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寛容こそが生きる手立て。悲しみと再生を描く『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

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寛容こそが生きる手立て。悲しみと再生を描く『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

2017年上半期において、映画界で起きた前代未聞の出来事といえば、アカデミー賞作品賞の誤発表。その結果、良くも悪くも『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』の2作品に注目が集中してしまったのですが、その陰で新たな傑作が誕生していたことは見逃して欲しくないところ。

それこそ、悲劇から再生へと向かう人々の姿をていねいに描き、主演男優賞と脚本賞の2冠に輝いた 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。歳を重ねていくにつれて、悩みもどんどん複雑になり、ときには気持ちが落ちこんでしまうこともある大人だからこそ、いかに観るべき価値のある作品かというのがわかるはずです。

アメリカのボストン郊外で便利屋として働くリー。兄が死去したという知らせを受けて、久しぶりに故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ることになった。そこで、甥であるパトリックの後見人となったリーは、二度と帰ることはないと思っていた町で、過去の悲劇とふたたび向き合うこととなる。心を閉ざしたリーの身に起きた出来事とは一体何なのか。ついに、リーは父を失ったパトリックとともに一歩を踏み出す決心をするのだが......。

実力派俳優たちの静かな演技が心に訴える!

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まず、今回の見どころは何といっても、素晴らしい俳優陣たち。主演のケイシー・アフレックは、これまで兄ベン・アフレックの陰に隠れていたイメージですが、本作でアカデミー賞を獲得するほどの実力を発揮。当初予定されていたマット・デイモンから引き継いでの起用ではあったものの、いまとなってはケイシー以外考えられないと感じさせるほど。

さらに、脇を固めるミシェル・ウィリアムズや新星ルーカス・ヘッジズもとにかく見事。それらの熱演がこの作品により真実味を与え、まるでいまでも海の向こうで彼らが実際に生活しているのではないのかと思うくらい、その世界観に引きこまれてしまうのです。

悲劇とともに生きていくとは?

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過去のトラウマを引きずってしまうことは誰にでもあり得ることであり、そんなときに映画に救われたという経験をしたことがある人も多いはず。応援団長のように「君ならできる!」と背中を押してくれるような作品もいいけれど、何も言わずに隣でそっと背中をさすってくれるような作品こそ、心に染み入るものが大きかったりもするもの。本作は、そんな風に優しく寄り添いながら、癒えることのない傷とどう向き合いながら生きていくべきかを示してくれる道しるべのような作品です。

そして、スクリーンに広がる海辺の景色に見えるものは、まるでわたしたちの生き方そのもの。エンジンをかけて自力で前に進む船のように自らの意志で前に歩き出す人もいれば、潮に流される浮き輪のように時間に押し流されて進んでいく人もいるし、どんな波が来ても動くことができない防波堤のように、ずっと立ち止まったままの人もいるということ。そこには、悲劇を経験した人間が再生するのは決して容易ではないし、その方法には正解がないことを改めて痛感するはずです。

人が再生することの意味を知る!

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「映画だからこうなるだろう」という予想を覆すような、リーの放つあるひと言がいつまでも胸に突き刺さって離れないものの、それこそがまさにリアルな現実なのだと誰もが思い知らされずにはいられない本作。

悲劇を克服するということは、その出来事を忘れるということではなく、それを受け入れながら生きていくと決めたとき、初めて一歩を踏み出せるのかもしれません。人生においては、すべてを乗り越えられるとは限らないけれど、実際は誰もが何かしらの傷を抱えながら生きているもの。リーの姿に思わず心の傷がヒリヒリしたとしても、鑑賞後は痛み方が前と変わっていることを感じるはず。

シネマから学ぶ一言

―人が再生するのに必要なのは、悲劇を忘れることではなく、癒えない傷とどう向き合って生きていくかということ。

マンチェスター・バイ・ザ・シー

監督・脚本:ケネス・ロナーガン

出演:ケイシー・アフレック、ミシェル・ウィリアムズ、カイル・チャンドラー、ルーカス・ヘッジズ、カーラ・ヘイワードなど

2017年5月13日(土)シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー

配給:ビターズ・エンド/パルコ

© 2016 K Films Manchester LLC. All Rights Reserved.

[Manchester by the sea]

志村昌美

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