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私はサイコパス? シャーリーズ・セロンの告白 [The New York Times]

The New York Times

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私はサイコパス? シャーリーズ・セロンの告白 [The New York Times]

シャーリーズ・セロンとランチをしながらインタビューができることになり、筆者は興奮しつつも、ある種の怖れを感じていた。

シャーリーズ・セロンといえば、ハリウッドの大女優にふさわしい品格と正統派の美貌を誇る「Aリスト」のスター。同時に、冷酷で非情なキャラクターを恐ろしいほどリアルに演じることでも知られている。彼女自身のなかにも、そんな闇につながる何かが潜んでいるかもしれないという思いがぬぐえない。

オスカーを受賞しているセロンはいうまでもなく、役を演じることに長けた優れた俳優である。それでも、『モンスター』(2003年)の連続殺人犯、『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015年)の女戦士、『スノーホワイト』(2012年)の邪悪な女王、そして最新作『アトミックブロンド』(2017年)では殺し屋でもある諜報部員と、愚か者には容赦しない激烈な女性像が並ぶのをみるにつけ、本人もさぞかしと不安がわいてくる。

だが、風邪のため予定を1日遅らせた昼食に現れたセロンは、予想をはるかに裏切る人物だった。

ハードなアクションもこなす41歳のセロン

「ごめんなさい」と言いながら、すべるように指定のレストランの席についたセロンは、手足がほっそりと長く、光輝くような雰囲気を備え、そして、誓ってもいい、毛穴のまるでないつるりとした肌をしていた(これぞまさにセレブの証。見とれるあまり、彼女が着ていたものや注文したランチのメニューをメモすることなどすっかり忘れていた)。風邪のせいでまだ少し鼻声で目も潤んでいたが、確固とした存在感があり、話を聞くうちに、『アトミックブロンド』の迫真の闘争シーンでみせた、役者としてのプロ意識がヒリヒリと伝わってきたのだった。

スタントマンとしての経験を持つ『アトミックブロンド』のデビッド・リーチ監督は、「ジャン=クロード・ヴァン・ダムのスタントを2回務めたことがあるけど、セロンは彼よりもずっと熱心にトレーニングを積んでいた。ジャン=クロードをけなしてるわけじゃなくて、マーシャルアーツの基礎も知らないゼロの状態からここまで持ってきたんだから、彼女の強い意志がすぐにわかったって意味さ」と語る。

女性アクションヒーローを演じたら右に出る者がいないセロン。主役をくってしまうくらい観客を魅了した『マッドマックス 怒りのデスロード』の片腕の女戦士フュリオサの次のステップに選んだのが、『アトミックブロンド』だったことには納得がいく。恋愛ヒロインから、シリアスドラマの主人公、ブラックコメディ、もちろん、あの連続殺人犯まで、多彩な役柄を演じるキャリアを経て、今、41歳となったセロンは、人々が憧れてやまない、強い力と意思をもって戦う「獰猛な女性」を象徴する存在となった。

男性社会のルールを打ち破りたい

『アトミックブロンド』の舞台は東西の冷戦末期、1989年のベルリンで、セロン扮するセクシーでクール、かつタフなMI6のエージェント、ロレイン・ブロートンが同僚スパイの死の謎に迫るアクションスリラー。ロレインは、狡猾で、一切弁解などせず、男性によって定義された世界にいながら、自らの立ち位置を自分で確保している女性だ。また、彼女は無慈悲で有能な殺し屋でもあり、90キロの巨漢を殴り、投げ飛ばし、階段から突き落とし、壁にめりこませる。撮影中セロンは膝を痛め、あばらはアザだらけで、顎を噛み締めすぎたせいで歯が2本欠けたという。

個人的な復讐の念ではなく、あくまで職務を全うするがために戦う、頑固でブレないロレインのプロフェッショナルな姿勢が好きだというセロン。映画のシーンでもっとも強烈な印象を与えるのは主人公の生々しい傷の描写で、彼女の腫れあがった顔は仕事を片付けたからであって、暴力の被害者だからではないことを明確に示している。「ある種の状況では、女性は男性と同じルールで物事を行うことが許されない。私は、そんな無言の圧力を打ち破るキャラクターを積極的に探しているわ」とセロンは語る。

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男性社会のルールを打ち破るキャラクターを探していると語るシャーリーズ・セロン。2017年6月22日ロサンゼルスで撮影(Emily Berl / The New York Times)

サイコパス? 壮絶すぎる幼少時代

だが、セロンが愛するキャラクターにはどこか不安定な要素がある。なんと表現すべきか言い淀んだ筆者の言葉を、セロンはさらりと引き継いだ。「壊れている? サイコパスってこと?」茶化しているのか、真面目なのか、見分けがたいが、おそらく両方なのだ。セロンのユーモアのセンスは、皮肉とドライでブラックな笑いの中間にある。

5年前、最初の養子ジャクソンを迎えたとき、母親として何をしているかと記者に尋ねられ、息子に爪とぎをおもちゃに与え、時々ミルクをお皿に入れていると答えた。「ユーモアは私にとって日々を乗り切るための唯一の手段だった」とセロンは振り返り、「人生の一番辛い時期を支えてくれるのはユーモアよ」と付け加えた。

彼女の子供時代は確かに凄まじい。母国の南アフリカに住んでいた15歳のとき、家庭で暴力を振るい続けてきたアルコール依存症の父親がある日、弟と一緒に泥酔して帰宅。妻と娘に銃を向けて脅した。夫が発砲しはじめたのを見たセロンの母は自分の銃をつかむと、セロンの父を撃ち殺し、弟に重傷を負わせたのである。事件後、母は正当防衛が認められている。

その日の夜はもちろんひどかったけれど、そこに至るまでの崩壊した家庭での嵐のような月日のほうがむしろ悲惨だったとセロンは打ち明ける。「これが私の子ども時代。トラウマのすべて」と。溺れ死ぬか、泳いで逃げ切るか、射殺は運命の分かれ道だったとセロンの母は語ったという。

苦境を乗り越えたキャラクターに共感

「私は生き延びたし、そんな自分を誇りに思う。一生懸命頑張ってきたこともね。私はトラウマにおびやかされたりしない。闇を恐れたりしない。あのような体験から何か得るものがあるとしたら、人間のさがというものをみせてくれることかもしれないわ」。セロンは続けてこう語る。「人々は(『モンスター』の原案となった実在の連続殺人犯)アイリーン・ウォーノスのような人物にはレッテルを貼って、見えないところにしまってしまおうとする。誰も彼女の人となりなど知ろうとしないし、どうしてこんなことになったのか? なんて聞こうとしない。でも、私は『どうして』の部分に引きつけられるの。色々な意味で、なぜ? と問い続けたから今の私があるのよ

自分の生い立ちと演じたキャラクターが結びつけられることに、セロンは抵抗を示す。女戦士フュリオサは「信じられないくらい壊れている」し、女王ラヴェンナは「めちゃくちゃ」で「死海並みに塩辛くてキレてる」と手厳しい。だが、彼女らが耐えてきた苦境と、その結果として培われた強さは、とても人間的に映るともいう。

「私のような人間が、抗おうとする女性や、あがいて勝ち取ることで状況から抜け出そうとする女性を好きなのは、よっぽどのマヌケじゃなきゃわかるでしょ。それに、彼女らは哀れな被害者じゃないけど、スーパーヒーローでもない」

役柄を演じ切るには太ることも厭わない

セロンの英語には訛りがない。16歳で南アフリカを去り、ニューヨークのバレエ学校で学んだあと、モデルの仕事をはじめ、90年代半ばにハリウッドで女優としてのキャリアをスタート。俳優としての地位を決定づけたのは、何といってもパティ・ジェンキンズの初監督作品『モンスター』だ。

撮影中、10キロ以上体重を増やし、入れ歯やそばかすなど特殊メイクで挑んだセロンの役柄が、あまりにも観客受けしないだろうと危惧した出資者から、ジェンキンズ監督のもとに怒りの電話がきたという。「みんな、シャーリーズ・セロンとクリスティーナ・リッチのレズビアン映画にお金を出したつもりだったのよ」とセロンは笑う。監督は動じることなく撮影を進行。出資者たちは文句をわめき続けたが、映画は完成し、セロンにはアカデミー賞、出資者には多額の配当をもたらした。最近では『ワンダーウーマン』を大ヒットさせたジェンキンズ監督とセロンはずっと仲が良く、男たちの尻を蹴り上げるヒロインの物語でシンクロしている。

インタビューがそろそろ終了という頃、たまたまレストランに来合わせたジェイソン・ライトマン監督がセロンに挨拶にやってきた。ライトマン監督とセロンは『ヤング≒アダルト』(2011)と、2018年公開予定の『Tully』の2作品で一緒に仕事をしている。『Tully』のために15キロ体重を増やしたというセロンが、席からぴょんと立ち上がり、手のひらをひらひらさせてボディをひけらかしながら「ジャジャーン! 私、痩せたでしょ!」と叫ぶのに答え、「せっかく君の脳みそがいかに偉大かって、話題にしていたところなのに」とライトマン監督はからかった。

後日、電話インタビューに応じてくれたライトマン監督はセロンについてこう語る。「深いレベルの人間の感情をそなえた人というのは楽しいタイプじゃないし、付き合いにくいものだ。彼らは複雑に入り組んだ真っ暗な洞窟みたいなもので、そんなところに長居はしたくないと普通は誰もが思う。でも、正反対なことをするのがシャーリーズさ

『アトミックブロンド』

主演:シャーリーズ・セロン 監督:デビッド・リーチ

2017年10月20日(金)日本全国公開予定

© 2017 The New York Times News Service[Charlize Theron's Sick Work Ethic / 執筆:Cara Buckley](翻訳:十河亜矢子)

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