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幸せは自分次第。エレノア・コッポラ最新作『ボンジュール、アン』

幸せは自分次第。エレノア・コッポラ最新作『ボンジュール、アン』

2017年5月に開催された第70回カンヌ映画祭は、ソフィア・コッポラが映画『ザ・ビガイルド(原題)/The Beguiled』にて監督賞を受賞したニュースが記憶に新しいですよね。カンヌ映画祭史上では56年ぶり、2人目の女性監督の受賞だったのだとか。

ソフィアが映画界の巨匠フランシス・フォード・コッポラの娘であることはよく知られていますが、今度はソフィアの母でありコッポラ監督の妻であるエレノア・コッポラが、80歳にして初めて長編映画を撮りました。

それが、7月7日に公開されるダイアン・レイン主演のロマンチックコメディ『ボンジュール、アン』

今回は、ダイアン・レインとエレノア・コッポラ監督に、本作の見どころと女性の生き方について語ってもらいました。

一瞬一瞬が人生を作るから、幸せは自分で決める

「人生で立ち止まって、今この瞬間を生きることを観ている人に感じてほしかったのです。でも、ひょっとしたら、この映画を作ることによって自分自身に語りかけていたのかもしれません」と、筆者の目をジッと見つめて話すエレノア監督の真剣な瞳の奥には、優しい光が。

「人生の一瞬一瞬に心を留めたい。一瞬一瞬が人生を紡いでいるのだから......。わたしの人生はもう終わりに近づいているので、そういう想いがますます強くなっているのかもしれないわ」。

本作は、子どもが巣立ち、仕事もリタイアしたアン(ダイアン・レイン)が主人公。ひょんなことから夫マイケル(アレック・ボールドウィン)のビジネスパートナーであるフランス人男性のジャック(アルドー)と2人きりで南フランスを車で巡る旅に出る、というロードムービーです。

ところが、目的地では夫が待っているというのに、ジャックはロマンチックなところに寄り道ばかりしてアンを苛立たせます。しかし、魅力的で強引なジャックと一緒に旅するうちに、アンは自分の人生に欠けているなにかに気づき始めます。

「ジャックとの旅で、アンは、自分には選択があるということに気づいたの。自分の幸せは自分自身で選ばなければいけない。フランス人男性でもない、夫でもない、自分が責任をもって人生の選択をしていかなくてはいけない、ということをわたしは伝えたかったのよ」(エレノア監督)

いくつになっても恐れや不安は心に巣くうもの

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the photographer Eric Caro

「ああ、早く、エレノアのようにリスクを恐れずに情熱の赴くままに生きることができる女性になりたいわね」と、エレノア監督のほうを笑顔で茶目っ気たっぷりに見るダイアン。

取材中、女性カメラマンには「あなた、きれい! 写真を撮られる側になるべきよ!」とか、筆者には「とても美しくて詩的な質問をしてくれてありがとう」などと話しかけてくれた彼女はとてもフレンドリー。

スクリーンで見るよりもびっくりするほど華奢で目鼻立ちがくっきり。その優雅な立ち振る舞いは若さを凌駕する品格のある美しさでした。

「人生で大切なことはその時々で変わっていくけれど、わたしのなかにはまだまだ恐れや不安でいっぱいの子どもっぽい女性がいるの。

ただ、恐れや不安は心にあっても、歳をとっていくうちにリスクを恐れなくなってきたと思う。それが歳をとることの醍醐味ね。25歳の女性ならこうは思えないはず......ああ、(とエレノア監督のほうを向いて)ソフィアは25歳にしてもうすべてを手にしたわね(笑)」。

すると、「あら、ソフィアはもう25歳じゃないわよ(ソフィア・コッポラは46歳)」と真面目に返すエレノア監督。2人は本当に仲睦まじく、撮影中も話し込んでカメラの存在もすっかり忘れるほど!

抑圧され、フラストレーションを感じていた

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the photographer Eric Caro

フランシス・フォード・コッポラ監督は映画を撮影するときには、ヨーロッパであろうとアジアであろうと、かならず妻と子どもをロケ地に伴ったといいます。それはわくわくする冒険でもありましたが、エレノアや子どもたちとっては大変な重荷だったそう。

自身もアーティストである彼女は、よき妻、よき母という役割を果たすために自分のアート活動に充てる時間がなくなってしまったことに長年悩んできたと言います。

「わたしの時代では、女性は夫のために心地よい家庭を作り、子どもを育てるということが当たり前でした。自分のクリエイティビティが抑圧されていることに、ずっとフラストレーションを感じてきたの

それにくらべてダイアンは、6歳から役者として働き、子どもを育てながら自立した人生を築いてきたわ。ダイアンのことは心から尊敬しているのよ」(エレノア監督)

自分自身についてはびっくりするほど控えめなエレノア監督ですが、子どもたちが成人してからは、夫フランシスが監督した『地獄の黙示録』(1979年)のメイキング・ドキュメンタリー『ハート・オブ・ダークネス/コッポラの黙示録』(1991年)』を共同で監督してエミー賞を受賞したり、エッセイを出版したり、ビジュアルアーティストとして展示会を開いたりなど、精力的に活動してきました。

自分の可能性に気づいて "見せる"べき

「以前、エレノアが抑圧されてきたクリエイティビティを解放するひとつの手段としてアート活動に励んだという話を聞いて、とても心に響いたの。自分が情熱をもつことは、たとえそれが趣味であっても、本当に大切だと思う。

この作品では、写真を撮るのが大好きなアンは、自分が撮った写真をジャック見せるのを恥ずかしがるシーンがあります。でも、写真を撮るということは彼女のアイデンティティであり、心の主張でもあるの。

だからこそ、自分の価値や可能性に気づいて、それを誰かに見せるということは、とても大事なことだと思うわ」(ダイアン)

絵を描くのが趣味だというダイアン。ただ、彼女自身は家族や友人以外に自分の絵を見せることはしないという。

「だって、わたしの仕事は常に批評されるでしょ。だから絵だけは誰にも批評されたくないのよ」

いつも完璧な準備をする女優、ダイアン・レイン

「プロフェッショナルで経験豊富で完璧な役者。監督からの指示は必要ないし、いつも準備万端で、ひとつかふたつのテイクでシーンが決まるのよ」とダイアンをベタ褒めするエレノア監督。

ダイアンが照れて「ちょっと褒めすぎよ」なんて言うと、エレノア監督はダイアンのカーディガンの袖をひっぱりながら「わたしはドキュメンタリー監督をはじめて以来、役者に嘘を言ったことはないわ。言うことは全部本当のことよ」と彼女の耳にこっそりと囁いていました。そんな様子は、母が娘に話しているようで微笑ましい。

エミー賞を受賞しているのにも関わらず、監督クラスや演技クラスを受講して本作に備え、映画の資金集めのために6年間も奔走したエレノア監督。夫や娘と絶対に比較されるのがわかっていても恐れずに映画を作り、ありのままの自分を世界に見せてくれました。そして、そんな想いをパーフェクトに理解して表現したダイアン。

2人の心が通じ合ってつくり上げられた『ボンジュール、アン』からは、人生の行き先ばかりに目を向けるのではなく、たまには立ち止まって一瞬一瞬を楽しむことの大切さを教えられました。

ボンジュール、アン

公開表記:7月7日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他にて全国ロードショー配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES

取材場所:星のや東京メイク:SHIGE(HK PRODUCTIONS)、KIE KIYOHARA(beauty direction)

此花さくや

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