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漫画家ヤマザキマリさんが語る「アートという言葉が敷居を高くする」

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漫画家ヤマザキマリさんが語る「アートという言葉が敷居を高くする」

7月7日、コンテンポラリーアート専門ギャラリー「モンテカルロギャラリー」のオープン記念トークショーに現れたのは、漫画家・文筆家のヤマザキマリさん。確かな画力とユーモアたっぷりな視点で、日本と古代ローマの入浴文化をつづった漫画『テルマエ・ロマエ』の作者です。

アーティストでインフルエンサーのルイ・ニコラ・ダーボンさんとともに、アートへの想いや楽しみ方を語ってくれました。

アートは、なぜ日本の日常生活に根付かないのか?

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ーー「モンテカルロギャラリー」の印象は?

ヤマザキ(敬称略):とてもシンプルで黒と白を基調にした素晴らしいギャラリーだとルイから聞いていました。すごく大きな絵を飾っても説得力がある、体力のあるスペースですね。これからどんなおもしろい絵が飾られていくのか楽しみです。

ダーボン(敬称略):世界中のあらゆるギャラリーの、素晴らしいところだけをギュッと凝縮したような空間。それでいて、パリの高級ブランド店を思い起こさせるエレガントさも兼ね備えていて、非常に驚きました。

ーー日本ではギャラリーは限られた人しか訪れない印象がありますが。

ヤマザキ:日本では、ギャラリーが市民権をなぜ得られないのだろうってよく考えるのですが、たぶん、日本では自分の家に人を招く日常的な習慣がないからじゃないでしょうか? ごく普通のお家で1週間のうちに何度も人を呼ぶ習慣って日本にはないですよね?

でも、ヨーロッパの人は家に人をしょっちゅう招いているんです。だから、自分の家は人に見せるためのものでもあるんです。飾る絵、家具、調度品もその人の個性やセンスが問われます。

買うつもりがなくても散歩に出るときなどにギャラリーに寄るんですよ。そして、『この絵を家に飾ったら素敵』『あの絵がどうしても忘れられない。やっぱり買いに行こう』となるときがある。ですから、ヨーロッパの街のギャラリーは非常に生活に密着したものなんです。

SNSがアーティストと鑑賞者の距離を近くする

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シャネルやエルメスなどラグジュアリーブランドをモチーフとした作品が多いダーボンさん。ラグジュアリーハウスで働いた自身の経験から、ラグジュアリーな表から見ているだけでは決して見えない闇の部分も作品で表現したかったのかもしれません。

ダーボン:ギャラリーとは、本来は気軽に入って日常から解放される時間を楽しむためのものですよね。確かに、ミュージアムや大きなギャラリーは敷居が高く感じるときがあるかもしれない。ただ、SNSの普及でアートの敷居は低くなってきているような気がします。

例えば、インスタグラムはとてもビジュアル的なプラットフォームなので、アーティストが作品を見せやすい。そして、アーティストに誰もが直接語りかけられます。

今回、「モンテカルロギャラリー」のオープニングに展示する作品を少しずつインスタグラムに投稿したのですが、『この作品好きです』とか『展覧会に行くからね』とコメントして下さった方がたくさんいらっしゃって、SNS上で交流することができました。そういう意味で、SNSはアーティストと鑑賞者の距離を縮めてくれると思います。

作品に対する「想い」を想像してみる

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ーーギャラリーに入ったら、まずどこに目を留めますか?

ヤマザキ:もちろんギャラリーの全体的なアートを見ますが、ギャラリーのオーナーがその作品に対する思い入れをどのように演出しているか、気になりますね。ただ飾ってあるだけではなくて、その思い入れが表現された空間に引き込まれます。

ダーボン:新しい作品を見たときのエモーション。一方で、見慣れた作品でもその時々によって異なるエモーションが芽生えるときもあります。ヤマザキさんがおっしゃったように、ギャラリーから感じる想像力を通して色々なエモーションをかき立てるアートは、やはり日常生活に欠かせないものです。

アートという言葉が敷居を高くする

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ーーライフスタイルにアートをどのように取り入れればよいでしょう?

ヤマザキ:アートという言葉が敷居を高くすると思うんです。私は油絵を辞めて今は漫画を描いていますが、漫画だったらみんな気軽に手にとりますよね。それと同じようにアートと付き合えばよいのでは? 漫画もアートも作品から訴えかけてくるものを感じる同じツールなんです。

あなたが言葉にしたいことを絵に表してくれるモノがあるかもしれない、そういったモノを探しにギャラリーへ気軽に行く。高いカバンを買う代わりに、よい絵を1つ買うとか。気に入る絵を見つけて自分の部屋に飾る。自分の空間を好きになる、自分の世界に奥行きと広さを与えるのがアートだと思います。

ダーボン:アートはみんなのものであってほしいと思っています。1日中頑張って働いて帰宅したときに、自分のベッドルームに好きなアートがあったらハッピーな場所になるのではないでしょうか? バッグを1つ買う予算のなかで買えるリミテッドエディション(原画ではなくプリントなど)など、手に入れやすいものからアートを楽しむのもよいと思います。

漫画家は職人みたいなもの

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ーーフィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史と油絵を専攻されてから漫画家の現在まで、ヤマザキさんに起こったアートや表現力における変化は?

ヤマザキ:私は画家を志してイタリアに行ったのですが、若いときはアートというのは崇高なものだと思っていました。しかし、漫画家になってわかったのですが、アートは経済のバックアップがないと動かない。

漫画家になってから出版社の巨大な経済システムに飲まれて理解したのですが......どんなにしんどくても『描け、描け』って言われて......(笑)、でも、描いちゃうんですよね。この感覚ってルネサンスの芸術家が感じていたような気持ちじゃないのかな。芸術家というよりも職人的な意識で捉えなければいけないな、と。

若いときは自分の主張を表現していましたが、大人になると様々な経験を通して『こういうことをみんな知りたいんじゃないか』『お風呂につかっているじいさんの顔を見たらみんな癒されるんじゃないか』とか、そういう方向性のサービス精神も身についたように思います。

ギャラリーやアートをあがめるのではなくて、自分の空間を好きになる手段として気楽に楽しむ余裕こそが大人に許されたラグジュアリーなのかもしれません。

モンテカルロギャラリー

住所:東京都港区赤坂9-6-26フォンテ六本木1階電話:03-6804-1410営業時間:11時~20時(7月17日以外の月曜日は定休)定休日:月曜日(祝日の場合営業)

[オフィシャルHP,オフィシャルfacebook,オフィシャルInstagram]

ヤマザキマリ

漫画家。1984年に渡伊、フィレンツェの国立アカデミア美術学院入学。美術史・油絵を専攻。1997年に漫画家としてデビュー。2010年古代ローマを舞台にした漫画「テルマエ・ロマエ」で第3回漫画大賞受賞。第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。世界各国で翻訳出版される。著書に「ルミとマヤとその周辺」「ジャコモ・フォスカリ」等。文筆作品では、「テルマエ戦記」「望遠ニッポン見聞録」「男性論」「国境のない生き方」「偏愛ルネサンス美術論」等。現在は、『ハツキス』で「スティーブ・ジョブズ」、『新潮45』で「プリニウス」を(とり・みきと共著)、 「Gli Artigiani ルネッサンス画家職人伝」連載中。平成 27 年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。

ルイ・ニコラ・ダーボン

フランス・パリ出身。現在はロンドンのノッティングヒルに拠点を置くアーティスト。メンズファッションとライフスタイルのインフルエンサーであり、芸術とファッションという2つのジャンルを融合し、世界中の紳士たちに影響を与え続けている。現在18万のフォロワーを持ち、インスタグラムで最もスタイリッシュな男性と評価されており、ファッショニスタという一面もある一方、ポップな肖像画やラグジュアリーブランドをモチーフにした作品を描くアーティストとしても活躍。アートフェアの頂点であるアートバーゼル 2016香港に参加し、イギリス、アメリカ、モロッコ、フランス、スイスにて個展やグループ展を行うなど、多方面にわたり精力的に活動中。

此花さくや

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