

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