ニューヨークのラグジュアリーキャリアの一日を追う連載13回目は、料理家でNY流おもてなしサロン認定資格講師のひでこコルトンさん

彼女を知らないニューヨーク在住の日本人は居ないかも!? とさえ思える、この街で成功した日本女性の代表といえるひでこさん。

彼女のライフワークとも言えるおもてなし料理教室をはじめ、サロン認定資格講座やセミナー、レシピ開発や米国市場商品PR等企業顧客対応に監修、米国フジテレビの料理コーナー、各種パーティやイベントなどで大活躍の毎日を送っています。

そのゴージャスなルックスとご本人いわく「バリバリのニューヨーカー!」というエネルギッシュなキャラクターで、ファンも多いひでこさん。ニューヨークでひときわ輝く女性である彼女の一日とは?

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ひでこ コルトンさん
◇職業:COLTONS NEWYORK 代表取締役
NY*おもてなし料理教室・サロン認定資格講座・セミナー主宰 、NYライフスタイルブランディング、米国進出企業向け調査・商品PR・監修、レシピ開発等(著書「NYのおもてなしレシピ」講談社)
◇住まい:ロングアイランドシティ、クィーンズ
◇家族構成:アメリカ人のご主人、12歳の息子と3人暮らし

7:00am

起床。エスプレッソをいれ、息子さんの朝食の準備。定番メニューは、パンケーキ、グリルドチーズサンドウィッチ、彼の好物であるスクランブルエッグ。彼の宿題が済んでいるかを確認したり、この1時間は息子さんとの時間です。

8:00am

息子さんが学校に行った後、メールチェック、返信。夜中に日本から多数届いています。また、生徒や認定校から質問がくることも。その他、仕事上フェイスブック等SNSを確認し、数か所で書いているブログやインスタグラムの更新をします。

9:00am

ご主人とブレックファーストタイム。自宅兼職場で夫婦そろって1日がスタートします。 

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9:30am

本日の教室のテーブルセッティング開始。クロス、花、キャンドルなどを並べていきます。椅子を並べ、メニューをバインダーにセット。ひとりで準備することが多く、けっこうな肉体労働だとか。

10:00am

アシスタント到着。ひでこさん自身も身支度を。彼女のトレードマークであるロングヘアは、顔にかからないようサイドにレイヤーを入れてカットしてあり、後ろへ流れるように巻くのがポイント。仕事着はクラスのテーマカラーに合わせて決めます

ドレス選びは自分のためというより、パーティを成功させるため。ひでこさんの教室は、料理教室というよりパーティです。

ニューヨークではホストが華やかにしていないとムードが盛り下がってしまうのだとか。黒を着て、食材を手にするとおいしく見えないため、野菜の色であるビタミンカラーのドレス(ワンピース)を選ぶことが多いそう。

プライベートで好きなブランドは、『ダイアン フォン ファステンバーグ』や『BCBG』ですが、料理中はどうしても汚れるので『ZARA』や『H&M』が多いとのこと。洗濯機で丸洗いできる『Rish NY』のドレスもお気に入り。

基本は手ごろで、動きやすいもの、そして四季にちなんだカラーを揃えています。オンライン・ショッピングだとテーマに合わせて選んだカラーでドレスを選べるので便利。

10:15am

今回のテーマは春。ハーブの苦味で冬から身体を目覚めさせます。

カクテルのグラスを並べ、ラベンダーやリキュール、シンプルシロップをセットアップ。クラスでサーブするウェルカムドリンクは、シャンパンなど泡がベースの軽くて爽快なカクテルが基本です。

アミューズブッシュであるハイビスカスのリゾットの準備。料理は基本的にデモンストレーション・スタイル。必要な食材等を冷蔵庫から出しておきます。

同時に、テーマに沿った曲をセレクトした音楽をセット。ひでこさん自身でおよそ2時間分をミックスしているそう。たとえば、日本でニューヨークをテーマに開催した教室では、フランク・シナトラ、ブロードウェイ・ミュージカル、『セックス・アンド・ザ・シティ』、アリシア・キーズなどの曲をセレクトしたそう。

おもてなし教室なので、日常生活とは異なるコルトン流の世界観にどっぷりと浸っていただき、五感すべてを使ってクラスを楽しんでほしい、というのが彼女の願いです。

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Photo by Masahiro Noguchi

11:00am

料理教室、開始。生徒同士が交流するカクテルタイムからスタート。

11:30am

メニューの説明をし、時間がかかるものから調理開始。前菜、メイン、サイド、デザートの4品を約2時間かけて楽しいトークとともにデモンストレーションしていきます。

1:00pm

花やアレンジがNYらしい、美しくセットされたテーブルに着席して試食開始。各回の参加人数は約20名。認定講座の受講生がアシスタントとして2名ほど参加する場合も。生徒の6割は駐在員の妻で、日本から旅行で来ている人が受講することも珍しくありません。

単身赴任でNYにいる男性は、ひでこさんの教室で料理を学び、ひさしぶりに会う妻にフルコースを振舞ってサプライズしたというエピソードも。

そのほか、男性もNYではスマートにおもてなしするため、男性のためのパーティでのスマートな振る舞いについてや、男性主導で行うBBQでのもてなし方について教えてほしい、というリクエストもあるそう。

2:00pm

教室終了。ママである生徒の都合も考慮し、午後3時に子どものお迎えが可能な時間に終了です。

3:00pm

ひでこさんは残りものでランチのあと、アシスタントと片付け。ナプキン、クロスの洗濯なども入れると、準備から片付けに前日、当日、翌日までの3日間かかります。

5:00pm

本日の教室業務がすべて終了。

7:30pm

教室が終わると、かなり疲労しています。ワインを1杯飲みながら、デリバリー・ピザの夕食。

8:30pm

仕事のメールに対応。食材の手配をオンラインでやることも。SNSの更新後は家族との団欒の時間。

11:00pm

ひでこさんは立ち仕事が多く、パソコンをよく使うので身体がカチコチに。リュクスなジム「Equinox」で泳ぐか、ヨガをやるようにしていますが、就寝前も自分でヨガマットを広げてストレッチ。そして、熱いシャワーを浴びます。

仕事柄、手元に視線が集まることが多いので、寝る前には手のお手入れを。お気に入りはオーストラリアブランド『Aesop(イソップ)』の「Resurrection Aromatique Hand Balm」。シトラスの香りが好きだそう。

料理教室では香水を使わないため、これが香水代わり。読書するなら、料理やインテリアなどライフスタイル関係の本や、最近気になるコレステロール値を下げる研究のための本に興味があります。

12:00pm

就寝。朝型だというひでこさんは、午前中に集中して仕事をこなします。しかし、日本の顧客とのやり取りや夏の日本出張に向けて、夜に日本と会議することもしばしば。

とはいえ、上質の睡眠は明日の仕事に影響するため12時には寝るようにしているそう。ハードな仕事にディープな睡眠はマストです。

タイム・イズ・マネー。人と同じことをやっていては差をつけられない!

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Photo by Masahiro Noguchi

午前中に降りつづいた雨が残る、平日の午後3時。中央に印象的なファイアープレイスのあるリュクスなアパートメントビルの仄暗いロビーに、急に花が咲いたようにひでこさんが登場。白レースのワンピースにレオパードのバックスリング、パーカーを羽織ったスタイル。

「取材ってどんな服を着たらいいかわからなくて。ドレスダウンは簡単だから、とりあえずドレスアップしてきたの(笑)」

大きく笑う彼女は、とにかく明るい。そして、テキパキと撮影場所の候補として、ワインセラーやプレイルーム、ルーフトップなど、つぎつぎと案内してくれる手際の良さは長年、金融業界で活躍してきたキャリアウーマンの片鱗を覗かせます。

つねにパワー溢れるひでこさんの秘密は何なのでしょうか。また、一日をそれに費やすような難解なものではなく、手早くできるのにサプライズのあるレシピを生みだす背景には何があるのでしょう。

スイスに本社のあるUBS証券でアメリカ株を担当していたひでこさん。およそ12年間、身を置いたというウォールストリートでの経験が少なからず関係しているのかもしれません。

「成功しているニューヨーカーは、みんな物凄く頑張っていてパワフル。タイム・イズ・マネーで時間の使い方が効率的です。日本みたいに12時になったらとりあえず昼休み、なんていう概念がありません。早朝からパワー・ブレックファスト(朝食の時間を利用した会議)をしますし、とにかくフレキシブルでなくてはダメ。ハイスタンダードだから頑張る余地ありますよね」

料理学校のカナリー・インスティテュート・アメリカで学んだ料理の技術と、アメリカ人のホームパーティやソーシャルシーン、企業イベントに多数参加し、培った知識を活かして料理家に転身。教室をスタートする際に役立ったのも金融時代のトップから受けたアドバイスだと言います。

「ミディオーカー(Midiocre :並み、中流)になるな、やるからにはトップクラスになれと教わりました。ニューヨークの金融は、いわば戦場。人と同じことやってもダメです。それはどの分野でも同じで、わたしも普通の料理教室はやりたくなかった。自分が伝えたい世界観やNYらしさを肌で感じ、料理とおもてなしを楽しく学んでいただける社交パーティのようなクラスを開きたかったんです」

在住歴28年になるというニューヨークの四季を大事にしているというひでこさん。季節や食材からインスピレーションを得てテーマを決め、それに沿った音楽や香り、テーブルセッティングを盛りこんだ、遊び心満載の料理教室は生徒数3,000名を越す大成功。

さらに、NYスタイルのサロンをプロデュースするための認定校資格制度をスタートさせ、後進の育成にも力を注いでいます。

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「NY流ホームパーティの知識やカクテル、お料理、テーブルコーディネートにフラワーアレンジメントなど、NYスタイルのおもてなしを身につける認定講座のほか、将来女性の起業やブランディングに役立つNYライフスタイルセミナーにも力を注いでいきたいと思っています」

認定校をそれぞれ軌道に乗せて、生徒ひとりひとりが活躍できるようにサポートしていきたい、と生徒たちのロールモデルとして、そして頼れるリーダーとしてきめ細かな配慮を忘れません。

「また、今後はアメリカ人に向けて、わたしが厳選した日本の美しいもの、おいしいものを発信していきたい。日本人だけどニューヨーカーの自分にしかできない和のおもてなしがあると思うんです」

そう語る彼女は、すでに日本の伝統である食器や調理器具などをアメリカ人の目線でアレンジして紹介し、好評を得ています。また、いつか自分の家に招待されているようなバーやレストランの一角にセレクトアイテムを扱うような、そんなブランドショップを持つ夢も。

わたしは晴れ女、というひでこさん。

「本名のひでこの漢字、じつは日の出って書くの。だからかしら(笑)」

でもその名前の意味もまんざら気のせいというわけではなさそう。取材をはじめたとたん、あんなに厚く空を覆っていた雲の切れ間から太陽の眩しい光が差しこんできました。

まるで彼女の明るい笑い声に呼応するように、対岸のエンパイアステートビルも徐々に日の光に照らしだされ、輝きはじめました。

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取材・文/神田朝子
撮影/Fumika Sugimoto