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没後20年、王子たちが語る母としてのダイアナ妃 [The New York Times]

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没後20年、王子たちが語る母としてのダイアナ妃 [The New York Times]

20年前、1997年8月31日の朝は、パリでダイアナ妃が事故死するという衝撃的なニュースで明けた。享年36歳だった。以来、イギリス王室に嫁いだはにかみ屋の若い女性が世界的なセレブとなり、やがて、不慮の死を遂げる生涯の物語は、数百本にのぼる映画やドキュメンタリーに取り上げられている。

だが、先頃イギリスの民放テレビ局ITVが制作したドキュメンタリー『私たちの母、ダイアナ:その人生とレガシー(Diana, Our Mother: Her Life and Legacy)』は、これまでにないアプローチで注目されている。ダイアナ妃の2人の息子、ウィリアム王子ハリー王子を全面的にフューチャーし、彼らの視点と言葉でダイアナ妃の活動を振り返りながら、子供時代の思い出などを語るものだからだ。

制作プロデューサーのニコラス・ケントと監督のアシュリー・ゲシングは、2016年にドキュメンタリー『我らが女王、90歳(Our Queen at 90)』を作ったコンビ。2人の王子、とりわけハリー王子はメディアに対して率直に発言することで知られているが、ウィリアム王子は7月にケンジントン・パレスで開かれた試写会の席で、「私たちは、このような形で母について深く語ったことはありませんでした。おそらく今後、こうした機会は二度とないでしょう」と話し、このドキュメンタリーで、それまで秘めていた心の内を明かしたことを認めている。

王子たちの視点から描く母ダイアナ妃

『私たちの母、ダイアナ:その人生とレガシー』の構想は『我らが女王、90歳』を撮影中に芽生えたと、ロンドンの事務所でのインタビューでケントは答えた。制作過程でウィリアム王子、ハリー王子との良い関係が築けたのを受け、2人を中心に据えた作品を撮りたいと王室に申し入れたのだという。

「どういうものにしていくか、最初は我々にもわからなかった」とゲシング。「でも、王子と様々な会話を交わしていくうちに、彼らが、ダイアナ妃が関わっていたいくつものチャリティー活動について取り上げたいと思っているのがみえてきたんだ。ダイアナ妃が亡くなってちょうど20年が経とうとしている今、タイミング的にもぴったりだと考えた」

王子たちは撮影に同意。最近見つかったばかりの、息子たちのためにダイアナ妃自身が編集した写真アルバムを紹介することを申し出た。ドキュメンタリーは、35歳になったウィリアム王子と、32歳のハリー王子が、妊娠中でお腹の大きなダイアナ妃が小さな長男を抱いている写真を眺めるところから始まる。

「まさかと思うだろうけど、この写真には僕ら二人とも写っているよ」とハリー王子に話しかけるウィリアム王子。カメラはハリー王子を捉え、「そうかもしれないけど、この時点じゃ、僕というには、まだちょっと小さすぎるんじゃないかな。ちっぽけな胎児だもんね」と返すのが映しだされる。

これは、2人の王子の違いを明確に示すシーンだ。

思い出を包みなく話しつつも、ウィリアム王子はどこか構えており慎重。王位継承順位2位という立場にふさわしい配慮を学ばざるを得なかったせいかもしれない。それに比べて、ハリー王子はよりあけっぴろげにみえる。(近年、ハリー王子は、母の死のトラウマと対峙するカウンセリングを28歳になるまで受けなかったことへの後悔をおおやけにしている)

共感をよぶ愛と思い出の物語

ゲシングはこう語る。「この作品は愛と記憶についての物語で、王室が題材のドキュメンタリーとしては異質だ。普通はもっとかしこまったものだからね。ここには、悲しみと喜び、そして喪失が語られている。とても私的である一方で、観る人が王子たちの思い出話に深く共感できる普遍性も合わせもっている」

また、撮影がNGとなる場面もなく、編集に関して事前に王室の承認を取るよう要求もなかったとケントは明かす。(王子たちは自分たちの裁量の範囲をよく理解しているし、彼らの目を通して描かれるダイアナ妃像は愛情に満ちており、とくに調整する必要がなかったともいえる)

作品は人々へのインタビューの合間にパーソナルな映像を挟みながら進行し、ダイアナ妃の人生をスケッチ風に軽くなぞるような仕立てで、由緒あるスペンサー家の伯爵令嬢として生まれた子供時代のホームムービーや、愛らしくシャイな少女の頃の写真が、その当時の友人たちが語るエピソードとともに紹介される。

「家族や友人による内輪の話という雰囲気を大切にしたかったから、みんなが予期しているある種の人々には、あえて取材しなかった」とケントはいう。ゲシングも「伝記作家も、首相も、王室問題の専門家も出てこない。ダイアナ妃をよく知り、愛していた人たちだけが登場する」と付け加えた。

そして、ダイアナ妃をめぐるメディアの狂騒や、ダイアナ妃とチャールズ皇太子双方の不倫問題、テレビで放映され話題となった告白インタビュー、それに続く離婚など、スキャンダルの大半は無視されている。

ただ、王子たちは父母の間を行き来するために費やされた多くの移動時間を振り返り、結局、どちらとも十分に過ごすことができなかった悲しみを、抑えた口調で語っている。このドキュメンタリーで最も心にしみるのは、パリに滞在するダイアナ妃からかかってきた最後の電話について、王子たちが話し合う場面だろう。

電話の後まもなく、パパラッチを振り切ろうとした車の事故によりダイアナ妃は亡くなってしまう。「大地震が起きたようだった。家庭も、人生も、何もかもが激しく揺るがされた」と、母の死を知った時の気持ちをウィリアム王子は表現している。

息子たちにダイアナ妃が遺したもの

ダイアナ妃についてはすでにたくさんのドキュメンタリーが制作されているが、ゲシングとケントは、彼らの作品が包括的である義務はなく、決定版である必要もないという。(客観的で醒めた見方の『ダイアナ:クイーン・オブ・ハーツ(Diana: Queen of Hearts)』や、独特の視点で一歩踏み込んだ『陰謀(Conspiracy)』など、さまざまな映像作品がある)

「制作する上で基準にしたのは、十年くらいのちに、王子たちが自分の子供たちに見せられる作品にしようということだった」とケントは話す。

ドキュメンタリーの最後のパートは、ホームレスやAIDS患者、地雷被害者を支援するダイアナ妃のチャリティー活動に焦点を当てており、王子たちがその精神を引き継いで実際に活動している姿を映しだす。

彼らはホームレスのシェルターを訪問し、患者の遺族を慰める。王子たちが会った地雷で足を失った2人のボスニア人男性は、死去の数週間前にダイアナ妃が慰問したのとまさに同じ人物だ。

さらに、ダイアナ妃が残したもう一つの大きな遺産も浮かび上がってくる。それは、ティナ・ブラウンが2007年に刊行した伝記『ダイアナクロニクル:伝説のプリンセス最後の真実(The Diana Chronicles)』のなかで、「人々を広く受け入れる姿勢が持つ力への理解」と呼んだ、ダイアナ妃の類い稀な能力のこと。

王室の若い世代は、祖父母のように雲の上の存在でいるやり方は、メディアの新時代において通用しないことを重々承知している。

人々と交わるとき、母のダイアナ妃とそっくりな態度や振る舞いをみせる王子たちの姿は、尋常ではない気さえしてくるとゲシングは話す。「格式張らず、個人としての人となりを感じさせ、ちょっとしたユーモアがある。ダイアナ妃以前の王室では考えられないスタイルだ」

© 2017 The New York Times News Service[Another Look at Princess Diana, With a Notable Difference/執筆:Roslyn Sulcas](翻訳:十河亜矢子)

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