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暴れて気分スッキリ 破壊クラブへようこそ [The New York Times]

The New York Times

暴れて気分スッキリ 破壊クラブへようこそ [The New York Times]

器物損壊が新しいビジネスにつながるとは普通、思わないだろう。だが、3月のオープン以来1,500人近い人々が、家具や家電などを叩き壊すために「Wrecking Club(破壊クラブ)」を訪れている。

米国ニューヨーク州、マンハッタンのミッドタウンにあるこの施設。オーナーのトム・デイリーによると、客の多くは普通のデートに飽き足らなくなったカップルだそうだが、誰もが持つ「怒り」という本能を発散できるこのサービスは、幅広い層にアピールする。

「怒り発散」のニーズは世界中にある

このアイディアを思いついたのは「Wrecking Club」が最初ではない。2008年にテキサス州ダラスにオープンした「Anger Room」は、2016年の大統領選の時期に大いに売り上げを伸ばした。

何百人もの人々が、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの人形を叩きのめすためにやってきたのだ。合わせて3体のトランプ像と、2体のクリントン像が粉々にされたそうだ。

2015年にカナダのトロントにオープンした「Rage Room」は現在、ブダペスト、シンガポール、オーストラリア、そして英国にある施設とライセンス契約を結んでいる。

自宅で怒りを発散したい人は、ネットを探せば「セラピーツール」がたくさんみつかる。お手軽なのは、10ドル前後で買える発泡ビニール素材のアンガーバット。ハイエンドのものをお探しなら、2本セットで200ドル以上するドイツ製の衝撃吸収素材を使ったバットがある。

職場や自宅で抑え込んでいた衝動を発散

マンハッタンの「Wrecking Club」で提供される道具はそんなヤワなものではない。バットもバールも金属製だ。最もベーシックなコースは30分30ドルで、家電製品2、3個と、バケツいっぱいの食器が提供される。追加オプションは、レストランの日替わりメニューのように、ホワイトボードに書かれている。

食器(1箱20ドル/2箱35ドル)、ノートパソコン(15ドル)、コンピュータモニター(20ドル)、携帯電話(5ドル)、大画面テレビ(25ドル)、等々。

こうした物品を探してくるのは簡単なことではない。倒産した企業などから仕入れることもあれば、個人からの寄贈もある。オーナーのデイリーによると、壊された残骸はきちんと分別処分されているという。

デイリー(29)は昨年までコネチカット州で金融関係の仕事に就いていたが、もっと面白いことがしたくなって辞めたという。頭にあったのが、実家の裏庭のブランコを壊したときのこと。自分も兄弟も成長して実家を出ていて、使わなくなったから処分してほしいと両親に頼まれてのことだった。

「ブランコは乗るより壊す方が楽しいな、と思ったんだ。その時の記憶がきっかけで、このサービスを始めようと思った」。

予約制の施設は秘密クラブのよう

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ニューヨークのWrecking Club(Dina Litovsky / The New York Times)

「Wrecking Club」の内部はどんなかといえば、伝説のクラブCBGBが最も過激だった頃の地下室と、旧東ドイツ秘密警察の拷問部屋を足して2で割った感じだ。

部屋の壁は、ぶつけたモノが派手に割れるようにコンクリートと合板でできている。エントランスに掛かっているのは映画『リストラ・マン(Office Space)』のスチール写真で、怒りを爆発させた会社員らがプリンターを叩き壊しているシーンだ。

サービスを開始したばかりの頃は、失敗もあった。デイリーは自分のノートパソコンを壊されてしまったこともある。客のカップルを破壊部屋に案内して安全確認用の動画を見せた後、うっかり何も言わずにパソコンを置いてきてしまったのだ。

「クラウドにバックアップがあってよかった......としか言いようがないね」。首を振りながらデイリーは言う。「申し訳ない気持ちにさせたくなかったから、お客さんには黙ってたよ」。その後、備品に破壊禁止のバツ印を付けたのは言うまでもない。

このクラブの詳細なロケーションは、予約が完了するまで分からないようになっている。テナントビルのオーナーに気を使ってというよりは、秘密クラブの雰囲気を醸し出したいからだ。

サンダルなど足が出る靴は禁止。肌が露出しない服装を推奨しており、ゴーグル、ヘルメット、軍手、ナイロンの上着が貸し出される。明らかに泥酔していたり、ハイになっている客は入店を断られ、デポジットは返金されないという。

BGMを選んでいよいよスタート

記者がひとりで体験すると言ったとき、デイリーは少し驚いたようだった。2人の方が楽しいと言うが、新しいボーイフレンドを誘って修羅場のケンカみたいなことをするつもりはなかったし、一緒に食器を割るのはいくら親しい友達でも距離が近すぎる気がしたのだ。

デイリーは頷き、「楽しむために来る人と、気持ちの整理をしに来る人がいる」と言った。

私が注文したのはモニター、大画面テレビ、椅子、そして食器を一箱。BGMはどうしようかと考えていると、同行したカメラマンのディーナが提案してくれた。「やっぱり、メタリカでしょう」。彼女はそう言い、スマホをスピーカーに繋いで「バッテリー」をかけてくれた。

部屋の片隅にはバットとバールが横たわっている。エアコンは壊れており、暑さでゴーグルの中が曇って、流れる汗が目にしみる。バットを取り上げ、テレビに向かって振り上げる。そして......。

ヘタレ女子丸出しの当たりで、小さなヒビ程度に終わってしまった。後ろでは「暴力に飢えて! 弱者を食らう!」などとメタリカのボーカルが威勢よく吠えていたが、まったくお恥ずかしいかぎり。肩身が狭くなるので、何かもっとポップなものが聴きたかった。ブロンディの「ハート・オブ・グラス」はどうだろう?

破壊は意外と大変だった

「みんな最初は遠慮がちです。思いきって行って大丈夫、と背中を押してあげると、スイッチが入ります」とデイリー。

感想を書こう。モノを粉々になるまで壊すのは、思うほど簡単なことではない。金属バットをもってしても、テレビはなかなか壊れない。アップルのモニターはもっと丈夫にできている。椅子もまた然り。

デビッド・ボウイの曲(Breaking Glass)の歌詞と違い、私はガラスの割れる音を聞いても快感を覚えない。霧のように細かい破片が飛んでくるのがめちゃくちゃ怖い。

心の奥底に渦巻いていたはずの怒りの水源は、知らないうちに干からびていた。過去の傷など、そういつまでも引きずっていられないものだ。

自分を解き放てないのは自意識過剰もある。たしかに2人ならお祭り騒ぎを楽しめたかもしれないが、ひとりバットを振り回していても、微妙な気持ちにしかなれなかった。

弱った心を奮い立たせる

終盤でようやくリズムを掴み、手際よくテレビスクリーンを叩き割っていった。床は細かいガラスの破片で覆われている。最後に「ホウキと塵取りを貸して」と言いたいのをグッとこらえた。

オープンからの数ヶ月間、さまざまな客を見てきたデイリーは言う。「まだ商売を初めて間もないですが、人々の心理がなんとなく分かってきました。ひとつには、モノを壊すことで、弱った心を奮い立たせたいという部分もあると思います。たとえば会社をクビになった人は落伍者のような気分でしょう。

恋人にフラれた、志望校に受からなかったなど、心底落ち込むことはたくさんあります。ここは、自分の力を取り戻せる場所なのです」。

© 2017 The New York Times News Service[原文:Anger Rooms Are All the Rage. Timidly, We Gave One a Whack./執筆:Penelope Green](抄訳:Tom N.)

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