書家、篆刻家、あるいは気難しい美食家であり、陶芸家。その数奇な生い立ちにより、自身の才能を常に開拓しながら世界に名を轟かせた芸術家、北大路魯山人

1954年、ニューヨーク美術館で彼の作品展が開催されたのをはじめとして、近年では2013年、パリのギメ東洋美術館をはじめ世界各国で作品展が開催されています。

日本の美意識を象徴する存在である彼の魅力を、いまいちど紐解いてみましょう。

強烈な個性が育んだ稀有な交遊録

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北大路魯山人展 展示風景

徹底的なこだわりゆえ、彼の気難しさはとくに有名でした。究極の美食を貫き、自ら料理長となった会員制の「美食倶楽部」が催された「星岡茶寮」には、政治家や文化人、海外の客人も足を運んだといいます。

また、日系アメリカ人の芸術家、イサム・ノグチとは格別に親交があり、彼と親子ほど年のはなれた当時のパートナー、山口淑子へ新居を提供したエピソードがあります。魂の帰属先を常に求めていたイサム・ノグチにとって、魯山人とのかかわりのなかで日本の美に触れたことは、大きく影響したとも言われています。

彼にとって憧憬と失望を与えた日本で、父親のように接してくれた魯山人に、「芸術」を通して並なみならぬ尊敬を抱いていたのです。

俯瞰で眺めた美の骨頂

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北大路魯山人「閑林」1954年(何必館・京都現代美術館蔵)

京都、何必館・京都現代美術館館長、梶川氏の個人的なセレクトである魯山人の作品は「陶」「書」「花」「茶」「食」の5つのカテゴリーから構成されます。

芸術家としての原点は書であった魯山人。しなやかな墨字、篆刻(てんこく)の技術とバランス、土のぬくもり、素朴な自然美を活かした活け込み、四季に溶け込んだ和の集合体は、現代の欧米化された生活様式に一石を投じる内容です。

光を多く取り込む西洋家屋にくらべ、陰の効果を取り込んだ日本家屋というショーケースを俯瞰でどう魅せるか?

食物を口に入れるまでをしつらえる空間と、口に入れるもののクオリティ。その対を磨きあわせることこそ魯山人の目指した美の姿でした。この価値の反芻こそ、日本人である誇りを刺激するのです。グローバルなシチュエーションにおいて、彼の感性に触れることは会話や知性の洗練度を上げることも否めません。

パリのギメ東洋美術館のサイトによると、

魯山人というクリエイターの系譜において、この展示は、美しさを同時共有する招待客と、素朴な優雅さとの中間に、周囲にある自然と美の原理のままに、フォルム、感触、装飾に思考がめぐらされている。どのように個々の作品が、茶道あるいは繊細な料理を味わうべく関連づけられているかを強調したものである。

Guimet」より翻訳引用

と絶賛しているのです。

厳しい審美眼に裏打ちされた独創性

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北大路魯山人「双魚絵平鉢」1935年(何必館・京都現代美術館蔵)

他者と違うからこそ誤解を生む。生前の魯山人は美に対しての真っ直ぐな情熱と、彼の姿勢を理解しない他者の価値観に強烈なジレンマを抱えていました。

彼の芸術性を無限なく高めたのは、主張する強さではないでしょうか。ひるまない姿勢が招きよせたもの、そして遠ざけたもの。その葛藤はさらに創造に向き合う時間を与えたのでしょう。

群れることでは生まれない確固たるアイデンティティは、異なる価値観や多様性を含んだ現代社会で、ある種の処世術として見本にもなります。

彼の芸術が海外で高く評価されるのも、そのような人間性も含めてではないでしょうか。

何必館コレクション「北大路魯山人展 和の美を問う」

何必館・京都現代美術館(京都市東山区祇園町北側 271)
http://www.kahitsukan.or.jp
~9月24日(日)まで開催中 月曜休館 ※9/18は開館