ニューヨーク、ある寒い朝のマンハッタン。ミミとココ、手編みニットのセーターを着た2匹のマルチーズは、チャイナタウンにある Amy's Hair Salon を目指してトコトコと駆けていた。2匹はこのヘアサロンオーナーの愛犬。開店とともにお客をおもてなしするのが仕事だ。

一方、ファッションの街として知られるアップタウンでは、コスチュームジュエリーの会社のオフィスで6匹のウサギがぴょんぴょん床を跳ね回っている。今やオフィスペットはマーケティングチームの隠れた一員なのだ。

ブルックリン地区ベドフォード・スタイベサント、クラバー・プレイスの駐車場ビルの雑然としたオフィスで電話のベルが鳴った。ただしこれ、実は電話じゃない。ヨウム(大型インコ)のブラックスの物真似だ。コンゴウインコのローラや駐車場に住み着いた雑種犬まで、誰にでも話しかけるおしゃべり好きである。

ニューヨークではたくさんの動物が働いている。老人ホームのセラピードッグ、空港でスーツケースを嗅ぎ回る爆発物探知犬、近所のデリでは、ネズミはいないかと猫が日々パトロールをしている。もちろん、セントラルパークで馬車を引く馬たちのことも忘れちゃいけない。そして他にもまだまだ数え切れないほどのオフィスペットが、職場を居心地のいい場所にするために活躍しているのだ。

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カットの間、お客が犬を抱っこしているのはAmy's Hair Salonでは当たり前の光景だ。(Sam Hodgson/The New York Times)

ストレートパーマなど時間がかかるメニューの時も、Amy's Hair Salon なら犬と遊んでいる間にあっという間に時間が経つ。「お客さんはワンコと遊んだり、可愛がったりしてる。だから退屈なんてしないの」とオーナーのエイミー・オイ。とある日の午後も、髪にハイライトを入れるためにサロンを訪れた客は、施術の間ずっと2匹の犬を優しく撫で続けていた。

数年前になるが、コスチュームジュエリー会社 Sequin が、『ヴォーグ』のエディターを西39番街にあるショールームに招いた時のこと。ミーティングはピンと張りつめた雰囲気だった。『ヴォーグ』のエディターが一言も発しないためだ。

「感じの良い人たちでした。でも無反応だったんです」。Sequin のオーナー、キム・ドライヤーは語る。「そうしたら、ウサギがぴょんと部屋を横切って。その瞬間、場が一気に和んで、冷ややかで重苦しいムードが一変しました」。会社を救ったのは身体が大きくて真っ黒なウサギのグリズリー。新作ジュエリーが好意的な記事で紹介されたのはいうまでもない。

最近ではイヤリングやネックレスが並ぶディスプレイの陰で、黒ウサギのルーカスがケールの葉っぱをかじっている。そして階下では、ジュエリーサンプルを作る職人が退社のタイムレコーダーを押す傍らで、4匹の猫がずらりと並び、頭をコチョコチョ愛撫してもらう順番を待っているのが日課という。「我が社の就職面接の最初の質問は、『ペットは大丈夫?』 なんですよ」とオーナーは笑う。

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ビジネスミーティングの緊張をもほぐしてくれるオフィスペット。(Sam Hodgson/The New York Times)

歯科医のDr. カルロス・J・ウエルタが、行き場のないところを引き取った犬のルナを、週のうちの数日、歯科クリニックに連れてこようと思ったのは、彼女を家に独りで残すのがしのびなかったからだ。だが、ルナは不安な患者を慰める才能を瞬く間に開花させた。「何人かの患者は、ルナがいる日じゃないと予約しないんだ」と、Dr.ウエルタは話す。

ある木曜日、カイル・ラッシュはルナと一緒に診察台に座った。スパニエルが混ざった3歳の雑種は彼の膝の上にのっている。ドクターが診察台を水平に倒すと、ルナはラッシュの足の上に手足を伸ばして横たわった。

「時々緊張してしまうんだ」とラッシュ。「ルナを撫でていると落ち着くよ」。歯科ドリルが何かに当たったらしい。金属音が変わった。ラッシュは頼るかのようにルナのお尻のあたりに手を差し伸べた。

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大の大人でも歯医者は苦手。そんな時は犬のルナがそばにいてくれる。(Sam Hodgson/The New York Times)

ブルックリンの義肢装具店 Allied Orthopedics でも、不安のあまり神経質になる患者は少なくない。そこでケヅメリクガメのゼウスの出番だ。「ゼウスが患者さんのソックスを持って行っちゃう様子を見て、みんな笑っていたよ」とオーナーのロバート・コーエンは話す。

ゼウスは30年以上長生きをして、80ポンド(約36kg)の重さになるまで大きくなった。時々トイレの洗面台の下に隠れていて、何も気づかずに入った人をびっくりさせたという。Allied Orthopedicsは、今ではクイーンズ地区オゾン・パークにあり、リクガメがいない状態が5年続いている。だが、コーエンの娘さんが子ガメを育てているそうだから、ゼウスの後を継いでファミリービジネスに加わることになるかもしれない。コーエンも頷いた。「いつの日か、きっとね」。

© 2017 The New York Times News Service

[原文:The Dog in the Dentist's Chair, and Other Workplace/執筆:Andy Newman]

(抄訳:十河亜矢子)