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目を開き、感じる。誰もが世界に責任を持つ【ダルデンヌ兄弟監督インタビュー】

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目を開き、感じる。誰もが世界に責任を持つ【ダルデンヌ兄弟監督インタビュー】

これまで、世界には歴史をつくりあげてきたさまざまな兄弟が存在しており、映画もまたリュミエール兄弟の発明によるもの。

そんな映画史のなかに確実に名前を刻んでいるもう一組の兄弟といえば、ベルギーが生んだ名監督、ダルデンヌ兄弟は外せない。

作品を発表するたびに世界中の映画ファンの注目を集め、カンヌ国際映画祭では2度のパルムドール大賞を受賞するだけでなく、7作品連続でコンペティション部門出品という快挙も成し遂げている。

今回、待望の最新作となるのは、みずからの行動によってある少女の死を招いてしまった若き女医が死の真相を追いかけるミステリー『午後8時の訪問者』。力強い人間ドラマに心を揺さぶられる作品だが、日本での公開を目前に控えるなか、兄ジャン=ピエールと弟リュックの2人に見どころや現在抱えている思いを語ってもらった。

ヒロインが医師であるがゆえの死の重み

本作の「追及」というテーマは、数年前から温めていたアイディアだというが、ジャン=ピエールによると主人公ジェニーを医師にしたのには、ある理由があるという。

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「以前から医師を映画で使いたいとは思っていたんだ。ただ、今回あえてこの設定にしたのは、本来は命を守って死から遠ざけるのが医師だけれど、ジェニーのように扉を開けなかったがために誰かが死んでしまったという逆の設定をすることによって、この映画の重要なポイントが浮き彫りにされると思ったからなんだ。それは、主人公が靴屋さんだったり、建築屋さんだったりするときよりもずっと強く感じられるからね」(ジャン=ピエール)

そのことで、少女が一体何者なのかを執拗に追い求めるジェニーの姿にさらなる説得力が生まれているが、じつはもうひとつ別の意味も隠されているのだと付け加えた。

「あとは、彼女が"耳"になり得るということなんだよ。つまり、聴診器で診断をするように、身体の調子が悪いところを聞くことで、その人の内面を聞く耳になる。それが、だんだん亡くなった少女の名前までの道筋が見えてくるという設定にしたかったんだ」(ジャン=ピエール)

そうやって緻密につくりあげられたジェニーという人物を見事に演じているのが、フランスの若手実力派女優アデル・エネル。パリで偶然出会い、すぐにこの役にぴったりだと感じたというが、そのときの様子をリュックが教えてくれた。

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「じつは、彼女も私たちも、賞をもらうためにあるレセプションにいたんだけど、舞台の上に立っている彼女を見たときに、若くてすごく無垢な感じを与えるところがジェニーにちょうどいいと感じたんだ。彼女を見るだけで、信頼感が湧くような存在だと思ったから、選んだんだよ」(リュック)

そんなアデルも前作『サンドラの週末』で主演を務めたマリオン・コティヤールも監督たちの大ファンであり、「まさかダルデンヌ兄弟の作品に出演できるとは夢にも思っていなかった」という声がどちらからもあがった。

俳優からそういう存在として尊敬されていることについてはどう感じているのか聞いてみると、「2人とも大監督たちと仕事しているし、そう簡単に信じちゃだめだよ(笑)」と冗談交じりに謙遜する。

「でも、彼女たちとの仕事は、本当にいい関係で、素晴らしい共同作業だったよ。それぞれ違う映画だけど、芸術的な面でも人間的な面でもいい仕事ができたと思っているんだ」(ジャン=ピエール)

巨匠と呼ばれるいまなお、親しみを感じさせるような優しいオーラを放つ2人。そんな彼らだからこそ、俳優たちも安心して身を委ね、最高のパフォーマンスを発揮することが可能になるのかもしれない。

ポピュリズム的な政治に利用されてはいけない

これまでも社会的弱者の目線で描き続けているダルデンヌ兄弟だが、「世界的に移民は大きな問題」と訴え、本作でもメタファーを交えながら私たちに問いかけている。彼らには、いまの現代社会はどんな風に映っているのかは気になるところ。

「自分の国でつらい現実に直面したときに、インターネットなどでもっとすばらしい世界が外にあって、よりよい生活ができると知ったら、『そこへ行きたい』と思うのは人間として普通のこと。ただ、私たちがどこまで移民を受け入れることができる体制にあるのかというのが問題なんだ。

いまはヨーロッパも不況だから、それを恐れているところもあるし、複雑な状況ではあるけれど、だからといって目を閉じて見えないようにするというのは間違っていると思うよ。この映画では、移民に対しての恐れや反感、憎しみ、あるいは無関心でいるといった個人の気持ちだけでなく、それを利用するポピュリズムに対しても異議を唱えているんだ」(リュック)

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だからこそ、トランプ大統領率いるアメリカの現況や未来にも危機感を持っているのだと話す。

「ヨーロッパでは国民の恐怖心というのをまだ煽ってはいないけど、トランプ大統領はまさにそれをやっている。つまり、他人に対する憎しみや恐れ、あるいは侮辱といった気持ちを利用しようとしているんだ。

人々を平和の方向に進めるために色んな仕組みを考えたり、交渉したりするのが本来の姿だと思うんだけど、逆のことをやっていることは非常に恐ろしいこと。アメリカの国民だけではなくて、世界中の人たちも危ない方向へ引っ張られてしまうから、今後大惨事を生んでしまう可能性もあるかもしれない。だから、そうなる前にアメリカ国民が反応してくれることを望んでいるよ」(リュック)

いままでダルデンヌ兄弟が映画を通じて私たちに伝え続けている思いを、1人1人が自分の問題として受け入れ、考えることが求められているのだと改めて感じさせる。

2人で仕事することが何よりもモチベーション

長年に渡って映画界をけん引している2人が、一緒に作品を制作しはじめてから今年で40年を迎えるが、精力的に映画を作り続ける彼らにとって、一番の原動力を聞いてみた。

「最初は、学校で映画を観たり、監督や演出の人たちの作業を見たりしているうちに、自分たちも映画をやろうと思ったのがきっかけなんだ。そして、新たな映画をつくるたびに、純粋に、もっと多くの作品を作りたいと思うようになっていったんだ。それと、2人でできる仕事だからというのが一番でもあるよ。もし映画を作らなくなったら、一緒に仕事できなくなっちゃうからね」(リュック)

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そういって微笑むジャン=ピエールとリュックは、兄弟というよりも、もはや一卵性双生児。

固い絆で結ばれたダルデンヌ兄弟の2人にしか生み出すことのできない"化学反応"は、これからもまだまだ私たちを魅了し続けることだろう。

午後8時の訪問者

監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

出演:アデル・エネル、オリヴィエ・ボノー、ジェレミー・レニエ、ルカ・ミネラ、オリヴィエ・グルメほか

4月8日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

配給:ビターズ・エンド

© LES FILMS DU FLEUVE - ARCHIPEL 35 - SAVAGE FILM - FRANCE 2 CINÉMA - VOO et Be tv - RTBF (Télévision belge)

http://www.bitters.co.jp/pm8/

撮影/柳原久子

志村昌美

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