イギリスの実業家でヴァージン・グループ創始者・会長であるリチャード・ブランソン氏が、成功に裏づけされた大胆かつ自由なビジネス哲学を語ります。

4ドルで40cm近いレシートが無駄に

先日米国に行った時、歯磨き粉を買うためにドラッグストアに寄りました。レジで代金を支払ったところ、4ドルの代金に対して15インチ(38cm)もの長さのレシートが出てきました。レジの女性に、「レシートはいりますか?」と聞かれました。僕はいりませんと言い、そのレシートは不要のレシートでいっぱいになっているゴミ箱に捨てられました。

「すみません」僕は尋ねました。「もしかして、レシートがプリントされる前に僕が要らないと言ったら、無駄にせずに済んだの?」レジの女性は「とんでもない」という表情で答えました。「それは無理なのよ。お客さんが必要だろうとなかろうと、自動的にプリントされるシステムなの」。そして店を出ようとしていた僕にこう声をかけました。「そうね、多分お客さんの半分は、要らないから捨ててって言うわ」

1本の木で55,000枚のレシートができる

気になった僕は、ホテルの部屋に戻ってから、封筒の裏を使って計算してみました。さっきの大型ドラッグストアは24時間年中無休で営業しているから、控えめに見積もっても、毎時間平均150人のお客さんが買物をする。そしてその半分が、15インチ(38cm)のレシートを捨てると、1日あたり2,250フィート(686m)の紙が無駄になる。これを年間にすると、なんと156マイル(251km)もの紙を無駄にしていることになる。たったひとつの店だけで!

ちょっと検索してみたら、僕が行った店は全米に1万店舗を展開するチェーン店だということがわかりました。全店舗が同じやり方をしているとすれば、グループ全体で年間156万マイル(251万km)の紙を無駄にしていることになる。言い換えれば1年の間に、ひとつのドラッグストアチェーンだけで、地球を63周もできる長さのレシートが捨てられているのです。

改めてiPadで調べたところ、ハフィントンポストの記事にこう書かれているのを見つけました。「米国だけで、レシートを作るために、毎年2億5000万ガロン以上の石油、1000万本の樹木、10億ガロンの水が消費されている」。1本の木で作れるレシートは、およそ55,000枚なので、あのドラッグストアで捨てられる1か月分のレシートと同じくらいの量です。

僕が大雑把に計算したこの数字が当たっていて、半分のレシートがその場でゴミになっていると仮定しましょう。ハフィントンポストの数値を元に概算すると、あのドラッグストアチェーンの10,000店舗は、毎年125,000本の樹木相当の紙を無駄にしていることになります。

さらに悪いことに、レシート用紙に大抵使われているビスフェノールAという化合物は有毒で、さまざまなガンとの関連性が指摘されています。ということは、あのゴミ箱に山ほど入った不要のレシートは、リサイクルすらできないのです!

僕らの無関心が愚かな選択につながる

こういう問題について、人はよく「システムがやるべきことだ」と言います。でもシステムというのは、人間が望まないことはやらなくていいものなのです。誰かが環境への負荷が少ない他の方法を設計したとしても、僕らがその気にならないといけません。

このレシートの疑問から、僕は英国でレジ袋に5ペンスが課金されていることを思い出しました。2015年10月に課金が始まってから最初の半年で、国内で買物客が一度しか使わないレジ袋の数が、85%以上も減ったのです。

「システム」をプログラムしなおして、欲しい人にだけレシートをプリントするようにする。これが企業にできないわけがありません。あるいは代わりにデジタルレシートを提供できればもっといい。もちろん、中にはメールアドレスを教えたくないお客さんもいるでしょう。でも、何も手を打たなかったらどんな結果が待っているか、考えてみるべきです。

悲しいことに、社会で起こる愚かな選択の多くは、僕らの無関心によってもたらされます。この問題もそれと同じです。

例えばあのドラッグストアだって、お客さんたちが関心を持って、レシートをもらうたびに紙が無駄になることに強く抗議すれば、「システム」に投資し構築する立場にある人のところまで、届くかもしれない。忘れてはいけないのは、タダでできる紙はないのだから、レシートを省くことができれば、環境改善に貢献できる上、コスト削減にもなるということです。

映画『ネットワーク』のニュースキャスター、ハワード・ビールの台詞をスローガンに、運動を起こす時が来たのかもしれません。故ピーター・フィンチにアカデミー賞をとらせたこの名台詞、ちょっともじれば、抗議集会のコールにぴったりです。

私は心底頭に来ている。金輪際、紙のレシートは受け取らない!

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リチャード・ブランソン

イギリスの実業家で、ヴァージン・グループの創設者・会長。ヴァージン・レコードを筆頭に、航空産業、携帯電話、出版、金融から、飲料水、宇宙旅行まで幅広い分野で事業を展開。気球で太平洋横断に挑戦するなど冒険家としても有名である。鋭い洞察力、ユーモアに富んだ発言と自由な生き方で世界中に根強いファンを持つ。

© 2017 Richard Branson, Distributed by The New York Times Syndicate
[原文:The 'System'is Wasteful. Let's Change it. / 執筆:Richard Branson]
(翻訳:スマキ ミカ)
photo by Getty Images