「先日、『川島さんはサザエさんみたい』って言われて。実は気に入っているんです」と話すのは、伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役でifs未来研究所の所長も務める川島蓉子さん。ファッションの分野でブランディングや広告などを次々と手がける手腕ながら「サザエさん」と言われる理由は、そそっかしくてサバサバしているからなのだとか。

街中で話しかけられたり、ときに触られたりもするキュートなファッションに身を包み、ビッグクライアントや著名なクリエイターと共にプロジェクトを切り盛りする。キラキラした魅力の塊のような川島さんに、仕事や生き方について伺った。

20170831_career_prof.jpg川島蓉子(かわしま・ようこ)さん

早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科終了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。多摩美術大学非常勤講師。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)など。近著に『みらいをひらく、わたしの日用品』(リトルモア)。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

人と人をつないでお世話をする自称「家政婦」

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川島さんは、新卒で伊藤忠ファッションシステムに入社。ずっと同社に在籍しながら、4年前にifs未来研究所を立ち上げた。ブログやラジオ、書籍、イベントなど、さまざまな発信を続けている。活動は多岐にわたるが、メインとなる仕事はどのような内容なのだろう。

「最近は、企業や商品のブランド作りをお手伝いする仕事が増えています。やり方はそれぞれ異なりますが、広告的なものや商品開発など。私の役割は、まず経営トップと話をします。話を聞いた上で、課題を整理していく。それから、すごく大事な役割として、課題に対して最適な人をキャスティングします。アートディレクターやコピーライター、PR......。チームを組んだら、私は家政婦みたいに立ち回るんです」

チーム全員が気持ちよく仕事ができるように折り合いをつけたり、クライアントの不満を解消したり、足りない予算を調整したり......。川島さん自身は「下働き全般です」と言うが、何が大切かと問われれば「いいものを作る」と力強く言い放つ。

「もともとは会社内でチームを組んでいましたが、数年前から外部の方に参加してもらうようになりました。優れた人同士がぶつかり合って何かが生まれる瞬間は、まるで麻薬のようにやみつきに。ひとつになっていいものを作るためなら、相手が社長だろうとはっきりとものを言います。怖くないのかって? そりゃ、毎回びびってますよ。でもプロジェクトは社長のためでもないし、クリエイターのためでもない。『見る人のため』がぶれないように気をつけています」

そんな中大切にしているのは、信用と信頼。「私も信用するし、相手にも信用してもらいたい」という思いで体ごとぶつかっていくと、不思議とうまく回っていくのだそう。

好きな人に会いに行き、原稿を書かせてもらう

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とにかく好奇心が強いという川島さんは、会いたい人にどんどん会いに行く。

「縁あって本を執筆させてもらえるようになってから、会いたい人にはインタビューしに行きます。必死でお願いして、必死で話を聞いて、必死で書く。喜んでいただけることが多いものの、『すべて』とはいきません。書くことに命を懸けているので、原稿の修正を巡って大げんかをしたこともありますし、お花を持って謝りに行ったり、お菓子にお手紙を沿えてお送りしたり......。でも、ほとんどはその後にいい関係になっていきます」

インタビューで知り合った人と信頼関係を築き、後に広告などの仕事に参画してもらうこともある。狙ったわけでなくとも、川島さんの好奇心や求心力が人を集め、新たなクリエイティブに繋がっている

一番心に残るプロジェクトは、自社のブランディング

信頼する人たちを集めて、これまでにない化学反応でプロジェクトを成功に導いていく。数ある仕事の中で、もっとも心に残っているものを教えてもらった。

スタートしてから4年ほどになる、伊藤忠商事の企業広告です。インタビューの仕事で膝を付け合わせたこともある社長が『川島にやらせてみるか』と......。私にとっては、こんなに大きな規模の仕事は初めて。しかも自社の広告です。絶大な信頼を寄せているコピーライターの国井美果さんをはじめ、奇抜なジャンプをしてくれるクリエイティブディレクターの山本康一郎さん、巨匠とも言われる葛西薫さんなど。お願いするときはいつも正直に、誠心誠意伝えます。毎回ドラマのような展開があって、今回もそうそうたるメンバーに集まっていただくことができました」

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今回の取材現場で見せてもらったのは、新聞の一面広告。「ひとりの商人、無数の使命」シリーズのひとつとして、一般社員の大きな顔をイラストにしたものとインタビューを掲載していった。8回目には、岡藤正広代表取締役社長が登場。社長本人の顔が......と思いきや、少年時代の写真をイラスト化。このシリーズは2016年日経広告大賞をはじめ、数々の賞を受賞した。

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川島さんの最新刊は、日本のものづくりへのリスペクトが詰まった一冊。川島さんが厳選した日用品がふんだんに紹介されている。

これだけ大きな仕事をしていながら、将来のことを尋ねると「言葉にすると格好良すぎるかもしれないけれど、原稿を書くことだけが残ればいい」と答える。好奇心の赴くまま人に会い、達成感は少ないという執筆を今もこれからも続けていく。それが川島さんのエネルギーの源であり、同時にエネルギーの向く先なのだろう。

Q. お気に入りの化粧品は?

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パリの本店で購入したBURYのアボカドオイル。お風呂上がりなどに使う。持ち歩き用にと購入した小さな櫛は、実は男性の髭用。探してもなかなかないサイズ。

Q. 現在読んでいる本、愛読書は?

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現在読んでいる本は『塑する思考』(佐藤卓著)。愛読書は『きもの帖』(幸田文著)。

Q. お気に入りのファッションアイテムは?

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20代の頃にパリで購入したストール。ストールはよくなくしてしまうが、これは今も残っている。難しそうに見えて、意外といろいろな服に合うのがお気に入り。

小学生の頃からブローチが大好きで、学校に着けていって注意されたことも。こちらのブランドは左上が「D-BROS」、黄色が「MARNI」、右が「minä perhonen」。

Q. 欠かせないスマホアプリは?

世界中どこに行っても困らないGoogle Map。

Q. 仕事以外で夢中になっていることは?

料理が好きで、時間があるときは頭を使わないみじん切りをたくさん。週に一回はトレーナーについて加圧トレーニングやヨガを2時間くらい。

Q. 1か月休みがあったら何をしたいですか?

違う空気、違う環境に身を置きたい。旅行など。

撮影/柳原久子 取材・文/栃尾江美