幼少からのクラシックから一転、キューバでラテン音楽を学び、ジャンルを越えた異色の魅力を放つバイオリニストSayaka

彼女の個性をさらに印象づけたのは、ロックとクラシックを融合させたコンサート「INNOVATION CLASSICS 2017」でした。世界的著名な指揮者・西本智実氏と大御所ギタリスト・高見沢俊彦氏によるこの公演で、両者の熱い信頼を得てソロパートを抜擢されたのがSayakaです。オーケストラの一員として、5月には藤井フミヤ氏のライブツアー参加を終え、個人では様々なジャンルのライブをこなす、彼女のこれまでの軌跡とその魅力を紐解いてみましょう。

豊かな感性がたぐり寄せた、ラテンの魅力とその決意

カリブ海に浮かぶ島、キューバ。1998年、Sayakaが単身で旅に出た先は、青い海と音楽に溢れた楽園とも呼べる場所でした。「世界の音楽を知りたい」とラテン音楽に出会い、この旅を機に、改めて2001年音楽修業のためキューバへ渡るのです。

Sayaka:独特の音楽を生み出したキューバは、きっと素敵に違いない。まずは目で確かめたいと、複雑なリズムを承知で旅に出ました。実際に行ってみると「人々の喜怒哀楽を表現するツールが音楽であり、日常生活にどっぷりと音楽が絡む情熱的な国」という音楽家としてこの上なく幸せな環境でした。アフリカンルーツを持つ人々の身体能力の高さが生み出すグルーブと、欧州で研鑽された甘美な旋律の融合......。これを知らずして音楽はできないと感じ、本格的にこの地で学ぶことを決めました。

キューバの魅力を語るうえでまず思い浮かぶのは、伝統音楽"ソン"をベースに生まれたサルサでしょう。灼熱の日差し、レトロな旧市街には、ラムと葉巻の香りに紛れ、音楽と人々が共存する熱気が広がります。

「ない」を「ある」に変えた、キューバの暮らし

Sayaka:朝はキューバ音楽の師匠兼ホストマザーの淹れるコーヒーと共に彼女のおしゃべり(ほぼ昔の恋愛話)に付き合い、ひたすらレッスン、夜はライブ三昧でたまにセッションしたり。(キューバは)携帯電話もなく、交通の便も悪くひとつのことを達成するのに時間がかかるんですよ。延々と歩いたり、家の電話の前で1時間粘ったり。その代わり短時間で目標を定めることと達成への近道をこのとき学んだかも。何より、生活がシンプルだから思考もシンプル。「純粋に好きなものに迷いなく突き進んで良い」と従った結果、キューバ人の思いやりや愛を受け止める毎日でした。

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これらの経験がもたらしたのは、数々のビッグアーティストとの国内外での競演。

「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」の古参メンバー・オマーラらとのセッション、2004年、シンセサイザー奏者ヤニーのワールドライブツアーで、Sayakaはアジア人初のソリストに抜擢されます。50回に及ぶ本公演では、全世界の名手とのセッションやソロを含む圧倒的な演奏で大観衆を魅了しました。

海外諸国の活動とともに、国内では気鋭の写真家・操上和美氏の映画『ゼラチンシルバーLOVE』(2009年)で、"謎のバイオリニスト"役として出演も果たし、洗練美を閉じ込めた操上氏の映像空間にアーティストとして音も重ね、彼女のイマジネーションが溶け込みました。常に切磋琢磨が求められる音楽家ゆえの制作のジレンマもあるかと思いきや、ライブは情熱的、普段はグラスを傾けると、気さくながら思慮深い物腰と笑顔で周囲を和ませます。

Sayaka:音楽さえあれば! という人生にあまり固執せず、作曲や演奏で体力を消耗しても本当に心地良く楽しいから続けられるし、それが次の原動力になるのかな。職業的に不安もありますが、何より物も環境も整った日本で美味しいものを毎日食べられるのは幸運なことですよね。夢や野望はあれど、まずその一日を大事にすることを目標としています。

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音を奏でることでみた、無邪気な大人たち

とにかくどこの国に行っても、媚びず背伸びせず今の「音」を奏でるのが彼女の願いだという。実際本人のライブに足を踏み入れると、大人たちが世の中仕様のよろいを脱ぎ捨て、全身で音楽を楽しむ姿が見受けられます。彼女によると、年を重ねても常に男性から女として扱われるキューバの女性は常に可愛らしく、一方自由奔放で情熱的なのが、キューバの男性の姿だとか。

Sayaka:これは願望ですが、いくつになってもキューバのように女性として扱ってほしい。女性であるゆえの難しさが社会にある中で、女性特有の臨機応変さで乗り切ることもできる。時に自分からその領域を超えて欲しい物を求めることもアリです。

多様な異文化と音楽が磨いた、人として、女性としての在り方

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日本人の自分の意見を言わない性質は、時に思いやりや優しさでもあるけれど、感情を素直に表情や声に出すと、周囲に良い連鎖反応が生まれます。思い通りにいかないことに固執せず、国籍や文化の違いを超え尊重しあうと、刺激や影響を与え合い、その一瞬が最高の音を生み出した時の高揚感は鳥肌ものの感動があります。

派手なパフォーマンスやメイクに頼らない、素の感情を表現する姿勢と、確固たる核を持ち、他人にも柔軟であること。そのバランスが、しなやかな艶として彼女の音と人なりに彩りを与え、他のアーティストにも国境を越えて支持されるのです。7月には2年半ぶりとなるキューバへの渡航を予定し、しばし里帰りのような気分だとか。新しいエネルギーを取り込み一層魅力的な音色で、ラテンの大地へと誘うのでしょう。

Sayaka バイオリニスト

クラシック音楽家の両親の元、6歳よりバイオリンを始める。'95年全日本学生音楽コンクール入選、'96年桐朋学園大学に入学。クラシック一筋だった音楽活動から徐々に幅を広げ、ジャズ、ポップス、サルサ、ケルトなど枠を超え通算6枚の自身のアルバムをリリース。
サイト:http://www.sayaka-violin.com

ライブ情報:6月17日(土)六本木アルフィー
※毎月、上記アルフィーにてライブ演奏を実施中