旅行の計画はありますか? 旅行の予約を入れるとき、同時進行で手配している出張とは全く別の意識が働くのではないでしょうか。プライベートだったら、ホテルを決める前にいくつもレビューを読み、値段やホテルの設備を比較することでしょう。

一方、出張は一番安いホテルではなく、どうせ会社のお金だからと、ポイントが貯まるホテルを予約しがちなのではないでしょうか。出張とくらべ、プライベートの旅行は当然より好みもすれば、コスト意識も働きます。

しかし、そのような違いは過去のことになるかもしれません。ユーザーの行動に着目した、法人向けの新しい旅行サービスが続々と誕生しているからです。

経費節約で自分も得する出張予約サービス

ロケットリップ(Rocketrip)トリップアクションズ(TripActions)アップサイド(Upside)などのサービスが前提とするのは、「経費節約のための選択をすることで自分も報いられるなら、ビジネス旅行者もそれに応じた行動をとる」という考えです。1月に立ち上がったばかりのUpside。創業者、ジェイ・ウォーカーさんによると、米国企業1万社あまりが出張手配のために利用しています。

TripActionsは2015年からサービスを提供していますが、創業者兼CEOのアリエル・コーエンさんによると(ユーザー数こそ未公開ながら)サーベイモンキー(Survey Monkey)やイー・ハーモニー(eHarmony)が利用企業に含まれます。Rocketripは2013年創業で、創業者兼CEOのダン・ラッチさんによると、ゼネラル・エレクトリックやツイッターをはじめとする大企業や中堅企業、50〜100社が旅行予約ツールとして優先的に利用しているとのこと。

グーグルの出張制度にヒントを得たビジネスモデル

ニューヨーク市に拠点を置くラッチさんは、グーグルの出張制度を知ったことをきっかけにビジネス旅行者向けのインセンティブ事業を始めました。「2012年にコンセプトを打ち出したが、自分で考え出したたわけではない。(少なくとも10年以上運用されてきた)グーグルのやり方をたまたま知っただけ」。

グーグルの制度とは、出張のたびに航空券と宿泊費の予算を決め、予算を下回った社員には出張のアップグレードに使えるポイントを発行する、というものです。これは、推奨航空会社の利用といった特定の行動を社員に促しながらも、節約で得られた利益を会社が社員と共有することはなく、その他の予約ツールとは異なります。Rocketripはグーグルのように、節約したコストの半分を出張者に還元します。アップグレードの代わりに、アマゾンや電器店のベストバイ(Best Buy)といった小売店のギフト券をポイント交換サイトで提供しています。

ラッチさんはこのシステムのことを「特典で促す行動変化」と呼び、ビジネス旅行における最も画期的な、または最もわかりやすい狙い目をついた発想だと言います。「ビジネス旅行にはものすごい無駄がある。仮に6時間以上のフライトはビジネスクラスでよいという会社の規定があったら、エコノミークラスの利用は期待できない。5つ星ホテルでの滞在が許可されていたら、3つ星ホテルや友人宅での宿泊は期待できない」とラッチさんは言います。

ラッチさん曰く、人は心地良いものに惹かれるとか。つまり、節約の見返りが期待できる場合を除き、できるだけ贅沢に、よりお金をかけて出張したがるということです。

出張経費が15〜20%も下がった米メーカー

ケンタッキー州ルイビルにある空気清浄装置メーカー、エイ・エイ・エフ・インターナショナル(AAF International)の財務部長のマーク・ミントマンさんは、ラッチさんの持論を現実に見てきたと言います。2016年秋にAAFがRocketripを導入する前、約100名の出張者が出張予算を経営陣に提出していました。

「以前は節約する動機がなかった」とミントマンさん。ところがRocketripを導入し、同サービスの「下回ることを前提とした予算」の手法を取り入れた途端、社員による節約で出張1件につき経費が15〜20%、または金額にして約133ドルも減ったといいます。

Rocketripの予約サイトを使えば、ホテルの代わりに友人宅に泊まるといった、個々の節約手段でどれだけポイントが稼げるかがわかるようになりました。ミントマンさんは言います。「(新制度に)極端にハマった社員もいる。昔はヒルトンに泊まっていた同僚も、今ではもっと安いマイクロテルに滞在するようになった。節約のためだけに、目的地から45分も離れた場所に泊まった社員も何人かいる。スターウッドやマリオットのポイントを熱心に貯める代わりに熱心に経費を節約するようになった」。

ラッチさんによると、出張に「飴と鞭」の手法を取り入れた他の新興サービスと同じく、Rocketripもレポートを作成し、出張ごとに節約した金額や、その手段(たとえば、より安いホテルに泊まった、エコノミークラスを選んだ、など)の情報を管理職に提供しています。社員が予算超過した場合、その情報も経営側に渡ります。「Rocketripを導入したおかげで、AAFでは出張費として妥当な額がどれくらいかを判断しやすくなった。今では社員が提示した予算も、Rocketripの提案と比較することで検証できるようになった」とミントマンさん。

節約した出張経費がアマゾンのギフト券に

TripActionsは、経費を節約するユーザーにギフト券やアップグレード、旅行券と交換可能なポイントを付与していますが、同サービスを利用すれば出張1件につき最大で30%も経費を節約できるとか(一方、Rocketripの平均的なユーザーは24%の節約を達成しているとラッチさんは言います)。TripActionsのアプリでは、予約前に飛行機の座席の種類や、会員登録しているロイヤリティプログラムをはじめ、その他の個人設定を指定できます。さらに土壇場の旅程変更も可能で、問題が起きた場合に利用できるチャット機能もあります。

ユタ州にあるIT企業、ジャイブ・コミュニケーションズ(Jive Communications)のカスタマー・エクスペリエンス担当部長であるデービッド・ローリーさんは、TripActionsのサービス重視の姿勢を評価しています。「月曜日に出張に行くので、日曜の午後にはTripActionsから電話があり、飛行機の時間が予定通りだと知らせてもらえることになっている」。

ローリーさんはまた、出張回数や節約した金額が増えるほどポイントの貯まるTripBucksが気に入っています。会社が2016年末にTripActionsを導入してから、ローリーさんは1,700ドル相当のポイントを獲得し、会社の経費も7,500ドル節約できたと言います。ローリーさんはポイントをアマゾンのギフト券に交換しています。「娘が結婚するので、ポイントを使って結婚式用の買物をしている。正直いって、旅行は行動に左右されるものだということがTripActionsを利用してから初めてわかった。前だったら、出張の予定が入っても、最後の瞬間まで手配しなかった。決まったホテルを予約できるように、あえて飛行機の予約を遅くしていた。でも今は何か月も前に予約する。経費を減らしてポイントを貯めたいから」

管理部を間に挟まず利用できるサービスも

出張者にも一般消費者のように考えさせることを目指してスタートした第3のサービスUpsideは、出張手配をする管理部を介在させずに直接社員とやり取りしています。「当社のターゲットは、出張手配を担当する部署がない企業です。つまり、各自の責任で出張手配しなければならない会社なら、当社がお手伝いできます」と、プライスラインの創業者でもあるウォーカーさんは言います。

航空券とホテルの予約を組み合わせることによって値引きが可能になります。Upsideは、航空券とホテルのパックを卸価格で購入し、(ウォーカーさんが言うところの)「安め」の小売価格で顧客に販売しています。大抵の場合、価格はエクスペディアなどの予約サイトより5〜10%安く、ユーザーは予約の度にギフト券をもらえます。

国内出張であれば平均100〜200ドル相当、海外出張の場合はそれより多く、通常200ドル相当のギフト券を得られます(対象ギフト券にはアマゾンやホームセンターのホームデポなどが含まれます)。ウォーカーさんによると、社員がUpsideで予約すると、企業は一般的に5〜15%も経費を抑えられるそうです。

ボストンの人材管理会社の国際広報部長を務めるカート・ホスナさんは、Upsideのサービス開始以来の利用者です。現在までに1000ドル相当のポイントを換金し、そのほとんどは趣味の自転車の関連用品購入に充てたと言います。Upsideを利用する前から、ホスナさんや同僚はなるべく出張費が嵩まないようにしてきました。会社から良心的な行動を褒められるのも悪くはなかったものの、Upsideのギフト券はさらにありがたいとのこと。

「人にご褒美を与えるのはまさしく理にかなっている」。

© 2017 The New York Times News Service
[原文:Business Trip or Vacation? Travel Startups Try to Blur the Line/執筆:Tammy La Gorce]
(翻訳:Ikuyo.W)