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アラフォーのストーカー被害は、いくえにも傷つく

アラフォーのストーカー被害は、いくえにも傷つく

先日、芸能界で「アラフォー女性のストーカー被害」が話題になった。ストーカー被害はいかなる場合でも深刻な問題だが、とくに「アラフォー女性の......」となった場合、別の問題もいっしょにくっついてくるので、さらにやっかいだ。今回はそんなアラフォーのストーカー被害プラスやっかい事情を書こう。

わたくしごとの話になる。離婚後、はからずもひとり暮らしとなった41歳のときの出来事だ。離婚による敗北感、あまりの喪失感になかば心神喪失状態になり、毎日ぼんやりと過ごしていた。

正午近くに起きて、ボサボサヘアとパジャマのまま、コーヒーを持ってベランダのテーブルで一服。コーヒーから立ち上る湯気を見ては「ぼー」、空に浮かぶ雲を眺めては「ぼー」、携帯電話が鳴ってもとらずに「ぼー」。ここで1日を過ごしているのではないかというほど、すっぴん&パジャマ&コーヒーの3点セットで、しょっちゅうベランダに出てはぼんやりしていた。仕事は「ベランダdeぼー」の隙間にちょこちょこ。ライターという自由業だからこそなせるワザだ。

もしかしてずっと覗かれてた?

そんな数日を送っていたある日のこと。ベランダでいつものようにぼーっとしていたら、頭上から「コンコン」と窓を叩く音がした。最初は気に留めなかったのだが、何度目かのコンコンでやっと音のするほうを見たら......なんと斜め向かいのマンションの、わたしのベランダが丸見えになる数階上の部屋の窓から、男性がわたしを見下ろしていたのだ。目があったとき、その男性は片手を小さく振った。あきらかにわたしに手を振っていた。

恥ずかしいというよりも恐怖心のほうが強く、激しい動悸が襲ってきた。すぐに部屋に入ってカーテンをしめ、ベランダ側の部屋でへなへなと座りこんでしまった。

「もしかしたら、いままでベランダに出るたびに見られていたのかな」

10分くらいたって、そっとカーテンの隙間から向かいのマンションを覗いたところ、なんとさきほどの男性が窓辺に立って、変わらずこちらを見ていたのだ。からだが震えた。

その男性は、見たところ20代。向かいはワンルームタイプのマンションなので、たぶんひとり暮らしだろう。よく顔は見えなかったが金髪だった。それに部屋には赤いカーテン。若気の至りがよくわかる髪型&部屋っぽかった。

おそらく悪気はまったくなく、ファミリータイプのマンションのベランダで日がなぼーっとしているわたしを見ては「あの人、いつもベランダにいるなあ」とか「暇な専業主婦なのかな」とか「それにしても家族の気配がないなあ」なんて何気なく思っていたのだろう。ある日、ふといたずら心が芽生え、つい合図をして手を振ってしまったのだと思う。

それでも、女性にとっては「覗かれる」という行為は恐怖以外の何物でもない。この日だけかと思ったら、カーテンの隙間から何度見ても、彼は窓辺にいてこちらを見ていた。夜は部屋の明かりを消して、窓辺に立っているのがシルエットでわかった。わたしはその日以来、ベランダ側のカーテンをすべて閉めて、ほとんどを寝室で過ごすようになった。外に出かける際も、周囲を常に気にして挙動不審なほどにキョロキョロしながら歩いた。

もう本当に、百発百中で彼はこちらを覗いているのだ。向こうもわたしのことを「四六時中ベランダにいて、何者なんだ」と思っているだろうけれど、それを四六時中ウオッチングしているあなただって何者なのよ、と思った。

ある夜、とうとう110番に電話して事情を説明した。ここ! ここからが「アラフォーのストーカー被害のやっかいさ」が始まるのだ。

ストーカー? それって妄想じゃないの?

電話に出た方に事情を詳細に説明した。最初は丁寧に話を聞いてくれた。

「覗いている男性の年齢はだいたい何歳くらいでしょうか」「たぶん20代。金髪で、ワンルームマンションなのでひとり暮らしだと思います」「わかりました。大変恐縮ですが、記録のためにお宅さまのお名前と年齢、ご住所とお電話番号をお伺いしてもよいでしょうか」「はい。名前は森口まこと」「はい(書き込みの音)」「年は41歳」「.........(しーん)」「あの、もしもし?」「あ、はい。41歳......と。えっと、ご家族とご一緒ですか、それともひとり暮らしですか」「一ヶ月前までは夫と暮らしていましたが、離婚して、いまはひとりでここに住んでいます」「......わかりました。えっとご住所は......」

あなた、いま、わたしの年齢で一瞬息を飲みましたよね? と突っ込みたくなるほどの間が空いたのだ。「20代の男性から覗かれているんです!」とアラフォー女性が110番。まさか「おいおい、なんかの勘違いだろう」とか、「もしかしたら願望なんじゃないの」と思ってないでしょうね! と、妙に激しい怒りを覚えた。被害妄想ではなく、明らかにそんな間だったのだ。

その証拠に、すぐ警官が我が家に来てくれることを望んで110番したのに、「今の状態ですと、単に覗かれているというだけで直接的な被害がないので、警察は動けない」、「このたぐいの相談は生活安全課が担当しているのですが、夜は電話がつながらないので、明朝に生活安全課に電話してください」と言われ、わたしの訴えはさらりと翌日の生活安全課に託されてしまったのだ。

言われるがまま翌日、生活安全課に電話して同じ話をすると「そんなときはすぐに110番してください。即行で近くの交番から警官がかけつけますから」と言われた。ここで怒り爆発。

「だから昨夜110番したんです。ところがその電話で『翌朝に生活安全課に電話するよう』と促されたから、いまこうしてお電話しているんです!」

生活安全課の人には罪がなく、昨日の110番の担当者に怒っていたのだが、つい声を荒らげてしまった。

「さようでしたか。大変申し訳ございませんでした。お宅さまのような状態では、本来ならすぐに近くの警官がお宅を訪ねるはずなのですが、こちらの不手際です。いますぐ警官を寄こします」と、そのお方は丁寧に謝ってくれた。

ほどなくして、ふたりのおまわりさんが来た。彼らがベランダに出た瞬間、彼は赤いカーテンを閉めて隠れた。「あの部屋ですね」と警官ふたりが目視し、「あの部屋は何号室に当たるか」などを無線でやりとりしていた。

そのあと「いまのところ警察が介入できる状態ではないのですが、念のためあの部屋の住人に、いまから問い合わせにいってきます」とふたりのおまわりさんは去り、そして向かいのマンションに入っていった。

心臓がバクバクした。警察が赤いカーテンの住人にコンタクトをとるのだ。逆恨みをされたらどうしよう。警察に伝えたのはいいが、そのあとのことを考えていなかったので、急に恐ろしくなった。

以来、どうやら覗くのをやめたらしく、赤いカーテンはぴっちりと閉まったままになった。逆にそのことが不気味だった。相変わらずこちらのカーテンも閉めたままだ。昼間でも薄暗い部屋で、毎日不安な気持ちで過ごした。もともと離婚で情緒不安定だったのに、より不安定になってしまい、とうとうその家を引っ越すことになった。

周囲にも傷つけられるストーカー事件

このエピソードでなにが言いたかったのかというと、「アラフォーでストーカー被害に合うと、周囲がその事実を疑心に思う......というややこしさ」があるということ。

実際に、この出来事を友人・知人に話したところ、「怖かったね」と同調してくれた人も多かったが、「若い男の子から覗かれるなんて。あなたもまんざらではなかったのでは?」なんて心無い言葉を向けられたことも多かった。わたしが「若い子にしつこくされた」というモテ自慢をした、と思われたのだ。ここがアラフォーのストーカー被害のややこしさ!

「妄想や願望じゃないの?」と思われてしまうことの屈辱感。経験した人にしかわからない失望感。ストーカーの恐怖を語っているだけなのに、それをモテ自慢と勘違いされてしまう悲しさよ。

これって、もしかしたらアラフォー特有の出来事ではなく、あらゆる世代の女性たちに言えることかもしれない。二次被害というべき傷つき方をしてしまうのが、このストーカー問題だ。110番したってすぐに来てくれやしない。やれやれ。

次回は、同じくストーカーまがいのまとわりかたをされたアラフォー女性の、意外な対処法をご紹介しようと思う。

image via Shutterstock

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