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あのベルの音、匂い。テレフォンボックスがNYに復活 [The New York Times]

The New York Times

あのベルの音、匂い。テレフォンボックスがNYに復活 [The New York Times]

たとえニューヨークのタイムズスクエアの喧騒の中でも、7〜9分ごとに鳴り響く電話のベルを聞き逃すことはないはずだ。上着のポケットやバッグの中の携帯の呼び出し音とは違う響き。もちろん空耳なんかじゃない。

通行人が思わず振り返ってしまう、その音の正体は、なんと懐かしの公衆電話ボックス。そう、過ぎ去った時代の遺物であり、今や映画の中ぐらいでしかお目にかかれない、あの電話ボックスである。45番街と47番街に挟まれたダフィー広場に還ってきた3台の電話ボックスが、再び公共の場で人々に使用されることになった。ある特別な意味でだが......。

タイムズスクエアにアートが出現

街角の公衆電話をWi-Fiスポットに切り替えるニューヨーク市の方針により撤去された電話ボックスを呼び戻したのは、タイムズスクエア・アライアンスによる公共アートプロジェクト。これは、アフガニスタン系アメリカ人アーティスト、アマン・モジャディディ氏の『ある場所で(Once Upon a Place)』と題するインスタレーションであり、9月5日までの期間限定で「タイムズスクエア・アート」イベントに出品された作品なのだ。

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インスタレーションは、ニューヨーク市民や観光客が数多く訪れるダフィー広場にある。2017年6月28日ニューヨーク・タイムズスクエアで撮影(Vincent Tullo / The New York Times)

電話ボックス内の電話の受話器を取ると、アメリカに移民としてやってきた人々が肉声で語る、属す居場所を求めたさすらいの軌跡ともいうべき身の上話が聞こえてくる。まるで、電話の向こうに誰かがいるかのように。

「(自らを語る)物語と電話ボックスという設定は、分かち難く結びついて生まれました」と、モジャディディ氏は話す。「電話ボックスが撤去され、この世からなくなってしまったことは、ずっと、強いインパクトを持って私の心にありました。携帯が普及する以前はしょっちゅう利用していたので、電話ボックスが街角から消えていくのを眺めながら、公衆電話を通じて話された全ての物語について思いをめぐらせたのです」

聞こえてくるのは移民たちの物語

当初はニューヨーク市内各所に電話ボックスを配置するつもりだったモジャディディ氏だが、最終的な展示場所は象徴的かつ実用的なところとなった。

「とても目に付きやすくインターナショナルな場所であるタイムズスクエアは、コンセプトにぴったりでした」というモジャディディ氏は、この作品が、聴き手が自分自身の生まれを振り返ったり、移民に対するステレオタイプな見方を変えるきっかけになることを願っている。「移民の問題は非常に政治的になってきていますが、世界的にみても多くの大都市は、移民に破壊されるというよりも、移民によって成長したのです」

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落書きもリアルなガラスの向こうに広がるのは街の風景。2017年6月28日ニューヨーク・タイムズスクエアで撮影(Vincent Tullo / The New York Times)

モジャディディ氏と彼のスタッフは、ブルックリン海軍工廠で2ヶ月かけて電話ボックスを再生した。ドアがきちんと閉まるように修理し、電話機に内蔵された物語と語り手の紹介ガイドを電話帳に見立てて制作。それを支える装置やアクリルガラスのドーム型の天井のほか、かつての姿を再現すべく入念に小物を取り付けた。電話ボックスという空間が持つ親密さを強調するため、乳白色のガラスの採用も考えたが、結局「ゴチャゴチャして賑やかな広場の景観に逆らわないこと」を選び、落書きもそのままの透明ガラスにしておくと決めた。

電話機本体の中身はオーディオ装置にと変えられ、ニューヨークのあちこちで数ヶ月にわたり採取した70の物語が収められている。

移民によって成長した街を伝えたい

モジャディディ氏によると、昨今の政治情勢に加え、トランプ政権による入国禁止令への懸念が移民の間に広がっているため、身の上話の聞き取りには困難を伴ったという(6月、連邦最高裁が大統領令の条件付き執行を認め、秋には最終判断が下される予定)。

「私たちがやろうとしていることを、みんなとても疑わしく思い、不信感を持っていたため、ほとんどの人に断られました」とモジャディディ氏は語り、大統領選終了後、参加協力者の数がさらに減ったと付け加えた。疑念を払うため、移民コミュニティの文化センターを会場に、人々が安心できる環境で生い立ちを話せるイベントを開催するなど奮闘した。

その結果、チベットやナイジェリアを含む、幅広い国と地域出身のニューヨーク市民が様々な言語で語る、2分から15分の長さの多彩な物語を集めることができたのだ。

7月4日、タイムズスクエアを訪れた人々は一様に足を止め、電話ボックスをしげしげと眺めたり、自撮りに余念がなかった。

ニュージャージー州から来たジョナサン・バーリエントスさんはこう話す。「こういうものはとんと見られなくなったからね。思いがけず楽しませてもらったよ」

© 2017 The New York Times News Service

[原文:Phone Booths Are Back in Times Square. No Quarters Required. / 執筆:Tamara Best]

(翻訳:十河亜矢子)

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