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パーフェクトは無理といいたい。フランス女性と社会的プレッシャー

パーフェクトは無理といいたい。フランス女性と社会的プレッシャー

仕事をバリバリとこなし、平均2人の子どもを育て、休日にはスポーツ、音楽を楽しみ、パートナーとの密な時間も持てば、社交パーティも疎(おろそ)かにしない......母、妻、女、キャリアウーマン、すべての顔を完璧にこなすように見えるフランス人女性。

けれども、よくよく近づけば、このフランス人女性像は、世間が作り出した「鋳型」。その型にはまるためには払わなければならない犠牲も少なくないようです。

働く母親、独仏比較

仏独共同のテレビ局Arte(アルテ)がこの春制作した30分弱のドキュメント『ARTE Regards « Le modèle français : super maman et femme active »(フランスの規範:スーパーママと働く女性)』は、そんなフランス社会の実態に迫っています。

主にドイツと比較してまとめられたこのレポートが取材するのは、フランス在住の男女4人:

・典型的なフランスのワーキングマザー、エステル45歳。

・3人目の子どもの産休がもうすぐ終わるデルフィヌ37歳。

・ドイツ出身フランス在住、独仏ミックスの幼稚園で働くベリンダ49歳。

・小児科医および心理療法士としてフランスで働くドイツ人男性アドリアン46歳。

4人それぞれの日常や、体験、意見を聞きながら、フランス社会の暗黙の了解と、フランス人女性を取り巻く現実が紐解かれていきます。

出産後は速やかに職場復帰

フランス社会では、出産後できるだけ早く、乳児を預け、フルタイムで母親が職場復帰するのが良しとされています。Arteによれば、実際、フルタイムで働く乳幼児の母親は、ドイツの12%に対し、フランスでは60%に上ります。

そのため、当然ながら、母親が子どもと過ごす時間は、多くありません。

母乳文化もあまり根付いておらず、日本と比べると、ずっと少ない印象です。母乳を与えるにしても、職場復帰が早いため、授乳期間は短いものとなります。同番組によれば、生後6か月を過ぎて、母乳を与えられる乳児は、フランスでは10%と、ドイツの4分の1に過ぎません。

もちろん、フルタイムの職場復帰が可能なのは、フランスの保育所の数が多いことや、システムが整っているからでもあります。育児休暇制度だって存在します。ただし、育児休暇中の収入は通常時より低くなるため、経済的な理由で制度利用ができないデルフィヌのような家庭も少なくありません。

大人に合わせて生きる子どもたち

また、一度職場復帰すると、子どものために仕事を休むのが容易でないのがフランス。ドイツと比べると、子どもの病を理由には休みが取りにくいこともあり、母親は、多くの場合、仕事を優先させます。わたしの身の回りを見ても、少々の熱なら、熱さましを飲ませて子どもを通園させるのが一般的な対応のようです。

アドリアンの指摘によれば、

「(フランスでは)幼いころから距離を置かれた子どもたちと、大人の間にはしっかりとした境界線があります」

Arte番組より翻訳引用

わたしも常々思うことですが、フランスは、良くも悪くも大人社会。子どもの世界と大人の世界が交わることの少ない国です。ホームパーティひとつとっても、子どもを同伴できる招待はめったにありません。子ども同伴が可能な場合でも、食事の席は、子どもと大人でテーブルを分けたり、時間差で子どもだけ先に食事をさせたりするのが普通です。

フランス人女性は疲れ切っている

仕事を持ち、収入を得ることでしか、社会的に認められないプレッシャー。それに打ち克とうと、ひたすら努力を惜しまぬ女性たち。その疲れは相当なものです。ベリンダの友人も、多くが悩んでいるといいます。

「みんな疲れ切っていて、(この生活を)変えたいと思っている人は多いようだけれど、どうしたらいいのか分からないのが現状みたい。それに、半ばタブーなところがあって、なかなかオープンには話さないのよ」

Arte番組より翻訳引用

Arteによれば、フランス人女性の痛み止め薬の消費量は、ドイツ人女性の3倍。すべてを完璧にこなすのが当たり前とされる社会のストレスにバーンアウトを起こす人も少なくありません。上記の完璧ママ、エステルも、バーンアウトを起こし、抗うつ剤を処方された経験をもちます。実は、フランスは、抗うつ剤の消費量が、世界でもトップ級に多い国でもあるのです。

次なるステップは、多様な生き方が可能な社会

そんな中、既存のモデルをなぞるだけではなく、もっと多様な生き方を模索するフランス人も、少数派ながらも増えてきました。

アドリアンによれば、特に、若い親世代には、もっと子どもたちと緊密な関係を築きたいと考える人が、男女ともに増えているそうです。アドリアンは、いままで意義を認められてこなかった親子の触れ合いの大切さにもっと日の目を当てようと、仕事の傍ら、親子関係を構築するサークル活動を主宰しています。

個人的な話ですが、私の場合、出産育児の時期は、フランス以外の国に住んでいたので、「すぐに職場復帰を」というフランス社会の重圧をまともに受けずに済みました。ただ、たまにフランスの親戚や友人に会うと、フルタイムで働いていない、というだけで、その場にいないような扱いを受けることもありました。この番組を見て、改めて、当時の状況が、腑に落ちる気がしました。

もちろん、出産後、職場に早期復帰したい人が復帰できる仕組みがあるのは、素晴らしいことです。フランスの次の課題は、早期復帰を望まない人には、別な選択肢が可能となるような社会づくりなのかもしれません。そのためにも、まずは、社会意識の変革がなによりも必要なように思いました。

ARTE Regards « Le modèle français : super maman et femme active »]

image via Shutterstock

冠ゆき

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