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新北欧料理の異端児が目指すネオ・フィヨルドの味 [The New York Times]

The New York Times

新北欧料理の異端児が目指すネオ・フィヨルドの味 [The New York Times]

「昔のノルウェー料理を代表するのは、こちら」。ライ麦パンに乗っているのは、サバのスモークと小さな球形のバター。

「こちらは未来」と言って指差した先には、砂糖と塩で漬けたオヒョウ(カレイ科の大型魚)に、西洋ワサビのスライスとアルファルファが添えられている。

「最後の遊びの一品」は、ニシンの酢漬けをジャガイモの平パンで巻いたラップサンド。彼が10代の頃、夜遊びの合間に食べたストリートの軽食であり、ノルウェー料理に欠かせない2つの食材へのオマージュだ。

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(上から時計回りに)サバのスモークバターを乗せたライ麦の黒パン、西洋ネギのオイルを垂らしたベルゲン風フィッシュスープ、酢漬けニシンのケバブ風ラップサンド、サワードウのクラッカーに乗せた塩と砂糖漬けのオヒョウ、ハウスメイドのバターとパン。ノルウェー西岸ベルゲンにあるクリストフェル・ホトゥフト氏のレストラン「リースヴェルケ」で。2017年7月撮影(David B. Torch / The New York Times)

元パンク少年が描く、もうひとつの新潮流

ノルウェー西岸ベルゲンにあるレストラン「リースヴェルケ」。オーナーシェフのクリストフェル・ホトゥフト氏(37)が思い描くノルウェー料理は、この3種類のフィンガーフードに凝縮されていた。「懐かしさ、自然に優しい素材、創造性、美味しさとユーモア」。米国人の母を持つホトゥフト氏は2年間、ニューヨークの「パ・セ」やシカゴの「アリニア」など米国の名店を回って修業を積み、2012年に帰国。

ときは新北欧料理「ニューノルディックキュイジーヌ」が世界的地位を確立し、デンマーク・コペンハーゲンにある「ノーマ」のレネ・レゼピ氏や「リレ」のクリスチャン・プリシ氏、ノルウェーではオスロ「マエモ」のエスベン・ホルンボー・バン氏といったシェフたちが脚光を浴びていた。彼らの多くはトマトやオリーブオイルなどを使わず、北欧スカンジナビア半島の食材にこだわる「厳粛な」レシピをモットーとしていた。

だが若き頃、パンク少年でもあったホトゥフト氏の姿勢は「厳粛」とは真逆。自分の店の料理を表現するために「ネオ・フィヨルド料理」という新語を生み出した。「最初はジョークだったんだ。でも、フィヨルドこそが、ノルウェー独自のもの。そういう料理を目指したかった」

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レストラン「リースヴェルケ」に立つクリストフェル・ホトゥフト氏(中央左)(David B. Torch / The New York Times)

同じ北欧でもベルギーやデンマークと比べて、ノルウェーの地理的条件はとても厳しい。産業革命前は小さな農家はやっていけないほど荒涼とした土地で、19世紀末には国民の3分の1が米国へ移住を始めた歴史さえある。ノルウェーの農民にとって美味しさは贅沢だったとホトゥフト氏は言う。「僕の祖母の時代でさえ、料理にタラの肝油を使っていたくらいだ。匂いが何日も残ってしまう、ね」。

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「リースヴェルケ」に地元のダイバーから届いた海産物(David B. Torch / The New York Times)

ホトゥフト氏はそうした過去に向かって伝統を追求するのではなく、自分なりの仮説を立ててみる。「もしもノルウェー西部が、昔から裕福だったフランスの一地方だったら、シェフたちは何を自慢していただろう?

伝統的なノルウェー料理は魚、ジャガイモ、粉、牛乳を使った淡白な味のポリッジ(粥)やダンプリング(団子)が中心だが、そこにスモークした羊やトナカイ、塩で漬けて発酵させたサケ、山羊のサラミ、根菜のピクルスといった香りの強い食物が添えられていた。複雑な味わいの熟成チーズをはじめ酪農製品の質が高く、夏には甘いベリーがなり、冷たい北大西洋と北海からは格段に新鮮な魚介類が届き、それらを保存する伝統技術にも長けている。

「フランス人のシェフがここにいたら、サバのスモークを自慢するだろう。でも血合いの部分は掃除して除き、素材の風味が光るように、バターを加えてリッチで滑らかに仕上げるだろう」。ホトゥフト氏が作る「リースヴェルケ」の料理だ。

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左:天然タラのロースト、キャベツのグリル添え/右:イチゴ、モラセスシロップのクラッシュ、スイートチャービルを添えたスイバとヨーグルトのアイスクリーム(David B. Torch / The New York Times)

あるいは伝統料理のベルゲン風フィッシュスープ。現代のシェフたちは粉でとろみをつけるのを止め、卵の黄身とサワークリームでコクを出す。だが、ホトゥフト氏はもう一味、西洋ネギのオイルを垂らして香りを高める。さらにトッピングに細切りのニンジンと、ワインビネガーではなく「おばあちゃんが使っていた」蒸留酢に漬けた根セロリのピクルスを散らす。

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「リースヴェルケ」に素材を供給している農場主、クヌート・フィンネ氏(David B. Torch / The New York Times)

選び抜かれたフィヨルドの食材

ホトゥフト氏は素材選びも独自のルートを開拓している。野菜は地元の農家に足を運んで、栽培する種類を増やすよう説得した。豚肉はシェフから転身したアンネシュ・ツヴァイテ氏が、冷涼気候に強いハンガリー原産のマンガリッツァ豚を育てる養豚場と専属契約。オヒョウは、海にすむ天然種に影響を与えないよう陸地に造られた最先端の養殖場から調達。一方、ウニやアカザエビ、貝の仕入れは、天然ものを水揚げする漁師としか取り引きしていない。

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左:クヌート・フィンネ氏の農場のイチゴ/右:「リースヴェルケ」に地元のダイバーから届いたウニ(David B. Torch / The New York Times)

大西洋岸沖のストラ島にある貯蔵場で、生きた魚介類が入ったたらいに囲まれたホトゥフト氏は、サラダプレートのように大きな生きたホタテを開けてみせた。それからヒモと卵を手際よく脇へよけ、ポケットナイフを取りだし、貝殻の上でふっくらとした身を薄切りにすると海水ごとその味を堪能した。

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ノルウェー西岸ベルゲン付近のフィヨルドで捕れた帆立貝を手にする「リースヴェルケ」のオーナーシェフ、クリストフェル・ホトゥフト氏(David B. Torch / The New York Times)

数時間後、「リースヴェルケ」では片面を焼き固められたホタテが、ベビーラディッシュと、ピリリとした苦みのあるキンレンカの葉のピューレを添えられて貝ならではの甘みを存分に放っていた。

20170810_fjordic_main.jpgホタテと魚卵のグリル、ベビーラディッシュとキンレンカの葉のピューレ添え(David B. Torch / The New York Times)

©︎2017 The New York Times News Service[原文:North of Nordic: A Young Chef Invents 'Neo-Fjordic' Cuisine/執筆:Julia Moskin](抄訳:Tomoko.A)

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